
ヤァ、君モ一緒ニ、踊ラナイカイ?
おや、ワシの人形に気に入られたようじゃの。
おっ、そうなの?

こいつの名はバルキーンというんじゃ。仲良くしてやってくれ。
ヨロシクネ!
よろしく!

ははは、かわいい奴じゃろう?
うん。
……実はな、今のは全部、ワシがこいつを操作してやっていたんじゃよ。気づいたかね?
ガーーーン!!
私の心は深く傷ついた。

こいつは操作する者の技量によってさまざまな動きをさせることができる、「オートマトン」というからくり人形じゃ。ワシはこいつを操作して芸をさせることを生業としておる。
戦闘に使うだけじゃないんだ。

ワシのようにこいつらを操ったり、調整したりできる者は、近東で「からくり士」と呼ばれておるんじゃよ。
私にもできるかしら。
ん、なんじゃ?ちょっと操作してみたいじゃと?ははは、残念じゃがこいつは、からくり士でなければ操作することはできんのじゃよ。
じゃあやる。

何?じゃあ、からくり士になりたい?また短絡的な奴じゃの……。ふぅむ、時間があればじっくり教えてやってもよいが、ワシは各地を巡業する身じゃし……
ずっとここにいるじゃないか。

そうじゃ!代わりにワシの弟子を紹介してやろう。イルキワラキという男でな、奴にはワシの技術のすべてを伝えてあるんじゃ。
名前からしてタルタルかな。

近東の街アルザビの辺民街で、ワシと同じようにからくり芸を見せておるはずじゃ。なんでも、今1番の売れっ子からくり士と評判らしいぞ。奴の人形操りはワシのそれをはるかに超えておる。1度その芸を見てから、道を選んでも遅くはなかろう。
えっ、そんなにすごいの?
大通りのお店の所で人だかりができてるアレかしら。

あれ…?
大通りのアレじゃなかったから探したら、こんな人気のない所でひっそりとどうした。
売れっ子のはずでは?
……ん?なんだいキミは?

ああ、シャマルハーン師匠にボクのことを聞いてきたのかい。……でもね、残念だけどボクではキミの力になってあげることはできないんだよ。
どうして?
何故かって?……ボクは人形を失ってしまったんだ。
えっ!?

人形を失ったからくり士なんて、マスクを失ったゴブリンのようなものさ。
え……ええ?
そうなの???

え?マスクをとったゴブリンはどんなだったかって?……フフフフフフ。
ひ…ヒィ…。
このあいだもそれを聞いた奴がいたけど、そいつは話を聞いた1週間後に……

………
…………。

さぁ、もう帰ってくれ。これ以上この話を聞いたら、どうなっても知らないぞ?
な、なんなの!?
聞かないなら聞かないで怖い!!
……それでもからくり士について聞きたいっていうのかい?……分からない奴だな。
あ、いや、ゴブリンの方…。

いいかい?人形抜きに、からくり士を語ることなどできないんだよ!
それはうん、そうだね。
キミは耳と尻尾を抜きにミスラの良さを語れるかい?……そういうことさ。
お、おう?

けどボクには耳と尻尾が……じゃない、人形がないんだ。
本当に困ってるのか?

だからキミにミスラの……って、ああああああああああ違ーーーーーーう!!
ミスラが好きなのは分かった。

とにかく!人形がいないと話にならないんだよ!どうしても話を聞きたいっていうなら、まずは人形を連れてきてくれ!

さぁ、もういいだろう!行った行った!
人形を連れてくればいいのね?
ミスラじゃなくていいのね?