おっ、来たな。クララ隊長が呼んでいるぞ。
拘束した傭兵とエンゲルハルトらの供述が一致した。あなたの証言は、すべて真実だったようです。
私正直者。
本当のことを言うと、これまでわれわれはあなたの証言に対して半信半疑でした。でも、今度こそあなたへの嫌疑は晴れた。
よかった。
もう無茶はよしなさい……と言いたいところですが、事件解決のためには、時にはあなたのような行動力も必要です。
……ザイドとフォルカーでなく、あなたを捜査責任者にするべきだったか。
隊長!
冗談だ。真に受けるな。
でも、もうちょっとしっかりしなさいよ。ってことかな。
フォルカーとザイドではないか。捜査は進展しているか?
大統領!……実はその件に関連して伺いたいことがございます。アンティカの兵士のことで……
……!
ザイドがペイルイーグル見てる。
大統領、ここは私が……。
……その前に、人ばらいをせねばならぬようだな。
確かに私だけ部外者。
その必要はない。隠し立てするようなことは何もないぞ。
えぇ?
国民でもない人はさすがに帰らした方がいいと思うけど…。
では大統領、ペイルイーグル議長、こちらへ……。
もう一度部屋の中へ。
……軍務大臣からその計画を持ちかけられたのは、バストゥークの港が急襲された直後のことだった……。
アンティカだと!?
そのとおり。士気高く、また圧倒的な兵数を誇る彼らの力を利用するのです。
ダメだ。あなたも知っているはずだ。ガルカの民の多くがアンティカに故郷を追われ、生命を落としたことを……
議長の言うとおりだ。あなたの言うその技術をもってすれば、実現不可能な話ではないかもしれん。工房長の協力を得られれば、なおのことだ。
しかし、仮にアンティカを自在に操ることができたとしても、何かの拍子に彼らを制御できなくなってしまったらどうするのだ?あなたの計画は、危険すぎる。
目の前にもっと大きな危険が立ちはだかっているというのに、これ以上何を恐れる必要があるというのですか!?
共和国の誇る第三共和軍団の無敵艦隊はいまだ軍港の再建もままならず、グロウベルグ会戦では、第四共和軍団までもが壊滅状態に追い込まれました……大統領は、このまま手をこまねいているおつもりですか!
海軍の船、サハギンにやられたんだったっけ。
軍務大臣。あなたの主張にも理がある。だが、考えてもみてほしい。仮にそんな計画の存在が明らかになれば、わが国の国力を担うガルカの民の……アンティカに故郷を追われた民の反発を抑えきれると思うのか?
率直に申し上げます。この期に及んでガルカの民の顔色を伺うのですか?大統領。
軍務大臣!
敵をただ恐れてばかりでは、戦局の打開は成りませんぞ。
そうは言っても、アンティカを操ることが可能になったとて、制御できなくなった時のリスクが尋常じゃないから許可できるはずもないよなぁ。
退室した。
軍務大臣は、その後も独断で計画を進めていたか……。
大統領……。
ん?
誰か来た。
初登場の人と、ニコラウスとファイブムーンズか。
大統領!さきほど共和国防会議のペイルイーグル議長の、あっ……。
かまわん。話せ。
ペイルイーグル議長の罷免を要求して、デレク・カルスト鉱務大臣が、三省代表会議の召集を求めています!議長の、軍務大臣に対する脅迫が明らかになったためです。
カルスト?
現代の大統……プレジデントと同じ苗字だ。
えーっと、用語辞典によると、「デレク・カルストは現代の大統領のリヒター・カルストの父親」
ほほう。
……?それはまだ、捜査中の情報のはずだが?
実はさきほど、保安庁の調べで、りぃさんが握らされた手紙の筆跡が議長の秘書のものと一致したんです。
「この件から手を引け」って書いてた手紙ね。
それで、われわれが秘書のもとにかけつけたところ、秘書の身柄は、すでに第二共和軍団の憲兵隊が拘束していて……
何だと?
憲兵隊は、グンパとウェライを逮捕したあの人たちね。
面目ありません、先を越されました……。憲兵隊の話では、秘書は軍務大臣の行動を妨害していた事実を認めたそうです。
……!
つまり、軍務大臣にちょっかい出していたのはペイルイーグル議長ではなく、ペイルイーグルの秘書。
ずいぶん先走ってくれたな……。われわれと保安庁の捜査を、憲兵隊が邪魔だてしてなんの得がある?
憲兵隊の中には、亡くなったベルナー軍務大臣のシンパも多いからな。内乱捜査だけでなく、大臣の暗殺事件もできれば身内の手で解決したいのだろう。
なるほどねぇ。
すぐに手を打つ必要があるな。しかし、カルスト鉱務大臣の動きが厄介だ。事態が国民に知れわたるのは防ぎきれない……。
(あの、クソ親父……!宮仕えしてる息子の立場も考えてくれってんだ!)
クソ親父?
はっ!
この人名前がHrichter Karst……リヒター・カルストだわ!
現代の大統領の20年前の姿…!!!!!
……それで、本日発足した調査委員会が、さっそくペイルイーグル議長の召喚を求めていて……。
わかった。すぐに向かう。
大統領、ご心配はいりません。私は大丈夫です。
私がお供します。
秘書が独断でやってたんなら、ペイルイーグルは無罪よね。
監督責任とか負わされるのかしら。
私はお前を信じているぞ、グィル……。
グィル?
なんだか聞き覚えが…。
あー!
現代でダルザックの家の留守番をしている本好きの少年だ!!!
20年後には転生済みってことか。
ベルナー軍務大臣とペイルイーグル議長は、陰で対立を続けていた……
対立はしてたの?
秘書がやった件に関わってるのかなぁ。
大統領が信頼してるみたいだから潔白であってほしいけど。
…………。まさか、軍務大臣にトンベリの刺客をさしむけたのは……
ニコラウス!お主、何を考えている?
……か、仮定の話ですよ。
ニコラウス。今は憶測を口にすべき時ではない。
口は禍の元ってね。
下手すればニコラウスが罪を着せられたりするかもしれないよね。
自分は、軍団長時代のペイルイーグル議長の部下であった。議長を慕うガルカの将兵は共和軍団内部に、今もたくさんいる。
亡くなったベルナー軍務大臣を支持する者たちと同じくらい、な。
…………。
こりゃ下手すりゃ内乱ですよ。
憲兵隊の動きが心配だ。これ以上、ガルカの民の心を逆撫でするような行動に出ねばよいのだが。
三省代表会議のゆくえも気になります。鉱務・工務の両大臣がどう出るか……。
三省と鉱務大臣と工務大臣?どっちもコウム?
いろんな役職が出てきてややこしいなぁ!!
三省…鉱務省と工務省と軍務省があって、鉱務省の工務大臣がデレク・カルスト。軍務省の軍務大臣だったのがベルナー。
ペイルイーグル議長は以前共和国軍団長をやっていた。たくさんの軍人に慕われている。
第二共和軍団の憲兵隊には故ベルナー軍務大臣を慕っていた人が多い。
こんな感じかな。
心配しても何も解決しない。一番の対処は、われわれミスリル銃士隊による、一刻も早い真相の究明だ。
私は大統領の警護にもどる。各自、持ち場にもどれ!
ハッ!
君もよくがんばってくれた。そこまで送っていこう。
ありがと。
また盗み聞きしてる!
(まさか、共和国防会議のペイルイーグル議長が暗殺事件の黒幕!?もし国民に知れわたれば国じゅうが騒然となってしまう……!)
(それに、憲兵隊や大物大臣もそれを煽るかのように、勝手に動きだしてる?た、大変なことになってきましたです……!)
ん!?シュトルム……参謀総長?
……!!
見つかった!
ひ、人違いですぅ~!
逃げたけど自己紹介したようなもんだ!
ペイルイーグル議長に暗殺の嫌疑がかけられるなんて……この国はいったい、どうなってしまうんだ。
あっという間に国民に知れ渡ってるじゃないですか。
そういえば、シュトルム参謀総長から聞いたぞ。ミスリル銃士隊が有能な探偵助手を雇ったって評判になっているらしいな。
え?
クララ隊長に何度も呼びだされてるそうだし、すごいじゃないか。これからもよろしく頼むぞ!
え??
まさか私のこと?
アーデルハイト、思い込みで噂話広めちゃうタイプですね!?
そんな人に重要な話ことごとく聞かれてとんでもないことになってしまうのでは。
ってか、もう話が広まってるって、アーデルハイトが吹聴しまくったからだったりする?
うーん、どうなってしまうのか。