「何もできない」だなんて言わせない 其の弐

シャマルハーン おお、無事に帰ってきたか。心配しておったぞ。
りぃ よく言うよ!!

シャマルハーン うむ。わかっておる。話の続きを聞きに来たのじゃな?と、その前に1つ聞いておきたいことがある。

シャマルハーン ワシのオートマトンになぜ勝利することができたか、その答えを直接聞かせてはくれぬか?
りぃ シャマルハーンがいなかったから。

シャマルハーン ふむ。あたらずとも遠からず。概ねは理解しているといったところかの。

正解ではないのね。

シャマルハーン ワシ、つまりオートマトンのマスターがいなかった。裏を返せば、オートマトンのマスターがいたほうが勝った、ということじゃな。

2対1の方が当たりだったのかな。

シャマルハーン オートマトンは、マスターであるからくり士がいることで力を発揮するものじゃ。からくり士が力を引き出さねば、その真価を得ることはできん。

シャマルハーン からくり士のいないオートマトンなど、マスクのないゴブリンのようなものよ。マスクをとったゴブリンは……
りぃ 流石師弟…。

シャマルハーン 何?イルキワラキも同じようなことを言っておったじゃと!?あやつめ……まるでワシがそのネタをパクったようではないか!!
オートマトン 今マデ、ズット温メテキタ、「トッテオキ」ダッタノニネ!

別々に同じネタ考えてしまったんかい!

シャマルハーン ……まぁ、それは置いておこう。えーと……なんじゃったかな。

シャマルハーン そう、オートマトンの力はからくり士によって引き出されるもの。じゃが、オートマトンの力をすべて引き出せるからくり士は、ほんの一握りしかおらん。

そうなんだ。

シャマルハーン オートマトンの力を引き出すには、己のオートマトンをよく理解し、強く信頼することが必要なのじゃ。もう、わかったじゃろう。いったい何が、からくり士にとっていちばん大切なものなのか。

理解と信頼ね。
確かにイルキワラキにはもう十分備わってる。

シャマルハーン ワシのオートマトンを倒せるかどうかは、オートマトンの力をどれほど引き出せるか見極めるためのテストだったのじゃよ。
オートマトン 合格ダヨ!トッテモ強インダネ!

シーフで殴ってすみません。

シャマルハーン うむ。じゃが、からくり士が引き出す力というのは、何も戦う力に限ったことではない。オートマトンの成長もまた、からくり士が引き出す力によって成されるもの。オートマトンを見れば、からくり士の力量も計り知れるというものじゃ。

シャマルハーン あのポンコツをあれほどのオートマトンに育てあげたイルキワラキじゃ。必ずや大切なものを持っておるじゃろう。
りぃ ポンコツだったの?

シャマルハーン ははは、昔は奴のオートマトンも、そこらのオートマトンと変わらない……いや、それ以下のオートマトンだったのじゃよ。

イルキワラキ おっちゃん!今日は、あの人形はいないの?
シャマルハーン おぅガキンチョ。オマエも飽きずによく来るなぁ。

チビイルキワラキだ!

シャマルハーン 悪いが、ありゃ捨てちまったよ。
Kuh Polevhia エーッ!?なんでー!?今日もロケットパンチ見せてよ~!

イルキワラキ そうだよ!なんで捨てちゃったのさ~!どこに捨てたのさ~?
シャマルハーン あんな危なっかしいもんは捨てちまったほうがいいんだよ。ラミアに首切られて動かなくなっちまったから、ひきずってくんのが面倒くさくて置いてきたのさ。

ラミアに?
あっ、さっきBFで戦ったあのオートマトンかな。

Kuh Polevhia はくじょ~もの~!
イルキワラキ かいしょ~なし~!
シャマルハーン もう、あんなもんに興味を持つのはやめな。ロクなもんじゃねぇよ、ありゃ。

イルキワラキ ロクでもないのは、おっちゃんのほうだろ~!
Kuh Polevhia だろ~!

イルキワラキ もういいよ!ボクが拾いにいってくる!
シャマルハーン はいはい。頑張ってね。もし拾ってこれたらそいつはオマエにやるよ。

イルキワラキ 言ったな!よーし、絶対拾ってきてやる!

アラパゴまで行くの!?
危なすぎでしょ!

イルキワラキ おっちゃん!おっちゃーん!
シャマルハーン あー、どうしたガキンチョ。お人形さんは見つかったのかい?

イルキワラキ ああ!バッチリだぜ!すぐ見せてやるよ!
シャマルハーン 何?アラパゴまで行ったというのか……?

マジで!?

シャマルハーン (ナシュモは今疫病が流行っていて、一般人が渡航することなどできないはず……。)

Kuh Polevhia ふぅ、持ってきたよ~。
シャマルハーン これは……確かに……。

イルキワラキ どうだ!これで、こいつはボクのものだね!
シャマルハーン (しかしいったい……ん?こいつは……。)

シャマルハーン (武装アタッチメントが一切ない……。同じなのは見た目だけか。)

シャマルハーン おい、こいつはどこで拾ったんだ?
イルキワラキ 店先だよ。変なガルカのおっちゃんが店から出てきて捨ててったんだ。たぶん、あのおっちゃんが、おっちゃんの人形を拾ってきたんだよ。

アラパゴまで行ったんじゃなかったのね。よかった。

シャマルハーン (店先……ガッサドの工房のことを言っているのか……?そういえば民間用のオートマトンを作っているという話を聞いたことがあるが……奴め、何を考えているんだ?)

この時期のオートマトンってことは、もしかしてオルドゥーム文明の遺物が使われてる?

イルキワラキ 店ん中、人形でいっぱいだったぜ。
Kuh Polevhia へー。お店でも売ってるんだね~。
シャマルハーン …………。

イルキワラキ どうしたんだよ、おっちゃん。これ、もらっていいんだろ?
シャマルハーン ん、ああ。しかしこれ、動くのか?捨てられるだけあって、かなりの欠陥品のようだが……。

イルキワラキ わかんねーよ。捨てたのはおっちゃんだろー。

イルキワラキ さぁ、立てっ!立つんだっ!
シャマルハーン そんなんで動くか。何かスイッチとかないのか?

イルキワラキ えーっと……ん、なんか変な棒が一緒についてきてるな。……これか?

おっ。

イルキワラキ うぉっ!
シャマルハーン む!?

Kuh Polevhia わぁ!
イルキワラキ すげー!立ったぞ!

Kuh Polevhia かわいー!プリケツー!

イルキワラキ おい、ボクの名前はイルキワラキだ。わかるか?
オートマトン %@&$?

イルキワラキ ちげーよ、何言ってんだよ!
Kuh Polevhia あはは!かわいー!

シャマルハーン おい、あまり不用意に近づくな。

武装アタッチメントが無くても、ラミア戦に投入されたオートマトンと同じ作りだったら子どもには危険な可能性が…。

Kuh Polevhia あなたのお名前はなんていうの?
オートマトン ……&@%?

Kuh Polevhia そう!エリザベスっていうのね!

そんな風に聞こえた!?

イルキワラキ 言ってねーよ!なんだよエリザベスって!

言ってなかった。よかった。

Kuh Polevhia ウチで飼ってるリトルワームの名前!
イルキワラキ 何飼ってんだよオマエ……。

リトルワームって、飼うものなんですか…?

オートマトン エ……リ……@$?

イルキワラキ お?
Kuh Polevhia おお?
シャマルハーン む……?

オートマトン エ……リ……ザベス?

イルキワラキ すげー!ボクの名前はイルキワラキだ!わかるか?
オートマトン イルキ……ワ……ラキ?

イルキワラキ おおっ、やったー!覚えたよ!
シャマルハーン …………

シャマルハーン 戦闘を目的としないオートマトンか……。これなら、あるいは……。
イルキワラキ ん?「おーとまとん」ってなんだ?

シャマルハーン ん、ああ。この、からくり人形のことだ。オートマトンっつーんだよ。
Kuh Polevhia おーとまとん?

Kuh Polevhia ちがうよねー?あなたのお名前は、エリザベスだよねー。いい名前でしょ、エリザベス?
オートマトン キモい。

Kuh Polevhia えっ!?

!?

オートマトン …………。
Kuh Polevhia …………。き、気のせいかにゃ?

もう自我が!?
エリザベス、最初からこうだったのかっ。

シャマルハーン ふむ。オマエら、こいつがもっといろんなことをするのを見たくないか?
Kuh Polevhia いろんなこと?
イルキワラキ 見たい見たい!

シャマルハーン よし、それなら「からくり士」でもやってみるかな。

Kuh Polevhia からくりし?
イルキワラキ 何をやるのさ?

シャマルハーン ははは。そいつは見てのお楽しみさ。それじゃ、さっそくガッサドにかけあってみるわ。
イルキワラキ あっ、どこ行くんだよ!

新しいオートマトン貰いに行ったのかな。

Kuh Polevhia いいなー。かわいーなー。いろんなお洋服とか着せてみたいねー。
イルキワラキ んなもん着れるかよ。さ、帰ろうぜ。エリザベス。

シャマルハーン ……いかんいかん。年をとると、昔の思い出に浸りがちになるな。

シャマルハーン さぁ、イルキワラキの元へ行ってやってくれ。ワシの弟子のこと、頼んだぞ。
オートマトン 頼ンダゾ!