さて、各国のごたごたが一旦片付いたぞ~。
ん?
大勢が急いで同じ方向に行ってる。
なんだろう。
……どうした?そわそわしちゃってさ。
あの人たちどうしたの?
ああ、あれか?マヤコフ舞踏団のステージを見に行くんだろ。ウチの隊の連中も、だいぶ前からチケットの奪い合いだよ。
へぇ。
ん、マヤコフ舞踏団を知らないのか?
あー、踊り子クエストの時にマヤコフって名前出てきたけど、それだけだから何も知らないと同じよね。
知らない。
なんだ、もぐりだな。今、ブリリオートの舞踏団と人気を二分する流行りの舞踏団じゃないか。
ブリリオートの舞踏団は、踊り子クエストのライラのお母さんのチームね。
お母さんはマヤコフのことを先生って言ってたから、師弟だったのかな。
しかも、オレの見立てによるとダンスはともかく、ダンサーの質だけなら断然マヤコフ舞踏団のほうが格上だね。なんてったって可愛い子ちゃん揃いだからな!
可愛い子ちゃん!!
言い回しに時代を感じるッ。
で、これから、獅子の広場の向かいにある店で、舞踏団主宰の慰問ショーが開かれるのさ。あれだけのダンサーを側で見られる機会なんて、そう滅多にあるもんじゃないからね。同僚たちも必死だよ。
もっと広い所でやればいいのにねぇ。
きみも時間があるなら行ってみるといい。とはいえ、チケットがとれる保証はないけどね。
くそう……オレも非番だったら見に行くのになぁ……。
お仕事お疲れ様です…。
レストラン獅子の泉。
過去でも同じ名前かしら?
……マヤコフ団長。お忙しいところ、取材を受けて下さってありがとうございます。では、今回のショーの見どころをお願いします!
……そう、皆さんもご存じのとおり、マヤコフ舞踏団の舞台は常に、美麗と絢爛を追及してきたわ。でもね……
目に見える美しさというのはだいたいやり尽くした気がするの。そう、このあたくしの姿のように。
この人がマヤコフ。
……。
めっちゃ取材メモ取ってる。
われわれには、次なるチャレンジが必要だったわ。そして今、目指すべき新たな地平を見つけたの。それは「夢」……そう、ドリームよ!こんな時代ですもの、あたくしたちが、皆に夢を与えなくっちゃ。舞踏団一同、そう決意したんですの。
なるほど……!夢ですか!美しく、勇ましく、愛らしく。マヤコフ舞踏団に相応しいテーマですね。
ええ!開かれる幕、めくるめく照明……そして、舞台に踊り出る妖精、踊り子!!飛び散る汗!響くヒール!お客さまに、スペシャルな一夜かぎりの夢を見せてあげてよ!
歓声: おおーー!!
マヤコフ、キャラ濃いな。
……しかし、華美な踊りは、時勢がら厳しくなってきたという批評家の声もありますが……
おだまりっ!闇王だか何だかしりませんがなんぼのもんですかっ!
そこが玉座の前だろうが地獄の果てだろうが……
たとえ、この身が果てようとも!いいえッ、魂売ってでも踊り続けるのがあたくしたち、マヤコフ舞踏団ですのよッ!
歓声: おおおおーー!!
本当にやりそうな感じがする。
……あら?
なんなの、このコは!ちょっと、ギンダフ!
客、入れてんじゃねえよ!まだ開演前だろうが!
す、すみません!
口調がガラッと変わったー!!
ごめんなさいね、お客さま。今は仕込み中なの。また後で、チケット握りしめて来てちょうだい。
……って、んん?ちょっと待ちなさい。あんた、チケットは?
売ってください。
……やれやれ。とんだ世間知らずのお嬢さんね。ショーのチケットはとっくに完売よ。巷では何十万ギルもの値段がつくプラチナチケットなんだから、当然でしょう?
何十万!?
……ざ~んねん。チケットがないなら、客じゃあないわ。今回は御縁がなかったようで……
……たたき出しておしまいっ!
客以外には超厳しい~~!!
おーい、開演まだかよ?待ちきれないぜ。
もう何週間も前から楽しみにしてるんだ。早くしてくれよー!
すみません、お客さま。リハが少々押してしまいまして……もうしばらく、お待ちください。
……うぅむ、やばいな。そろそろ戻らないと……
背後に新たな人影が。
……あなたっ!
げっ!おまえ!
……あなたっ!お店ほったらかしてこんな所でなにやってるのよ!
いや、その……何でもないんだ。
……あなたっ!ん、なによ、それ?……マヤコフ……舞踏団?
わー!わー!これは、違う違う、ちがうんだ!
……あなたっ!んーもー!なにコソコソしてるのかと思ったら仕事もしないでこんな所へ?信じられない!
プラチナチケット入手するほど周到に準備してたのに、奥さんに言わず、家業を無断でほっぽりだして来たの?それは怒られてあたりまえだわ。
……あなたっ!ちゃんと働かないと晩御飯抜きだからね!ほら、帰るわよ!
そ、そんな……
唐突な夫婦喧嘩を見せられたってことは、未来に行ってチケット貰って来いってことね。
この人かぁ。
ジュノに引っ越したのね。
……なんだ?きみもダンスが好きなのかね?
そうだね。極めた技を見るの好きだよ。
ううん、最近のダンスショーも悪くないが、やはり、昔はレベルが段違いだった。ご存じかな?大戦期に活躍していた、マヤコフ舞踏団を……
彼女らのステージはそりゃあ、ゴージャスでなあ。中でも、サンドリアで行われたショーは今でも伝説のステージと呼ばれてるほどさ。
あの日、わしもチケットを握りしめて会場に向かったんだが、途中嫁さんに見つかって、連れ戻されてなあ。ああ、一生の心残りだよ……
ちゃんと許可取ればよかったのに。
お店臨時休業とかいう手もあっただろうに。
だから、あれ以来、今でもチケットを肌身離さず、持ち歩いとるのよ。ほら、これがそうだ。もうボロボロだけどな。
20年間肌身離さず…?
そんな大事なもの譲ってもらえるのかな。
そのチケット欲しいのですが、譲ってもらえますか…?
……ん、なんだ。これが欲しいだと?
まあ、構わんが……こりゃもう、ただの紙切れだぞ?変わったヤツだな。
アッサリくれたー!!
だいじなもの:ショー・チケットを手にいれた!