お父さん!
あれ、息子が来た。
なんだ、アイルベーシュ。
お父さんたち、遠征に行くんだろ?さっきビルバートさんが出かけていったよ。ほら、僕が剣を持ってきてあげたから、お父さんも行きなよ。
遠征…?何のことだ?どちらにしろ、そんな剣ではこちらの身が持たない。
何いってんだい、お父さん!これは母さんが毎晩、一所懸命手入れしてた剣じゃないか!忘れちゃったの?錆びちゃってたから磨くのが大変だったよ!
…!だが…。
…。もういいよっ!
アイルベーシュ!?
ああ…。
まったく、何を興奮しているんだか。大体、今はうちの分隊は待機中だぞ。ビルバートが遠征に、とは一体何のことだ…?
いやあんた、一度、第三者から客観的な意見を聞いてみた方がいいよ。
待機中だけど遠征ってのはどうしてだろう。
隊長失格で知らされてないとか?
ともあれ今はこの手紙について教えてほしい。
何だ、その紙について教えてくれだと?その紙は私の分隊専用に特別にこしらえた連絡用紙だ。白紙に見えるが実はちゃんと文字が書いてある。
ほほう。
密通者の噂があってから、その連絡方法も不採用になったから、使い方を教えてやってもいいだろう。
トリオン王子が言ってた、内通者がオークに情報流してた。ってやつだね。
ダボイにオークたちが使用している井戸水がある。この井戸水に浸すと文字が浮き出るんだ。
ダボイの井戸水?
昔は、それぞれ隊員たちがその水をインク瓶の中に保管して、読むときに使っていたものだが、私でももう持っていない。オークの井戸にいくしかないだろうな。
ダボイの水ってそんな不思議な効果があるの!?
元はラヴォール村で、修道院もあったし、聖水的な何かってことなのかな。
バッタ先生お願いします!
複数NMが出るらしかったから獣使いで来た。
レベル上げてて本当によかった。
ドロップした井戸のオモリをつけて滑車を動かして…と。
不思議な紙をオークの井戸水に浸すと
文字が浮き出てきた。読んでみよう…。
『エグゾロッシュ隊長へ
私、シュザルローは王立騎士団員としてあるまじき行為をしていました。騎士団の情報をオークたちに売っていたのです。
その金で母の薬を買っていましたが、結局母は亡くなってしまいました。私はようやく自分のしていたことの愚かしさに気づき、何度もやめようと思いました。
でも、同じく情報を売っていたビルバートが協力を続けなければすべてをばらす、と言ってなかなかやめさせてくれず、私は苦悩の日々を送りました。
だけど決心しました。今度の演習が終わったら、この手紙を出してすべてを告白するつもりです。許されないことは分かっています。ただ、一刻も早くこの愚かな行いをやめたいのです。
このままでは天国の母にも顔向けできません。
いろいろと面倒をみてくれた隊長も裏切る結果となり、悔やんでも悔やみきれません。』
……手紙はここで終わっている。書きかけのようだ。
ええええええ!?
ちょっと待って。
えーっと、
まず、オークに情報を売っていたのは本当。
共犯者がいて、それはビルバート。
内通をやめようとしたけど、ビルバートに脅されてできなかった。
しかし罪の告白を決心して、手紙も書きかけのまま、突然の音信不通…。
シュザルローの靴はモンスターのおなかの中から出てきた…。
完全なる黒幕だ。
ちょっとこれ、早く知らせなきゃ。
私がシュザルローの事を調べてるって気づいてるんだろうから、何か行動を起こすかもしれない。
となると、狙うは…。
だいじなもの:騎士の告白文を手にいれた!
かくかくしかじかでヤバい!ちょっと身を隠しておこう!!
えっ、ビルバートさんがオークと協力してたって?ハハハ、そんなわけないじゃん!
あんないい人だったのがそんなことしてるって、すぐに信じられるものではないか…。
そんなこと言って僕をからかってもムダだよ!僕は今からビルバートさんとジャグナーの森へ釣りに行くんだ。ヌシよりもでっかいのを釣ってくるから、驚かないでね!!
えっ!!
もう行動を起こしてる!
アイルベーシュは信じきってる!
駄目だ。
ぽっと出の私じゃ止められない。
親父!今こそ動け親父!!
…?そんなことが手紙に書いてあったというのか?にわかには信じがたいが、まさか…。
動かない!!
こうなったら私が現場を押さえて止めてやるうおおおおおおお!!!