昇進試験~大尉

アブクーバ (あっ!りぃさん。いいとこに来ましたね~!ちょっと後ろ向いてくれます?)
りぃ どしたの?

アブクーバ (いいですか?)
りぃ うん?

もみ……もみ……
もみ……もみ……
もみ……もみ……

アブクーバ (どうです?少し身体が軽くなった感じがしませんか?これ、指圧っていう治療法なんですよ。)
りぃ ( ˘ω˘ ) スヤァ…

アブクーバ (……って、ちょっと!気持ちいいからって寝ないでください~。)
りぃ ( º﹃º )はっ!

アブクーバ (これからりぃさんはお疲れ気味のナジャ社長のところに行ってこの指圧をしてくるんですから!)
りぃ そうなの?

アブクーバ (いつもは僕が社長の指圧を担当してるんですけどね。今日はその……とにかく特別なんです。)
りぃ 特別?

アブクーバ (なぜかって?やだなあ、僕を信じて行ってみてください!きっと、いいことがありますから……。)

よく分からんけど、マッサージすればいいのね?

アブクーバ (あ、そうそう。今みたいなタイミングと力で指圧しないと社長に怒られますから。注意してくださいね!)

ひぇ…。

ナジャ・サラヒム ん、なんだい?りぃ中尉。仕事は順調なんだろうネェ?
りぃ う、うん、それよりもね。

ナジャ・サラヒム なに、指圧がしたい?どういう風の吹き回しだい?あたいは、そんなことで査定に色を付けたりしないよ?

吹き回したというか、吹き飛ばされたというか。

ナジャ・サラヒム まあ、いいさ。デスクワークでちょいと足がむくんできてたとこさ。ひとつ頼むよ。

デスクワーク?
の割にはずっと立って……立ちっぱなしでもむくむものね!

釣りで大物かかった時の音楽ー!

もみもみを選ぶのね。

まだやるの?
これ、違うの選んだらやっぱり失敗よね?

他のを選んでみたい気もあるけど…。

あれ、音楽が無くなった。

機船航路の音楽になった!
ナジャ社長がお疲れからリラックスに変わったんだな!?

ナジャ・サラヒム んん……ふぁ~あたいとしたことが眠っちまってたみたいだネェ。

長かった!!!
途中で違うの選ばなくて良かった!

ナジャ・サラヒム お……おお!?なんだか身体がとっても軽いじゃないか!もしかして……あんたの指圧のおかげかい!?ここのところ疲れて鉛のように重かったあたいの身体が……信じられないよ!!
りぃ ぜえはあ。よかったです…。

ナジャ・サラヒム アブクーバ!

アブクーバ は、はいいいっ!

ナジャ・サラヒム ずっと迷っていたあの件だけど、あたいは腹を決めたよ!
アブクーバ あの件というと……もちろん例の件ですね!?

どの件だ?

ナジャ・サラヒム ああ、そうさ!人事からも特に異論はないね?
アブクーバ はい!まったくぜんぜん問題ありません!

アブクーバすごい喜んでる。

ナジャ・サラヒム ふふん……どうやらあんたの作戦がちだよ。りぃ中尉……。

ナジャ・サラヒム 指圧で増した血流といっしょに……あたいの迷いまで流しさっちまったんだからネェ。

ナジャ・サラヒム だ・か・ら♪あんたを本日付で、大尉に任命する!!

ええー!?

昇級には今まであんなさんざん大変なことやってきたのに、マッサージだけで大尉になるとは!!!

アブクーバ おめでとうございます~!

アブクーバ……あんたすげぇよ…。

ナジャ・サラヒム そうだネェ……折角だから、あたいから昇進祝いもつけてやろうじゃないか。

ナジャ・サラヒム アブクーバ!
アブクーバ はいっ!

アブクーバ 特典その1っ!「移送の幻灯使用許可証」の発行手数料が免除されます!
ナジャ・サラヒム あんたみたいな稼ぎ頭が移動に無駄な時間をとられてたんじゃあそれこそ、我が社の経常損失だからネェ。

アブクーバ 特典その2っ!アルザダール海底遺跡群の拝観料が無料になりますっ!
ナジャ・サラヒム 最高じゃないか♪毎日、あんたは戦いながら楽しく遺跡観光。毎日、我が社には謝礼が転がりこむって寸法さ♪

もうアトルガン白銀貨を用意しておかなくていいんですか?
これは助かる!!

アブクーバ 以上になります!
ナジャ・サラヒム というわけさ。これからも 我が社のトップエースとして期待してるよ。りぃ大尉どの♪

りぃ ありがと~。

だいじなもの:山猫大尉バッジを手にいれた!

この後、アブクーバに「ナジャ社長について」聞いたら色々教えてくれたので残しておきます。

アブクーバ んん~、仕方ない!りぃ大尉にだけはこっそり教えてあげますー。というよりは、聞いてくださいー。僕ひとりじゃ、こんなに大きなヒミツを抱えきれなくって……。

な、なんだ…?

アブクーバ ナジャ社長ってば、兵を率いて皇都に来たまではよかったんですけど堕落した皇国軍に我慢できず、無許可で勝手に傭兵会社を設立して……あの不滅隊に内乱罪の疑いで摘発された前科があったんです!しかもそのとばっちりでゾワ王国は自治権を剥奪されゾワン家もお取り潰しになりかけたとか。

えぇ!?

ナジャ社長のせいで自治権剥奪されたの!?
お家の大事にまでなるとは。

そりゃあ、自治権回復のため頑張るはずだわ。

そもそもどうして兵を率いて来たのか?
だらしない皇国軍に腹を立てたってことは、皇国の戦力になるために来たのかな。

でも無許可で軍事会社作ったら怒られるわな…。

アブクーバ それを、とりなしてゾワン家を謹慎処分に減刑し、社長の傭兵会社を公認してくださったのが皇位を継承されたばかりの、ナシュメラさまだったらしいんですー。

おお。
聖皇になったばかりという事は、4年前かな。

そっか、アフマウが聖皇になったのは11歳だったのか…。

アブクーバ でも、経緯が経緯ですし当面の会社運営資金は、ぜーんぶナジャ社長の借金。おまけに実家のゾワン家からも勘当されちゃって……。そりゃあ、ナジャ社長は大変なご苦労をされたみたいです。ゾワからの優秀な家臣も実家に取りあげられ、僕が入社した頃は経営も火の車でしたから……。

勘当されても仕方ないかな…ってことはやっちゃってるよね…。

アブクーバ でも聖皇さまが時折、社長に御下賜されていた短剣には皇国民や属国民をいかに幸せにしたいか、その素直な気持ちがつづられた手紙が入っていました。

あっ、私を逃がすときに渡された短剣、あの中に手紙仕込んでたのか!
ああいう事態になることを想定して予め用意してたんだなぁ。

アブクーバ その言葉を信じてナジャ社長は経営に邁進!ここまで会社を立派に育ててこられたんです。ああ見えて、ほんとは義理人情に厚い方なんですよ~。

アブクーバ そうそう、僕はもうナジャ社長尾行生活はやめたんですー。ナシュメラさまの戴冠式に呼ばれて以来、社長のお悩みも晴れたようですから!

え…。
いつどこで呼ばれてもすぐに飛んできてたのは、尾行しててすぐそばにいたからなんですね…?

アブクーバ それと社長が茶屋で密会していた例の若い男たち。安心してください。実はゾワン家の家臣さんたちだったんですよー。国に帰ってきてほしいってお願いに来てたんです。でも、ナジャ社長ってば「かわいい部下たちを見捨てるわけにはいかないよ」ですって。うれしいですー!

密会してた?
これは知らないなぁ。
もしかして、大尉になる前にアブクーバにナジャ社長について聞いてたら、少しずついろんな情報を聞けたのかもしれない。惜しいことしたー。