想いを遺すために 其の弐

– 翌日 –

白タルの散歩道

レオダリオン よっし、準備は整った。死者を呼ぶ杖、これが術を成功させるのに必要なものだ。

死者を呼ぶ…これ、欲しがる人たくさんいそう。

レオダリオン じっちゃんの遺した文書によるとだな、「これを持って、夜にバストア海を東から西に進めば、きっと死者と出会うであろう……」ってことらしい。

船に乗れってことかな?

レオダリオン まずはあんたにこれ、渡しておくよ。もし襲ってくる幽霊みたいな奴だったら、おいらじゃどうにもならないしな。多分その幽霊がお宝持ってるとかってオチじゃないかな?
りぃ わかった。行ってみるよ。

だいじなもの:死者を呼ぶ杖を手にいれた!

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船久しぶりだなー。
昔は船釣りもしたものだけど。

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当たり前のように乗船するのは私だけでしたっ。

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おばけ待ってた!

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べしーっ!

何も落とさなかったけど、いいのかな。

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あれ?
セルビナで待ってたの?

レオダリオン 待ってたよ!実はあんたたちが、マウラから船に乗るつもりだって話をある筋から聞いてね!
りぃ ある筋…?

キナ臭いじゃないですか。

レオダリオン 先回りして待ってたんだよ。で、どうだった? 何か持ってなかったかい?え……何もなかった?そんなはずは……。

カゲトラ いや……あったんだな、これが。

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レオダリオン あんた……ここで待ってるように教えてくれた人……。

ノーグ筋かい。

カゲトラ 戦ってたこいつは気づかなかったかもしれないが、倒した幽霊の衣から、1枚の紙切れが落ちた……。別の小船でつけていた俺たちはそれを入手したんだ。

えぇ…。
船から大海原へ落ちた紙っ切れを拾ったの…?
凄すぎるでしょ。

カゲトラ これは遺書だ……おまえ宛のな。あの幽霊は……おまえの、じっちゃんだ。
レオダリオン 何だって!?

じっちゃんの幽霊を呼び出す専用の杖だった?
それじゃあ他の幽霊は呼び出せないってことで、商売にはならないな…ちぇっ。

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りぃ ぎええ!?

ミツナリ ……おまえは、血のつながっていないわしの技を受け継ごうと必死だったな……。わしも、そうやって自分の技を遺せることに喜びを感じた……。

ミツナリ けどな、死期が近付くにつれ、わしが遺すべきものは別にあると気づいたのじゃ。ものや、技ではない……「想い」じゃよ。

レオダリオン ……これだけ……?わかるもんか、そんなこと言われたって……。

じいさん消えた…!!

幽霊だったわけじゃなくて、手紙を呼んでるって演出だったのかな。分かりにくい…。

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エンセツ 私にはわかる。人は……想いを伝えるために子を育む……。

うげぇ。こんなところにまで。

レオダリオン あんたは……。
エンセツ 亡くなったヨミの夫だ。ヨミは……若い頃、ミツナリさんから話を聞いていたのだ。偶然にも、この町で。

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ヨミ 想いを遺したい相手……かい?わかんないねえ……今のあたいは、忍の道を極めることで精一杯だ。
ミツナリ ヨミ……おまえさんにもわかる日が来るよ……自分が想いを遺したい相手が誰なのか……。

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エンセツ そしてその話を、死んだミツナリさんの遺品を探す仕事を受けたときに思い出した……。

ノーグを抜ける直前の話だよね。

エンセツ そのときに、彼女は既に私の子供を……アヤメを、身ごもっていた。

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ヨミ ここでミツナリじいさんから聞いた話……あたい、今ならわかる気がする。

ヨミ あんたの子供を産もうと思う。そして想いを伝えたい……。自分が忍の道に生きたことを恥じてるわけじゃない。

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ヨミ でも、本当に伝えたいことは忍の技なんかじゃない……忍の生き様……、それがあたいの想いなんだ。

ヨミ それに……あんたの心の中にも遺したいのさ、あたいの想いを……。

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エンセツ 道を極めようとする者は、いつしかその道の意味を見失う。今の君がそうじゃないのか……。

初めて良いこと言ったんじゃないか!?

エンセツ ミツナリさんは、それを伝えたかったんだ……。自らの魂を海に遺してでも……。
レオダリオン じっちゃん……。

思いを胸に去って行った…。

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カゲトラ とんだのろけ話を聞かせてくれたもんだな、エンセツ。
エンセツ お、お恥ずかしい限りです……。

カゲトラ ふん、いい加減そのおどおどした態度だけはどうにかしやがれ。

本当にそうだ。

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カゲトラ あと、そこの冒険者、報酬代わりにくれてやるぞ。そのミツナリの遺した乱波袴だ。
りぃ じっちゃんの?そんなのいいの?

カゲトラ あのガキがさっきこれを渡してくれ……ってな。
りぃ そうなんだ…ありがと。

カゲトラ ま、こっちの目的はちっとも解決してねえから、次の仕事のための手付金みたいなもんだと思っておくんだな。

ひぇ。

乱波袴を手にいれた!