風纏う弓 其の壱

ガウィーシュ なに?ナジュリスさまについて聞きたいだと……?
りぃ うん。

ガウィーシュ 怪しいヤツめ。そうやすやすと、不審者に教えられるか!
りぃ くっ、これを見ろ!

ガウィーシュ ……ん、なに?ビヤーダの紹介……?ではナジュリスさまの詩を?そいつは素晴らしい!

本当にファリワリの歌大人気なんだ。

ガウィーシュ ……だが、取材なら私に聞くよりも直接、御本人に頼むといい。とても気さくな方だからな。

ガウィーシュ 最近は、御休憩の時よくおひとりでワジャーム樹林を散策されておられるようだ。

あんな敵だらけの所をひとりで散歩する強さよ。

ガウィーシュ 見かけた者の話では、なんでも、矢のようなものを眺めて物思いにふけっておられたとか……。いささか心配でもある……。

矢のようなものってことで、薄汚れた矢ってのが必要なんだって。

りぃ ふむ…。

薄汚れた矢は次のストレージに存在します。
モグサッチェル

りぃ 持ってたわ。

ワジャーム樹林のギワブ監視塔へ。

ナジュリス あら……?

ナジュリス 珍しいわね、ここに先客がいるなんて……。
りぃ お付きの人が物思いにふけってるらしいって心配してたよ。

ナジュリス そうですか。ガウィーシュが私のことを……。ごめんなさい。たいしたことではないのに、あなたにまで手間をとらせてしまって……。

ナジュリス わかりました。すぐに戻ると伝えてください。
りぃ うん。わかった。

ナジュリス ……?

ナジュリス あの、待って。それは……

ん?

ナジュリス 薄汚れた矢……?そんな……信じられない……。あなた、それがなにかご存知?

りぃ ううん。知らない。
ナジュリス ……そうでしょう。無理もありません。それは、他の方にはほとんど価値のないものですから……。

ということは、ナジュリスには価値のあるもの、と。

ナジュリス ……実はその矢は私のある出来事を思い出させる大切な品。この場でつがえ、その時の苦悩を再び自らに課すためこうして今も時折、ここを訪ねているのです……。

苦悩を課すために!?
なんか、よほどの事なのね?

ナジュリス せっかくです。聞いていってください。その一本の矢にまつわるお話を……。
りぃ うん。

やった~!

ナジュリス それはまだ皇国西部における蛮族の侵入がそれほど活発ではなかった頃のこと。弓兵だった私は東部戦線で肩を負傷してしまい……当時は閑職と揶揄されていた西の皇都の防衛隊に転属を命じられ、この街にやってきました。

ナジュリス そして、ここは私の弟、ライアーフの任地でもあったのです……。

ライアーフって、上等兵のアサルトで敵に捕まってた人よね。

Azahma ねえ、みてみて!あれが天才射手ナジュリス様よ。肩を壊したって聞いてたけど、やっぱ格好いいわ~。
Yabeesha ああ、たしか東部戦線で城壁の上にいた敵将の頭を冑ごと矢で射抜いたって噂の……。
Wayaati あ、それ私も聞いたことある~。でも、本当かどうか怪しくない?なんだか、随分と線が細いし……。

兜をも貫いた?
そんな…無茶よね。
継ぎ目に入ったのかしら。

Yabeesha だよねぇ。思ってたのとはちょっとイメージ違うなぁ。
Azahma でもほら、彼女。皇国兵訓練所で、弓の師範を務めてるタイラ教官のご息女なのよ?

Yabeesha へぇー。その名前って、つまり東人の血を引いてるってこと?

ナジュリスの名字ってタイラなのね。
平さんか。

Wayaati 敵と内通して、手柄を水増ししてたりして。
Azahma え~?それはないよ~!わたし、タイラ教官の演武を見たことあるもん。チョコボを全速で走らせたまま矢を射て、小さな的に命中させたりできるんだよ。すごくない?

流鏑馬か。

Wayaati ふ~ん。ま、そうだとしても、その能力が子供に受け継がれるとは限らないよね。

Yabeesha なにそれ、あんた、なにか知ってるの?
Wayaati うん。だって、あいつライアーフの姉貴だよ?

Azahma うそッ!?
Yabeesha え~ッ! あの、防衛隊一のトラブルメーカー「いのししライアーフ」の?

すごい二つ名だぁ!!

Wayaati あたし、あいつの親の顔が見たかったから軍の経歴書を見たんだもん。間違いないよ。
Yabeesha 弟がライアーフかぁ。それじゃあ、ねぇ……。

ひ、酷い評判…。

よほどへっぽこくんなのね。
だからアサルトでも捕虜になってるのか…。

Azahma あ、こっち見た。

全部聞こえてるんかい!
もっと小声で喋ろうよっ。

ナジュリス ……私の弟がなにか?
Azahma い、いえ。おつかれさまです。ナジュリスさま……。

ナジュリス そちらこそ。お勤め、ごくろうさまです。
Yabeesha 今日はなにかのご任務で?

ナジュリス いえ、今日は休暇をとっていて……その、弟の誕生日なのです。
Azahma まあ、それはおめでとうございます。でも、なぜ皇宮へ?

ナジュリス 弟がどうしても皇宮に飾られているバルラーン様の肖像画と同じデザインの帽子が欲しいというもので。
Wayaati それで、わざわざ見に来られたのですか?ずいぶんと、おやさしいことですわね。

なんか言い方にとげがあるわね。

ナジュリス 負傷した折、弟にはずいぶんと心配をかけましたから……。

お詫びを兼ねてのプレゼントなのね。

Azahma 今もお悪いのですか?
ナジュリス いえ、おかげさまで。もうだいぶ、癒えました。

ナジュリス それでは、私はこれで……。
Azahma …………。

Yabeesha ありゃあ、相当弟に苦労させられてるわ。
Azahma うん、そうだね……。

ライアーフ、とんでもない人物っぽいぞ…?