君への忘れもの 其の壱

これは、ジュノ下層のお互い素直になれない幼馴染、水晶玉の占いのクロウモロウと、タルットカード占いのチュルル。そしてジュノ上層の未亡人イルミダそれぞれの連続クエストの集大成。

クロウモロウ ようこそ!わたくしは占い師のクロウモロウです。あなたがここへ立ち寄ったということは人生の岐路において迷っていらっしゃるということ……

そうだったのか…。

クロウモロウ ……ん?

どこぞのタルタルが。

ルンガコプン やあ、チュルルさん。どうだい、調子は?

チュルルのお客さん?

チュルル ルンガコプンガさん!どうしたの?突然。

常連?

クロウモロウ ……ルンガコプンガ?

チェック入りましたッ。

ルンガコプン この前の話考えてくれたかな、と思ってね。
チュルル あたし、うれしいけど……。

クロウモロウ この前の話?

お客さん (私) が目の前にいるのにそれどころじゃない様子。

ルンガコプン だったら、決まりだ。すぐに行こう!じっとしていたって何も変わりはしない。生まれ変わるんだ、新しい自分に!可能性を信じて。

クロウモロウ (何の話だろう?生まれ変わるとか、どこか行くとか……。チュルルを連れていっちゃうのか?)

怪しい宗教じゃないよね!?

チュルル そうね。ずっとこのままでもつまらないし、思いきってみようかな?
ルンガコプン よし。これで今までの自分とはお別れだ。チュルルさん、例の場所で待っているから。

クロウモロウ (……まさか、駆け落ち?チュルルが? ど、どうしよう。このままじゃ行っちゃう……。と、止めないと!)

駆け落ち!?

クロウモロウ (でも、どうやって?僕が何を言っても、チュルルは聞く耳持たないだろうし……。第一、断られでもしたら僕は。)

クロウモロウ (だからって、みすみすこのまま駆け落ちさせるわけには……。)

クロウモロウ ……あの、もしもですよ?もし、あなたに好きな人がいて、その人がどこか遠くへ行っちゃうとしたら、どうします?自分の気持ち、言えますか?仮定の話ですけど。

選択肢が出た。

言える?
 言える
 言えない

言えるとか言えないとかじゃなくて、この状況言うしかないでしょ。

りぃ 言うのだ。
クロウモロウ ……そうですか。僕にはその勇気がうらやましいです。

クロウモロウ あわわわ、たとえばの話ですよ、そんな真剣にならないでください。僕には全然関係ありませんから。

バレバレやが。

クロウモロウ (なんとかこの気持ちを……。でも、でも、そんなことできっこない。)

クロウモロウ ハァ、どうしたらいいんだろう。後悔はしたくないし、でも、もし断られたら顔をあわせにくいし……。困ったなぁ……。

チュルル ……あぁ、あたし、どうしたらいいのかしら。思い切って聞いてみたいけど、そんなことできやしないし……。

うーむ、一度素直になるしかないと思うけど、ここまで意地張ってきてるからなかなか難しいよなぁ。うーむ。

イルミダ あら、いらっしゃい。時間があるのでしたら、お茶でもいかがです?わたしも、少しお話したいですし。
りぃ やったぁ。

イルミダ この小箱、主人からのプレゼントなんですよ。

亡くなったご主人の…。

イルミダ でもね、ほら。特別きれいなわけでもないし、カギがないから開けることもできないの。こんなものを、好きな人に贈るなんてねえ。……ふふふ。

イルミダ プレゼントだって、これひとつだけなんですよ?それも、「ほらっ」てただ一言だけ。照れ屋で口下手で……。

不器用すぎる。

イルミダ それでも、わたしには大事な宝物なんです。おかしいでしょう、女って?こんな箱を、ずっと大切に持っているんですもの。

これは……顔中ひげもじゃ?

クロウモロウ 失礼します。
イルミダ あら、どなたかしら?

クロウモロウ 下層にて占い屋をしているクロウモロウと申します。突然の訪問、お許しください。

丁寧なあいさつ。

クロウモロウ 実は、お願いがあるのです。その小箱、譲ってはもらえないでしょうか?

イルミダ えっ?
クロウモロウ お客様から聞きました。イルミダさんが、随分古い小箱を持っているって。それはもしや、魔法の小箱なのでは?

クロウモロウ 口下手な神様が、意中の相手へ言葉にできない想いを伝えるために使ったといわれる……。

神様も口下手で困ってたりするのね。

イルミダ ……この箱が?
クロウモロウ ご存知なかったのですか?

クロウモロウ 相手への想いが詰まった箱は月から落ちてくる月の雫で開けることができるんです。そのとき、奇跡が起こるといわれています。永遠の愛が約束される、と。

クロウモロウ ……まさか、知らずにずっと閉じたまま?
イルミダ ええ。夫からの贈り物で……。

どうやっても開かなかったのかな。
でも、そんな箱とは思いもつかなかっただろうしね。

クロウモロウ 僕はチュルルに、いや、その幼なじみのやつに、どうしても伝えたいことがありまして……。だから、その箱に自分の想いを入れたいんです。

イルミダ 自分の口で、その子に伝えればいいんじゃないかしら?

ズバッと正論キタァ!!

クロウモロウ 言えませんよ、そんなこと!

まだ危機感が足りんなぁ!

イルミダ もしかしたら、あの人……。いえ、そんなねぇ?あんなに気のまわらない人がそんな伝説を信じるなんて……。
クロウモロウ ボヤーダ樹で月の雫を手に入れれば、箱を開けて確かめられるんですが……。それまでは、僕もその箱を譲ってもらうわけにはいかないですし。

イルミダ ごめんなさい。またあなたに迷惑をかけてしまうけれど……。お願いできませんか?月の雫を。
クロウモロウ 僕からもお願いします!もし伝説が本当なら、きっとご主人の想いが入っているはずです。奇跡が起きるはずなんです!
りぃ いいよ。

イルミダ ありがとうございます。こんなお婆さんの無理を聞いてくださって。でも、あの人の想いなら、やっぱり見てみたいの。

ホイッと。

だいじなもの:月の雫を手にいれた!