……ほんっとに留守中、何もなかったのかい?
はい、特には……。
まさか、ナジャ社長の傭兵会社であるウチに侵入しようなんて、そんな輩この国には1人もいないと思いますー。
フーン……
てっきり、ここに不滅隊を踏み込ませると思ったんだけどネェ。
ふ、不滅隊ですか!?ふひーっ!な、な、ナジャ社長っ、いったい何を!?
ん?りぃじゃないか!
どもども。
ああ、無事でよかったよぉなかなか戻ってこないから心配してたのさ~。
えっ、ほんとに?
最近ナジャ社長やさしく…
なにせ、あんたはあたいに、大きな大きな借りができただろ?つ・ま・りあんたの身体は、もうあんただけのものじゃないんだ……おわかりかい?
裏があった。
それにしてもあんたも無事、あたいも無事本社にも異常なし……か。ちょいと出来すぎなのがどうもひっかかるネェ。
確かに。
会社吹っ飛んでても不思議ではない感じなのに。
敢えて泳がせてるとすれば……天井裏に不滅隊が隠れてるって可能性も……。
いそうかも。
ハッ!?
心当たりが!?
……そ、そういえばナジャ社長。
ん?
あの、えっとうっかりしてましたー。アフマウ様を社長室へお通ししてたのでした……。
どうして忘れるし!!
んなッ、なんだってェエエ!?
す、すみませんっ!社長と直に話されたいことがあるとおっしゃるので、お待ちいただいてました……。
ドアからドッカンドッカン音がするよ!?
……ま、まさかアフマウさん、鍵をこじ開けようと……。
え?
どうして閉じ込めてんの!?
ドカアアアアン!
??? : ……きゃっ!
白マウがとんでもねぇ勢いで飛び出してきたぞ。
…………。
…………。
聖皇バージョンなのね。
わたしからもお話したいことがあります……。
何事もなかったかのように進めたァ!
以前無手の傀儡師としてここに来た時は知らないふりしてたのね。
アヴゼンと会ったのは初めてだったのかも。
……アブクーバ、頭が高い……ッ。
へ……?あ。す、すみませんッ!!
アブクーバ!!!!!違うッ……御前である!
いいのよ、ナジャ。アブクーバは、知らないことなんだから。
いえ、存ぜぬとはいえこのような無礼なもてなし、万死に値します。どうか、お許しくださいませ、陛下……。
じ、じゃあぁあ……?
すっとんきょうな声出してんじゃないよっ!
そりゃあ、想像もしないよねぇ。
(あたいだって、初めて直にお会いしたときは腰ぬかしたもんさ。なにせ、あの御姿だろう?)
(は、はい……。)
(でもね、その舌ったらずの声から威厳ある聖皇様の声色に変えられるのを目の前で見せられちゃあネェ……。)
(ということは、宮廷傀儡師のアフマウ様は……。)
実は、我が社のオーナー聖皇陛下御本人でも在らせられたんだよ!
!!!!!!
もう!なにを、コソコソ話しているの?教えてちょうだい、アブクーバ?
はっ、はぃぃいいいいいいい……!
あ、アブクーバ!?
名前呼ばれた感激でショック死したあああ!!!
お気遣い無用です。傭兵とはこういうもの……寝られるときにはいつでもどこでも寝るものなのです。
ええー!?
そうなの?すごいのね、傭兵さんって……。
素直すぎるって!!
それよりナシュメラ様。てっきり、安全なサラヒム士官学校で待っていただいていると思っておりましたが……。
ごめんなさい。わたし、居ても立ってもいられなくって……。
私のご心配なら無用にございます。
無事で、なによりでした。そしてりぃ、あなたも……。
私がナイズル島に居合わせなければりぃは今頃冥路を歩んでいるところでした。
そ、そんなことないぞっ!
どういうこと……?そもそもりぃはどうしてナイズル島に行ってたの?
かいつまんでお話ししましょう。
ナシュメラ様より輝金の短剣を頂戴したあと社員をナイズル島に派遣し周辺を探らせておりましたが……
結果は、士官学校で先日お話ししたとおり、機関巨人があると思われるブロックは厳重に封鎖されている状況でした。
ひょっとして、ルザフもそのブロックに移送されたのかしら?
おそらくは……。ご依頼を受け、私自身、ナイズル島に行き確信いたしました。間違いないでしょう。
そんな……。でも、なぜりぃが?
はい。調べたところひとつだけ警備の手薄な通路を発見しまして。てっきり、部下が見落としたものと思い先へと進みましたら……不滅隊に待ち伏せされ立ち往生しているりぃがいたというわけなのでございますよ。
トラビアルスが調べたルートだから…というか、罠だったんだよね。
どういうこと……?
ええとですね、りぃは、社長である私に無断でルザフを捜しに行っていたのです!!
まあ!ありがとう、りぃ♪
えへへー。
…四国の方の作戦だったんだけどね。
ナシュメラ様礼には及びません!……ルザフ救出に失敗してしまったのです。りぃもそして、この私も。
……でも、2人とも全力を尽してくれたのでしょう?わたしは、その気持ちがうれしいの。
ありがとうございます。
陛下……これからいかが致しましょう?機関巨人破壊にせよルザフ救出にせよ……たとえ我が社の全傭兵をかき集めたところで、とてもあのブロックの防衛網を突破できるとは……。
…………。
自信はないけれど試してみたい方法があります……。
わたし、幼い頃母さまに連れられて1度だけナイズル島の奥まで探検したことがあるの……。
なぁああんですってェェエ!?あのような危険な場所へ子連れで!?
ううん、ちっとも怖い思いはしなかったの。移送装置のヒミツの使い方でひとっ飛びだったから……。
お母さん、転移装置まで自由自在に使ってたんかい。
しかし何故、またあんなところへ?
父さまと母さまの思い出の場所だとか……ごめんなさい。詳しくは覚えていないのよ。
でも、この霊銀の鏡を母さまが移送装置にかざすと、奥の部屋まで移送されたことは、はっきり今でも覚えてる。キレイだったから母さまに何度もせがんで、たくさんもらってずっと、わたしの宝物にしていたの……。
!?……では、それを移送装置にかざせば今も……?
ええ、おそらく。母さまは2人だけの秘密だって言ってたからきっと兄も知らないと思うの。
でも、移送装置を使っていきなり不滅隊の前に飛び出たりしたらみんな捕まっちゃうでしょう?だから、今まで黙っていたの。
危険は元より覚悟の上でございますよ。その霊銀の鏡を私に……。さっそくウチの傭兵をかき集めて機関巨人を破壊しに参りましょう。
そして、その足でルザフも救出して御覧に入れましょう!
そうできたらいちばん良いのだけれど、もう時間がないの。
アブクーバまだ倒れとる。
……もしかして、中の国の飛空艇が墜落したとかいう噂となにか関係が?
ええ、あれはおそらく伝説に語られてるアレキサンダーの聖なる矢……審判の日は、いつ来てもおかしくないわ。
では、どうすれば……!
機関巨人を止めるようわたしが、兄を説得しに行きます。
!!
ナジャ。あなたに霊銀の鏡を託します。その間にルザフを救出してください。
……わかりました。ですが、よろしいのですか? ナシュメラ様がルザフ救出に向かわれたほうが……。
説得に失敗したときはコントロールを外部から奪取するしか機関巨人を止める手立てはなくなると思うの。それができるのは母さまに人形プログラミングの手ほどきを受けたわたししかいないわ。
プログラミング教わってたのね。
だからストリンガーを使わず、2体もオートマトンを動かせるのか。
……かしこまりました。皇妃さまは、この日を予知されておられたのかもしれませんね。
予知してたんだろうね。
アヴゼンとメネジンに最後にあんなプログラム組み込んでたくらいだし。
りぃ……わたしは、もう聖皇ではないわ。
それでも……わたしと共に来てくれますか?
うん。もちろん。
聖皇だから手伝ってたわけじゃないしね。
ありがとう……。
この霊銀の鏡はりぃが持っててくれる?あなたなら、きっと鏡とわたしを守ってくれる……そう信じてるわ。
ナシュメラから霊銀の鏡を渡された!
さあて!そうと決まれば、ルザフ救出は私に任せて早速、ご出発ください。
ええ、お願いね。
機関巨人は、魔笛の天蓋の遺跡が発見された場所に設置されているはずよ。
そこが霊銀の鏡で飛べる奥の部屋なのね。
急ぎましょう!りぃ。
(……アヴゼン、メネジン見守ってて……)
(……リシュフィーわたしに勇気をください……。)
だいじなもの:霊銀の鏡を手にいれた!