その名はシュルツII世 其の弐

ここか。

??? : あ、その「陣」に触れないでください!

ん?

シュルツ 即席ですが、「不可視」の効果を得るように配置してあるんです。それを崩してしまうとちょっと困ったことに……

シュルツ見っけ。

シュルツ ……ん?君は確か、りぃ?
りぃ こんにちは。

シュルツ はは、私としたことが、まんまと血盟軍に裏をかかれましてね。ほかの手持ちの術は封じられて、ここに立ち往生です。……血盟軍の軍師に見事してやられました。お恥ずかしい。文字通り「雪隠詰め」というわけです。

ピンチの極みじゃないですか!!

シュルツ 闇雲に逃げようとすればそれこそ敵の思うつぼ。ですから状況が好転するまで、こうして隠れていたんですよ。

好転するのか…?

あ、今私が来たこの時がそうか。

シュルツ それにしても私の陣に気づいた君の観察眼は大したものです。この場所にしたってそうだ。よくわかりましたね?
りぃ すごいのは私じゃなくてね。

シュルツ そうですか、ニコラウス君が。ふふ、彼の第六感は相変わらず、冴えているようですね。アーリーンも心配していることでしょう。これでは、師として失格ですね。

シュルツ ん、その封書はなんです?
りぃ 直送便だよ。

シュルツ ……ふむ。ウルブレヒトから私宛に、ですか?

シュルツ これはこれは……ご丁寧にも魔法で封じた親展ですか。ふふ、彼らしいといえば彼らしい。魔法といっても用途はいろいろあるんです、これもそのひとつ。まぁ、その講釈はまたいずれ……さて、と。

  

シュルツ ……ふぅ。彼も無茶な注文をするものだ。

何が書いてあったんだろう。

シュルツ 仕方がないですね。りぃ。申し訳ないのですが、アーリーンへ私の安否の報告を。
りぃ うん。わかった。

シュルツ それからこの封書をウルブレヒトへ渡してもらえますか?こんなこともあろうかとこの場所を暗号で認めたものです。彼が読めば私のことはなんとかしてくれるでしょう。

ウルブレヒト、協調性は無さそうだけど優秀なんだろうな。

シュルツ なぁに、ご心配には及びません。私はここで古の戦記でも読みながら、助けを待つことにしますよ。では、よろしく頼みましたよ。
りぃ うん。

  

ん???
暗くて見づらいけど、影が勝手に伸びてモヤモヤしだしたよ!?

??? : してやられたな、シュルツ。

影が喋った!?

シュルツ 予測どおりですよ。彼は探究心がひと一倍強い生徒でしたから。思った以上に、早かったですけれどね。今回の計略にしても満点をあげたいぐらいです。

彼っていうのは、ウルブレヒトかな。

計略?
手紙に書いてたこと?

影が伸びた!

シュルツ ……ま、時に優秀すぎるのは命取りにもなりますけれど。
??? : 手駒から指し手と対等な扱いを要求されても、対局にさしつかえよう。それとも……それも計算のうちか?

対局?

シュルツ さてね……すでに手は打ってあります。結果がどう出るかは、まだ未知数ですがね。
??? : ほぅ、それは楽しみだな。

シュルツ それにしても巧妙な権力交代劇をしくみましたね。あなたの手なみ、しかと拝見しましたよ。
??? : …………誉め殺しか?その手には乗らんぞ。

権力交代?

シュルツ おお、くわばらくわばら……。

よく分からないけれど、シュルツの影に魔物?が住んでる?
そして会話の内容は、今の私では知り得ないことだね。

ひとつ確かなのは、シュルツ、普通の人間じゃないな?

だいじなもの:シュルツの封書を手にいれた!

アーリーン そう、よかった……。先生の無事がわかっただけでうれしいわ。ありがとう、りぃ。

ウルブレヒト おっ、先生には会えたかい?なぁに、あの先生のことだ。まるで何事もなかったみたいな涼しい顔をして出てきたんだろう?
りぃ うん。

ウルブレヒト ところで、君に渡した封書には連合軍で今後予定されている各作戦について僕なりの提案をしたためてみたんだ。なにか、先生から言づてはなかったかい?
りぃ 暗号文預かったよ。

ウルブレヒト え、先生が僕のためにわざわざ返書を?なんだ、違うのか……。

手紙の返事じゃなくて居場所書いた手紙だった。

ウルブレヒト まあ、いいさ。先生は僕がちゃんとお助けするよ。ご苦労だった。ゆっくり休んでくれたまえ。

アーリーン ウルブレヒト参謀長どの。お言葉ですが、彼女は門下生としてあなたの命令を立派にやり遂げたのです。先達として相応の礼で応えてやるべきではないでしょうか?

ウルブレヒトは参謀長で、私はぺーぺーだから部下なのかな。

アーリーン というか、あなたね!前にベラムをお願いしたときも彼女にまともな礼のひとつもしてないじゃない!たまには先輩らしいとこ見せなさいッ!

アーリーンも立場的には部下だろうけど、強いッッッ!

ウルブレヒト ふむ。そうだな。サーイエッサー、作戦参謀どの!

ウルブレヒト じゃあ、これ。虚誘掩殺の策について記された軍学書の古典だ。僕らは熟読してもう完璧に頭に入っているから、君にあげるとするよ。
りぃ ありがと。

ウルブレヒト 基本的な用兵術はいまも昔もそう変わりはない。 最新の兵器や戦術を学ぶことも大切だが、古典こそが軍学の要諦に迫っていることも多いんだ。あなどらぬことだね。

だねぇ。

ウルブレヒト コホン。シュルツ流軍学は「知行合一」。実践を重んじます。君自身が戦いの中で研鑚してはじめて血となり肉となる学問です。りぃ。強大なグリモアの魔力に弄されることなく自身が進むべき道を見極めなさい。

ウルブレヒト それではまた、いずれ。

アーリーン ウルブレヒト!!それってこの前の、先生の言葉そのまんまじゃないの!

走って逃げたー!

虚誘掩殺の策を手にいれた!