稀なる客人 其の弐

白タルの散歩道

デラキアン お、君か。どうだった?
りぃ かくかくしかじか。

デラキアン へぇ~、見事に不審者を捕まえたんだ。すごいね、僕もそんな手柄を立てたいなぁ。
フィヨン その話は本当ですか!

白タルの散歩道

デラキアン あなたは?
フィヨン フィヨンと申します。あの、王錫を奪った犯人は!?捕まったんですか!無事なんですか!

デラキアン ラテーヌ高原の不審者は捕まったけど、そいつが犯人かどうかは、ちょっと……
フィヨン あの子は悪人なんかじゃ……、盗賊なんかじゃありません!お願いです、助けてください!

白タルの散歩道

デラキアン あの子?
フィヨン ああ、あなたは冒険者の方ですね。お願い、あの子を助けて!

あのでかくて偉そうな態度の人を、あの子!?
この人はいったい何者…?

デラキアン そんなこと言われても、ねぇ……?
フィヨン ……。

ロイド すいません、妻が迷惑かけて。僕は彼女の夫のロイドです。

白タルの散歩道

ロイド さ、フィヨン。うちに帰ろう。大丈夫、きっとまだ手はあるさ。
フィヨン で、でも……。

ロイド 来るんだ、さぁ……!

冷静な旦那さんが、テンパって問題を起こしかねない奥さんを連れて行った…。

白タルの散歩道

デラキアン 何なんだろ、彼女。気になるな……。
りぃ うーん…。

洞窟から出てきた人と知り合いなのかなぁ?

デラキアン あ、そうだ。もし本当にあの不審者が犯人だったら、ハルヴァー様から報酬がもらえると思うよ。城に行ってみた方がいいんじゃない?
りぃ 本当?教えてくれてありがと。

白タルの散歩道

ハルヴァー おお、冒険者か。聞いたぞ、盗賊を捕まえる手伝いをしてくれたそうだな。

手伝ったというか、その場にいただけというか。

ハルヴァー ちょうど、今から尋問を始めるところだ。ヤツが犯人であれば、報酬を払おう。

白タルの散歩道

ハルヴァー 第2次コンシュタット会戦の敗北から2年。ルジーグ国王は残存する騎士をラテーヌ高原に集め、バストゥークへの反攻の機会を窺っていた。
ヴィジャルタール・カフュー ああ、そうだ。

第2次コンシュタット会戦?
ってずいぶん昔のことじゃなかった?

白タルの散歩道

ハルヴァー だが王弟フェレナン公爵は、その隙に神殿騎士団を取り込んで、王都を制圧。バストゥークとの講和を主張した、という訳か?
ヴィジャルタール・カフュー いかにも。

ハルヴァー 内乱を憂いたルジーグ国王は、自らの持つサンドリア王の証たる王錫をフェレナン公爵に贈り、王位を禅譲しようと考えた。王都を開放することを条件に。
ヴィジャルタール・カフュー そうだ。我々はその王錫をフェレナン公爵様に届けるために、王都へ向かっていたのだ。

白タルの散歩道

ハルヴァー が、道中、酷い嵐に見舞われたため、オルデール鍾乳洞で雨宿りをしていた、……とこういうわけだな?

だからオルデールから出てきた?

エルムマーグ では、お前がいう王錫とはどのような物だ?

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ヴィジャルタール・カフュー なんだ、そんなことも知らんのか。頭にピエールエランと呼ばれる珍しい宝石をはめ込んだ、美しい錫だ。石が曇らぬよう、細心の注意を払わなければならなかった。
ハルヴァー ……。

正解なんだ?

ヴィジャルタール・カフュー これで信じてもらえただろう?早くフェレナン公爵様に伝えるのだ。
ハルヴァー 貴様……、そんな話で我々を騙せるとでも思ってるのか?

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ヴィジャルタール・カフュー なんと!まだ私の話が偽りだと申すのか!
ハルヴァー 第2次コンシュタット会戦?ルジーグ国王とフェレナン公爵?ふざけるのにもほどがある。

ヴィジャルタール・カフュー では王立騎士団赤鹿隊の到着を待て!共に王都に向かっていた仲間だ。鍾乳洞ではぐれてしまったが、もうすぐここにやってくるはずだ。
エルムマーグ それはまた妙な話だな。赤鹿隊隊長ギシャンマージュは私の友人だが、監察に赴いた時に、お前は見なかったし、新たに隊士を編入した話も聞いてはおらぬが?

ヴィジャルタール・カフュー ハハハ、何を……。偽りを申しておるのはそちらではないか。誉れ高き赤鹿隊の隊長は、無論、あのプリュシェロー殿に決まっておろう。戯れもほどほどにしておけ!

この人…嘘ついてるわけでもなさそうだし…。
タイムスリップしてきたの?
だって何でも起こるヴァナ・ディールだもの。

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エルムマーグ ハルヴァー様、この男、どうされますか?
ハルヴァー 手配書の顔とは違うし、宝物庫の衛兵たちも、この男が犯人ではないと言っている。王錫のことを知ってるだけで、牢に入れる訳にもいかないだろう。

エルムマーグ それはそうですが、まだあの話は外部に漏れておらぬはず。なにゆえこのような者が……。
ハルヴァー うむ……。しかし、例のあれを開封しようと久方ぶりに宝物庫を開けた時を狙うなぞ、このような間の抜けたやつにはできぬ芸当だろう。

例のあれ?
そっちも気になるじゃないですか。

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エルムマーグ ……ハッ、申し訳ありません、我々も完全に不意をつかれました。しかも、この城を知りつくしたかのような逃げ足の早さ……。あれはただものではないはずです。
ヴィジャルタール・カフュー まだ、疑っておるのか?私は王の命令でここに来たのだ。それとも、公爵様は使者をこのように扱うのか?

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ハルヴァー ……コイツをつまみ出せ。くだらぬ妄想につきあうほど我々は暇ではあるまい。
ヴィジャルタール・カフュー だから私は王の命令で……、おい、何をするのだ!さっさとその手を放せ!

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ヴィジャルタール・カフュー 覚えておくがいい貴様ら!!このヴィジャルタール・カフューへの数々の非礼、あとで詫びを入れても聞く耳もたぬぞ!!

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ハルヴァー ちょっと待て……おまえ、今何と言った?

ヴィジャルタール・カフュー ヴィジャルタール・カフューの名を忘れるなと言ったのだ!この屈辱、生涯忘れることはないぞ!
ハルヴァー こいつ、ふざけおって!!この盗賊風情め!言うにことかいて、我が国屈指の勇者、ヴィジャルタール・カフューの名を騙るとは……恥を知れい!

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連れて行かれよるw

ヴィジャルタール・カフュー なんだと……?
ハルヴァー 愚か者め!200年前、王立騎士団と神殿騎士団の抗争に終止符を打った偉大な勇者の名だと言っている。そのような嘘、子供でもつかぬわ!

200年前…。

ハルヴァー 早々にここから立ち去れ!次に私の前に姿を現せばどうなるか、分かっておろうな!
ヴィジャルタール・カフュー 200年前とは何のことだ!説明しろ、なぜ私が勇者……

白タルの散歩道

閉め出された。

200年前から…来たのか。

ハルヴァー 残念だが、報酬は払えない。王錫を盗んだ犯人は、あの男ではなかったのだからな。
りぃ うん。

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エルムマーグ そうだ、門番の彼に伝えておいてくれ。手柄を立てるチャンスはまだあるぞ、とな。
りぃ わかった。

エルムマーグ しかし、王錫はサンドリアの象徴ともいえる宝だ。なんとしても取り返さなくてはならない。

どうして犯人は何故王錫を狙ったのか。
どうして久しぶりに宝物庫を開ける日時を知ってたのか。

どうしてヴィジャルタールは200年飛び越えてきたのか。

うーん、謎。