冥途の紋 其の弐

アヴゼン りぃ!戦神の御守ハみツカッタノカ?
りぃ 大変だったよぅ。

アヴゼン ホホーウ。コレハ、みごとダナ!
メネジン 冥路の騎士、そしてイフラマド王国の紋様。これに相違ないだろう。

メネジン ……りぃよ。一緒に来てくれるな?
りぃ うん。

ナシュメラ アヴゼン、メネジン!……りぃも!

ナシュメラ どうしたの?いったい3人でなにをしていたの?
メネジン ……ナシュメラ。

ナシュメラ な、なあに、メネジン?

ナシュメラ ……!

ナシュメラ これは……どうして……?

ナシュメラ …………。

ナシュメラ 書庫にあった古い史書でこの御守のことを知ったの。不思議と惹きつけられた。なんだか懐かしくて、恋しくて……。
メネジン ……ナシュメラ。

ナシュメラ ……禁制品なのは知っていたわ。 ごめんなさい。わらわは、聖皇として……

メネジン ナシュメラ……!

ナシュメラ ……!

アヴゼン ……げんき、でタカ?
ナシュメラ え……?

メネジン 我らは、小言を言うために、りぃに足労してもらったのではない。このような品の所持を禁じることに、どれほどの意味がある?誰が幸せになるのだ……?

メネジン ……思い出すのだ。約束したのだろう……?
アヴゼン ヘコンデイルひまハ、ナイゾ!

ナシュメラ アヴゼン、メネジン……りぃ……。

アヴゼン ダガ、ドウシテ戦神の御守ガだいいっきゅーノきんせいひんナノダ?
メネジン うむ……。たかが1枚の御守にしてはいささか過剰に思える。
ナシュメラ それは、わらわも……

ガッサド お話しいたしましょう。

ガッサド 失礼ながら立ち聞かせていただきました。……なにしろ皇宮内に戦神の御守の反応があったものですから。
メネジン どういうことだ……?

御守りの反応?
そんなものまでチェックしてるの。
ガッサドおそろしい…。

ガッサド その戦神の御守……ただの妙なる古美術品ではないということです。
ナシュメラ ……!

ガッサド いえ、本来は、イフラマドの民が信仰する戦神の加護を得ようと、魔力を込めて作った、変哲もないただの御守でした。しかし、皇国はその魔力のしくみに目をつけたのです。
ナシュメラ 魔力のしくみ……?

アヴゼン がっさど!もったいツケルデナイ!
ガッサド 簡潔に申しましょう。その戦神の御守は皇国の、とある施設の厳重な封印を潜り抜けるための「鍵」となっているのです。

ナシュメラ 施設……厳重な封印……
ガッサド そう。ハザルム試験場です。

ナシュメラ !!
メネジン ……待て。「イフラマド」の御守が、なぜ「皇国」の封印の鍵なのだ?

ガッサド 陛下がお生まれになるよりもずっとずっと昔。施設内で起きた事故により巨大な時空の歪が生じたのです。ことの露見を恐れた皇国は施設を閉じ、その入口に厳重な封印を施しました。未知への畏怖に蓋をするように……。

ガッサド しかし、あるとき偶然、この御守にかけられたイフラマドの呪術と、時空の歪が、微弱ながらに呼応することが判明しました。

ガッサド 皇国は、この御守に錬金術で特殊な術式を刻むことで、瞬時に奥地へと辿りつける「鍵」として利用できるようにしたのです。

アレキサンダーの所までワープをショートカットできる霊銀の鏡みたいな感じね。

ガッサド その特殊なしくみに気付かれるのを恐れた皇国は戦神の御守を第一級禁制品と登録し断罪の対象としたのです……。

イフラマドの人がオーディンの力を手に入れたら困るものねぇ。

アヴゼン ナルホドナ……。
メネジン 時空の歪か……。
ガッサド ええ。最深部には、未だ巨大な歪が開いたままとなっているのです。

ガッサド 真偽ははかりかねますが、かの奥地に、冥路の騎士……オーディンが現れるという噂も……。

アフマウ、見たものね。

ガッサド このところ、異国より来た傭兵がハザルム試験場を物色しているとの報告を耳にしています。「鍵」の使われた痕跡はありませんが、いずれにせよ下手な刺激は要らぬ事態を招きかねません。

ガッサド 陛下。かの試験場、何人も近寄れぬようあらためて厳戒な……
ナシュメラ ……。

ガッサド、途中で話すのやめたな?

ナシュメラ ……そう、ですね。万が一何かが起こっては取り返しがつきません。

ナシュメラ ガッサド、早急に封印の厳重化の手はずを……
ガッサド ……陛下。恐れながら……封印の強化の前に、少しばかり時間を……ハザルム最深部の時空の歪の調査許可を頂けないでしょうか?

ナシュメラ 調査ですか?

ガッサド、このまま封印したらアフマウにとって良くないって判断したんだろうな。

ナシュメラ ……承諾しかねます。そのような危険な場所に、大切な兵を向かわせるわけにはいきません。

ナシュメラ わらわは……
ガッサド ご安心ください。我々にはあの機関巨人の暴走をも食い止めた心強い傭兵がいます。

えっ。

どこの国の人もちょっと信頼しすぎじゃないでしょうかね!?

もう、しょうがないなぁ。

りぃ まかせて!!!

ナシュメラ ……。

ナシュメラ わかりました。調査を許可しましょう。ではガッサド、この戦神の御守を。
ガッサド 御意……。

ナシュメラ りぃ……。かならず無事に戻ってきてください。
りぃ 大丈夫よ。

アフマウ退出した。

ガッサド では戦神の御守に術式を刻もう。しばし待っていてくれ。
りぃ うん。

メネジン 調査とは言っているが……ナシュメラは聖皇、自分の気持ちだけで動くわけにはいかぬのだ。お前なら、それが何かわかるだろう?
アヴゼン しんらいノ、あかしダ!

メネジン 冥界に囚われし魂……容易く解放できるとは思わぬが……わずかでもいい。なにか手がかりを見つけてほしい。

ルザフね。

ガッサド 待たせたな。これが術式を施した封式の御守だ。封式の御守の効果は1枚につき、ひとりだけだ。協力者が必要ならば戦神の御守を持ってくれば術式を刻もう。
りぃ ありがと。

メネジン ……頼んだぞ。

だいじなもの:封式の御守を手にいれた!