君への忘れもの 其の弐

イルミダ これが月の雫……。どうもありがとうございました。いい伝えにふさわしく澄んだ色をしてますね。早速、あの箱にかけてみましょう。

クロウモロウ 月の雫が手に入ったんですって!?どうです、奇跡は起こりましたか?

どっから聞いてきたんや。

イルミダ ……箱は開きましたが、それ以外は、何も。
クロウモロウ え、何も起こらないですって……?そ、そんな!やっぱり、伝説は伝説でしかないのか……?

イルミダ ……そのようね。わたしったら、何か期待しすぎていたみたい。あの人が、こんなことするはずがないもの……。

うーん、何かならないかなぁ。寂しすぎる。

クロウモロウ 箱の中に何か入ってたりしませんか?

イルミダ ……?この紙は何かしら?夫の字だわ、何か書いてある。……あの人からの、手紙?

おっ!!

イルミダへ
  何から書けばいいのだろう。
  私は昔から口下手の上、筆不精ときている。
  君も十分知ってるだろう?

  イルミダ、君を大切に想っている。
  この想いをなんとか言葉にしようとするけど
  いつも喉元で止まってしまう。
  でも、この気持ちだけは本当だ。

  君と一緒に飲む朝の紅茶、
  うたた寝をする休日の午後、
  そんなささいなことがとても幸せだ。

  この先もずっと、そういう君との時間を
  大切にしたいが、今の世の中を
  考えるとそれは難しそうだ。

  僕がこの手紙を読んでいる君の側に
  いることができればうれしいが、
  それすらもままならないかもしれない。
  だから最後にこれだけは書いておかなくては。

       
  愛している
       

  面と向かってこの言葉を言えなかったことを
  本当にすまないと思っている。許してほしい。
                       
              アダルュエル

イルミダ この日付……。あの日、戦地に向かう前にこんなものを……。

イルミダ あの人ったら最後まで……。

イルミダ あなたも、あの人と同じで不器用なのね。どうぞ。箱は差し上げます。
クロウモロウ えっ?

イルミダ ええ。もうわたしには必要ないですもの。本当の宝物をいただきましたから。

手紙が入っててよかった。

イルミダ あなたも、その彼女を本当に想うんだったら、後悔しないようになさい。女っていうのはね、相手が不器用でもかまわないの。素直な気持ちさえ伝われば……。

イルミダ この箱をどう使うかはあなたにおまかせします。
クロウモロウ ……ありがとうございます。でも、箱はいりません。

えっ。

クロウモロウ 僕もチュルルのやつに素直に伝えてみます、後悔しないように。イルミダさん、本当にありがとう。勇気が持てました。

おおお!

クロウモロウ その箱と交換しようと思っていた代金と品物はりぃにお渡しします。じゃ、僕行きます!
りぃ がんばって。

スリプガIIを手にいれた!
3000ギルを手にいれた!

これできっとうまくいくね。

イルミダ まさか箱の中にあんなものが隠されているなんて……。なんだかあの人がまだこの部屋にいるような、そんな気持ちになりました。どうもありがとうございました。

さっき見えてたから、本当にいるのかも。
それが箱の奇跡の力だったのかな。

クロウモロウ あわわ、その、ちょっと時間もらえますか?すみませんっ!!

どうした!?
伝える前に何かあったの?

チュルル なに?こんなとこ呼び出して。お客さんが来たら困るじゃない。用事ならさっさとすませてよね!

今から伝えるんかい。

クロウモロウ 僕の……。僕の本心を聞いてほしい。

チュルル ……えっ?

クロウモロウ ずっと素直になれなかったけど、今日は、今日だけは本当のことを言うよ。僕は……

クロウモロウ 僕は、君とここでずっといっしょに仕事がしたいんだ!離れたくない。

クロウモロウ ……好きなんだ、君のことが!

言ったああああああ!!!
よくやった!えらいぞ!!!

クロウモロウ だから、駆け落ちなんてバカな真似はよしてくれ。

チュルル ……駆け落ちなんてしないけど?
クロウモロウ ……へっ?

やっぱりクロウモロウの思い込みかい。

ルンガコプン やあ、チュルルさん。やっぱり、あなたにはその髪型がよく似合う。

クロウモロウ な、なんだ、あんたは!馴れ馴れしいじゃないか、チュルルは絶っっっ対に渡さないからな!

チュルル 何言ってんのよ!彼は美容師のルンガコプンガさんよ。髪型を変えないかって、誘われてたの。

ええ。

ルンガコプン しつこく勧めたんだが、断られてしまってね。彼女の幼なじみがうらやましいよ。
クロウモロウ ……え?

ルンガコプン その子が昔、かわいいと言ってくれたんだそうだ。それからずっとこの髪型なのさ。お願いしたいよ、その幼なじみくんに。私の考案した髪型をチュルルさんにしてもらえるようにって……。

あらまぁ。

チュルル ルンガコプンガさん、それは言わない約束!
ルンガコプン はっはっは、そうだったね。残念だけど、失礼するよ。気が変わったらいつでもどうぞ!

チュルル わ、分かったでしょ?あたし、駆け落ちなんてしないから。
クロウモロウ そ、そうか、そういうことだったんだ。ははは……。

チュルル ところで、さっきの話なんだけど……。その……。
クロウモロウ ……と、当然軽いジョークさ。おもしろかっただろ?

えーーーーっ!!

チュルル ムッ……、そんなこと分かってたわよ。すっっっごい、つまんなかった!いつもどおり、ね!!相変わらずユーモアのセンスゼロ、皆無!よく接客商売やってるわ!

ああっ。

クロウモロウ ぐっ、悪かったな……!ところで、その幼なじみってだれなのさ?

チュルル あなたじゃないことだけは確かね!大体なんであなたに教えなくちゃいけないのよ!

あああっ…。

クロウモロウ ああ、そうかい。でも君に幼なじみがたくさんいたとはとても思えないけどね!

ばっ、ばかたれぇ~!!!
売り言葉に買い言葉してんじゃないよっ。

早いうちに訂正を…。

言い合いは…続くよどこまでも…。

クロウモロウ う~ん、あれで僕は気持ちを伝えたことになるんでしょうか?どう思います?
りぃ ダメダメのダメよ。

クロウモロウ えー、やっぱりダメですか。でも、もうあんなことは二度とできない気がします。今思い出しただけでも、「顔からファイア」です。

尻に火がついてやっと動いたのに顔からファイアとか言っとる場合かい!
尻にフレアすっぞ!

クロウモロウ でも、毎日チュルルが隣にいてくれる、それだけで僕は幸せです。これだけは断言できますっ!あわわ、もちろんチュルルのやつにはナイショですよ!

チュルル まぁっったく、あいつには参っちゃうわ。ホンットに素直じゃないんだから。ちょっとドキッとしちゃったあたしがバカみたいじゃないの、ねぇ?

それ本人に言ってやったらいいよ。

チュルル でも……、ホント言うとね、ちょっとうれしかったんだ。あのクロウモロウがあそこまで真剣に……。って、キャッ、何を言わせるのよっ!

なんだかんだ、大丈夫そうなのかなこのふたりは。

あれかな。
そのうちふたりともイルミダさんに優しく諭されそうだな。

幸せを月の雫に願っておくよ。