あら、ご客人なんて珍しい。もしかして、「シュルツ流軍学」を学びに来たのかしら?
シュルツ流?
学者に流派があるの?
うん。
まぁ、うれしい♪入門は、大歓迎よ。
あっ、ごめんなさい。自己紹介をしていなかったわね。あたしはアーリーン。ここで作戦参謀を務めるかたわら希望者に軍学を教えている軍学者なの。
りぃでっす。
え、軍学とはなにかって?そうね……戦争で勝利するために用兵や戦術について研究する学問ってとこかしら。
ふむふむ。
ちなみに、あたしの学んだシュルツ流は古の戦術魔道書「グリモア」を研究し……大胆に魔法を戦術に取り入れた最新の戦術体系が売りなの。門下生は、各国で軍師として採用されているわ。
魔法使う学者はシュルツ流だけなのかな。
あ、グリモアっていうのは、コレね。
ぬおお!?
虚空からでっかい本が出てきた!!
いまのが白のグリモア。
で、こっちが黒のグリモア。
おお…。
見たことないかしら?
で、シュルツ流ではこの2つの魔道書を、その時々の戦局に応じて瞬時に切り替え……
??? : おやおや、にぎやかなこと。
ん?
あら、戻ったのね、ウルブレヒト。
ご紹介痛み入るよ、アーリーン。
初めまして。僕はバストゥーク共和国軍で参謀長を務めているウルブレヒトだ。
初めまして。りぃでっす。
ふふふ。君はシュルツ流軍学というより、さっきアーリーンが見せたグリモアに興味津々とみえる。
まぁ、そりゃね。
いや、悪いことじゃないさ。未知の事物に興味をそそられるのは人の自然な反応。その好奇心は君の宝だよ。……ただね。熱意や意欲だけで習得できるほどグリモアを利用する魔道戦術は簡単じゃない。残念だが、君には……
ウルブレヒト、つまらないウソはやめなさい。
「学ぶ意志ある者に門出決して閉ざすべからず……」それがシュルツ流軍学の鉄則でしょ?
黙って去っていった。
ごめんなさいね。軍学者には変わり者が多いのよ。彼のことは気にしないで。あなたにも、学ぶチャンスをあげるわ。
やったぁ。
ただ、ね……。その、グリモアは貴重な書なの。だから、その……ちょっと条件が……。あ、えとお金が欲しいわけじゃないの。その……
歯切れが悪いな?
ベラム!ベラムが足りないんだ!
ベラム?
ウルブレヒト!横から口を挟まないで。
調達したい物品だろ?なにも間違ってないじゃないか。急ぎじゃないけど、ベラムが必要なんだ。そうだな、12枚もあれば足りると思う。それじゃあ、よろしく。
ちょっと待ちなさいよ!ウルブレヒト参謀長どの!この人、別にやると言ってないじゃない!?
12枚、だぞ。
ウルブレヒト!
なんか、アーリーン苦労してるっぽいなぁ。
……もう、仕方ないわね。悪いけど、ベラムを12枚そろえて、あたしに渡してもらえるかしら?その間にあなた用のカリキュラムを組んでおくわ。
うん。わかった。
ベラムは、羊皮紙に飾りがついた豪華なやつだって。
合成するのもNPCと交換するのも面倒だったから買ってきちゃった。
ベラムね。ひぃ、ふぅ、みぃ……12枚、確かに。
無理言ってごめんなさいね。学究の徒でもあるあたしたちにとって何よりも貴重な品なのよ。
羊皮紙じゃ駄目な理由があるんだろうなぁ。
ああ、安心して。あなた用のグリモアの写本もできてるわ。中に、あなたが学ぶべきカリキュラムも書き加えてあるから、あとで確認しておいてもらえるかしら?
うん。ありがと。
グリモアは魔道書であり戦術書でもあるの。あたしたち軍学者にとって、武器とは頭脳と知識。そしてこの書物よ。
魔法の二大体系は?白魔法と黒魔法よね。それらは、いわば水と油。本来、同時には使えないものでしょう?
そうなの?
でも、あたしたち「学者」は、魔法を理論として学んでいるからその垣根を取り払うことができる。つまり、両者の利点を組みあわせて用いることができるの。
戦術的見地からそのとき最もふさわしい魔法を、効率よく用いる。それが、シュルツ流魔法運用の奥儀なの。ま、ここで講義するより実際にグリモアを読んでもらう方が早いわね。「読書百遍、義自ずから通ず」って言うでしょ?
赤魔道士が白黒両方使えるのとはまた別の話で、効率よく使えるのが学者の特徴ってことね。
それじゃ、「帯魔放出」をしながら、最初の頁を読んでもらえる?
帯魔放出?
グリモアは魔力を注がれてアストラル化することで真の文面が浮かぶよう、仕掛けが施された書物なの。それにあなただけの本として「署名」するためにも、必要な手順なのよ。
……あ。帯魔放出っていうのはね。例えば、「ファイア」などのように一気に解放させる魔力じゃなくてゆっくりと洩れ出させる魔力のことよ。そうね、代表的なものとしては「魔力の泉」や「連続魔」なんかがそうね。ん~、他にもなにかあったかしら……?
ふむふむ。
あ、そうだ。それらと似ているけど「女神の祝福」はダメよ。詠唱を終えた途端に魔力が散ってしまうから。
なるほど。
理解できたかしら?
うん。
それじゃ、早速帯魔放出を維持しながら、グリモアの最初の頁を開いてみて。それだけで「署名」の儀式は完了するわ。
りぃの魔力の泉!
黒魔道士で来たよ。
バサバサバサバサ ボボン。
シュルツ流軍学入門おめでとう。
ウルブレヒト……。
そう邪険にするなよ。頼んでたベラムが届いたっていうから、取りにきただけさ。
お、これこれ!ありがとう、助かったよ。
知っているかな?歴史に魔法が登場してから、すでに600年。その間、魔法の研究は目覚ましい進展を遂げ数多の魔法が生みだされてきた。
だが!その効果的な運用法となるとてんで学術的研究がされていない。魔道士たちは己が魔法の技に溺れるあまり、その使い方に対する研鑚を怠ってきたのさ。無論、その点では巷の有象無象の軍学者とて同じこと。魔法の存在を無視してきたのだからな。
しかし、我がシュルツ流は違う!魔法全盛の時代にふさわしい、現代的で理論的な用兵・戦術を研究している唯一の学派なんだ。
なるほど、いい所に目を付けたのね。
??? : いや、お見事な講義でした。でも「生兵法は、大ケガのもと」。
……え。
??? : ……と、教えましたよね?ウルブレヒト?
先生!
こんな危険な場所にどうやって!?
古墳の入り口に来ただけでこんなにびっくりされるって、戦闘が苦手なのかしら。
??? : 久しぶりですねアーリーン。ウルブレヒト。「智将は務めて敵に食む」。道中、敵の補給牛車が通りかかったもので近くまで便乗させてもらいました。
せ、先生。相変わらずですね……。
獣人の牛車に乗せてもらったの!?
インスニしてこっそり乗ったのかしら。
??? : おっと、失敬。あいさつが遅れてしまった。アーリーン、こちらの方を紹介してもらえるかい?
(シュルツ流軍学の第一人者。グンサー・シュルツ先生です!過去のバストゥークの英雄と同姓同名であられ、百年に一度の不世出の天才と……)
アーリーン。
やめてください。私の名に変な前口上をつけるのは。私とて、いまだ学究の徒に過ぎないのですから。
名前がシュルツってことは、シュルツ流を立ち上げた本人?
君の名は?……りぃ、ですね。
うん。
混沌の世にはワラをもつかむ思いで人びとは自分を救ってくれる力にすがるもの。それは、ある時は優秀なカリスマ的指導者かもしれないしある時は絶大な威力を誇る兵器かもしれない。
けれど、この戦争を本当に終わらせることができるのは軍学を修めた私たちの知識と行動しかない。そう私は本気で信じているんです。いつか君にも、きっとわかる日が来るでしょう。
指導者も兵器も上手く動かせる人がいてこそより威力を発揮するものね。
おっと、いけない。残念ながら、悠長に講釈している時間はないんでした……。
シュルツ流軍学は「知行合一」。実践を重んじます。君自身が戦いの中で研鑚してはじめて血となり肉となる学問です。りぃ。強大なグリモアの魔力に弄されることなく自身が進むべき道を見極めなさい。
うん。
それではまた、いずれ。
出口に向かって行ったけど、古墳に何しに来たんや……?
学者にジョブチェンジできるようになった!
だいじなもの:戦術魔道書グリモアを手にいれた!
だいじなもの:ジョブエモーション:学者を手にいれた!