海鳥は賽を振る 其の弐

アラパゴに来たぞーい。

ワスード ムティーブ兄ちゃん!無事でよかった!
ムティーブ ワスード。お前、あんまり無茶するなよ。

ムティーブ あんたは……傭兵?冒険者か?なんで弟を助けた?
りぃ む…。危なっかしいから?

ムティーブ ……いや、すまない。礼を言わなきゃならないな

ワスード すごいや!僕コルセアの人、初めて見たよ!想像よりずっとカッコいいなあ。
ムティーブ いいから早く家帰れよ。親父が心配するだろう。

あっ、センターにいた女の人が来た。

ワスード やだよ、僕もコルセアになる。
ムティーブ なんだって?

ズィーハ …………。ムティーブ、このガキは誰だ?
ムティーブ 弟なんだ。

ワスード この怖そうなおばさんは?
ムティーブ バカ、おまえ!我が「海猫党」のナンバー2のズィーハさんだよ!

ヒイイイイイイ!!!
怖いもの知らずが過ぎる!!!

ワスード は、はじめまして!僕もコルセアにしてくださいっ!

ヒィ!詫びも無しに要求を伝えたぁ!!

いや、ワスードから見たらズィーハは間違いなくおばさんなのかもしれない。いや、それでも礼儀ってもんが…。

ワスード ねえねえ、ズィーハさん。街で壁を飛び越えてたの、あの、「疾風のクルタダ」ですよね?僕知ってるんだ!コルセア「海猫党」のキャプテン!

子ども怖い!!

ワスード あの最後の閃光弾?くー。しびれるよなあー。いまも目がキラキラしてるよー!

無言が怖い。

ズィーハ みんな、ご苦労だった。おかげで作戦は成功だよ。

子どもを無視したぁ!

ズィーハ ただひとつ、気になることが……。
ムティーブ どうした?

ズィーハ クルタダが気がかりなことを言っていた……。「不滅隊の奴ら、集まるのが早すぎだ」ってね。

ズィーハ 私もまさかとは思うんだけど……
ムティーブ ……内通者か?

なんと。

ゴワム ズィーハ、不滅隊の主力はマムークへ出向いているらしいぞ。
ズィーハ ゴワム、確かなのか?

ゴワム ああ。ムティーブを救出したとき、連中が話しているのを漏れ聞いた。「本隊が、蕃都で釘付けでなければ」ってな。間違いないだろう。

ズィーハ でかしたよ。私はクルタダに伝える。みな、出撃の準備をしておけ!
ワスード 了解です!!

ひぇ。
そこで割り込むんかい!

ズィーハ お前らは帰れ。
ワスード ええええええぇぇぇー。

ズィーハ ガキなんか連れて行けるか!それに……。

ズィーハ お前は傭兵だろう?皇国に手を貸してるような犬じゃないか!
りぃ はっ!確かに敵対勢力…!!

ワスード この人は敵じゃないよー。だって僕を捜しに、白門まできてくれたんだ。ねぇー、「海猫党」に入れてよー。
ズィーハ 冗談じゃない!クルタダに見つかる前にさっさと失せな。

私が海猫党でもこんな子ども入れるの嫌だわ。
危なくて仕方ない。

ワスード ちょっと、黙ってないでお姉さんもなにかいってくれよー。コルセアになりたいからここまできたんだろ?ちがうの~?
りぃ そういえば、それはそう。

ズィーハ ……たまにいるんだ。あんた達みたいな物好きがさ。

やだ。ワスードとひとまとめにされてしまった。

ズィーハ いいか?コルセアには、言葉なんて必要ないんだよ。求めるものがあるなら、まず行動で示すことだね。

ズィーハ ……私たちの先祖、「コルセア」滅亡の地に行き、自らの勇気と覚悟を証明できるような物を探してきな。……話はそれからだ。

危なっかしい子どもと敵対勢力に属してる冒険者相手なのに、コルセアになる可能性を示してくれるの優しすぎではないでしょうか。

ムティーブ ……ワスード、お前、本当にコルセアになるのか?
ワスード うん!

ムティーブ また親父に怒られるなあ……。

ムティーブ ……わかった。じゃあまずはズィーハさんの課題をクリアしてみろ。

兄ちゃんも甘いな!

ムティーブ 「海猫党」は意志を問うが身分や種族は問わない自由な組織だ。お前の中の、勇気と覚悟を証明できればきっと仲間にしてもらえるさ。

ムティーブ コルセア滅亡の地、というのは、おそらく「タラッカ入江」のことだろう。お前達の試練だから、俺は助けることはできないけど……。

滅亡?
コルセアって滅亡したの?

この人たちは、残党ってこと?

ムティーブ がんばれよ、ワスード。
ワスード うん!