冥闇 其の壱

白タルの散歩道

ルト りぃ、よく来てくれたわね。修復に使えるかもしれない金属の手がかり、見つけたわよ。
りぃ えっ、すごい。

ルト 冥闇の鏡に使われている金属と同じものを得ようと研究を続けた結果、よく似た金属があることが発見されていたらしいわ。もしかしたら、その金属が鏡の修復に使えるんじゃないかしら?

白タルの散歩道

ルト 情報はこれだけしかなくって……。まずは、この金属を試してみるしかないわね。金属の名前は、宵のみずかね。すべて、「鏡の伝承」に記してあったわ。驚きよね……。

作者のタリアセン、マジで何者なんだ。

ルト それから、パロメッタちゃんのことだけど、まだ小さいのにいろんなことがあって、とてもとても疲れていた様子だったわ……。冥闇の鏡の行方が掴めて、少し安心したんでしょうね。ラウラーナさんに見守られて、今は宿屋で休んでいるわ。

白タルの散歩道

ルト それにしても……。「鏡の伝承」には、わたしたちの知らないことがたくさん書かれていたわ。
ヤーガウミガ ……それは、どういうことだい?

ルト ……冥闇の鏡にはね、わたしたちが認識している以上の力があるらしいの。もし、それが本当なのだとしたら、お宝としての価値は、相当跳ね上がることまちがいなしよ。
ヤーガウミガ ……だけど、魔物に力を与える以上の力って、いったい……?

白タルの散歩道

ルト この本、「鏡の伝承」の著者であるタリアセンはこう記しているわ。読んでみるわね。

ルト ……冥闇の鏡こそが、……私の長年求めていた力を秘めている……。

タリアセンは力を得て何かをしたかった?

白タルの散歩道

ルト ……いや、力そのものがこの鏡に宿っているのではない……。鏡は力を引き出すための介在となるもの……、と言えばわかりやすいだろうか……。

ルト 冥闇の鏡は、王の命を受けた研究者たちの手で作り出されたものだ。

王?

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ルト ……もう、ずいぶんと古い時代の話になる……。当時あった、さる王国の王は隣国の国力を恐れ、自らの国に強大な力が必要であると考えた……。

ルト 王国に伝わっていた宝のひとつであった金属を用いて作られたのが、この冥闇の鏡である。

ルト 冥闇の鏡から引き出される力は、ひとつの都市を壊滅させてしまうほどの破壊力を一瞬のうちに放ったと、伝えられている。

えぇ!?

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ルト その制御しきれない強大な力が、王国自身にも甚大な被害をもたらしたため、一度きりしか使われることはなかった……。

試し撃ちで自滅したのかな。

ルト 途方もない力を手にしたせいなのか、それとも、……別の理由があったからなのか……。

違うっぽいかも。

白タルの散歩道

ルト かつての王国は、今では影も形もなくなってしまい、その名前も人々から忘れ去られてしまっている……。

ジラートの他にも粉微塵になって忘れられてる国が?

ルト 王国の民の子孫は、国を持たない人々である。心の支えを、どこかに必要としていたのだろう。 冥闇の鏡を拠り所として崇め、やがてご神体として祀るようになっていった……。

ということは、パロメッタはその王国の子孫?

白タルの散歩道

ルト 人々は、冥闇の鏡に、自分たちの想像も及ばない何かの存在を、敏感に感じとっていたのかもしれない。その判断は、けっして間違っていなかったと言える。

ルト なぜならば、冥闇の鏡こそが私の求めていた力……、得ようとも得がたい力、……黒き神の力を、引き出すことのできる道具なのだ……。

えっ、黒き神

デーモン族を生んで、男神のふりをしてるっていう「黒ォい神」?

タイムリー過ぎる話題!!

てかなんで、タリアセンは黒き神の力が欲しかったのか。

白タルの散歩道

ヤーガウミガ ………………。
ルト と、いうことらしいのよ。

ヤーガウミガ 黒き神……。それは、本当なのかい?
ルト ……おそらくはね。わたしも、初めてこのくだりを読んだときは、自分の目を疑ったわ。だけど……。実際に冥闇の鏡は存在しているし、そういった力が鏡に備わっている可能性は否定できないと思うわ。

そうだねぇ。

ルト このことが事実なのかそれとも違うのか……、修復してみないことには確かめようがないわね。

白タルの散歩道

ルト 黒き神の力を引き出せるとしたら、これ以上ない……類稀なるお宝……ってことだけは、間違いないわ。
ヤーガウミガ そんな……、危険すぎやしないかい?

ルト 心配ばかりしていたら、何もできなくなってしまうわ。そうじゃない?それに……。パロメッタちゃんのことを考えると、何もしないでいるなんてできないわ。

白タルの散歩道

ルト 冥闇の鏡の修復は、あの子のためにもぜひとも成功させたいの。
ヤーガウミガ う……、そうだね。分かったよ。

ルト ……そう。では、さっそくだけど、さっき話した宵のみずかねを手に入れてきてほしいわ。りぃと協力してね。

白タルの散歩道

ルト 宵のみずかねを体内に宿す、とてもめずらしいスライムがいるのですって。そのスライムは、「鏡の伝承」が書かれた時代にはオルデール鍾乳洞に生息していたと記されていたわ。

オルデールかぁ。

ルト 宵のみずかねはぷるぷるとした金属質の素材よ。扱いは丁寧に頼むわね。 わたしは、その間に保管してある冥闇の鏡を取りに行くわ。またこの場所で落ち合うことにしましょう。
りぃ うん。

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ルト ……ふぅ。なんとかヤーガウミガを丸め込むことができたようね。もっといろいろと反対されるのではないかと思って、ひやひやしたわ。でも、終わりよければすべてよし♪よ。

白タルの散歩道

ルト 黒き神……か。

ルト ……黒き神のこと、パロメッタちゃんは知っているのかしら……?聞いてみる必要がありそうね……。