詠うは誰そ彼の 其の壱

Shaeema ねえねえ、それから、それから?
ファリワリ ……でね、わたくしは……。

ファリワリが女の子に囲まれてる。

ファリワリ 小山のような図体のトロールどもを、ちぎっては投げちぎっては投げ……けちょんけちょんにした、ってわけですよ。
Shaeema ほんとにぃー?すごーい!ファリワリさん、カッコいぃー♪
Rhub Wusthamoi ああ……胸がときめく英雄の詩を書かれるだけじゃなくてご本人もそんなにお強いだなんて……!

んん??

ファリワリ フフ、まあまあまあ……。

Rhub Wusthamoi それで、それで?ハルブーンにはやっぱりおひとりで?
ファリワリ ええ、もちろん……と、正確にはりぃっていう付き人がいっしょでしたけど……で、でも1人も同然だったんですよ。

んんん???

ファリワリ そいつったら道に迷うわ、トロールの衛兵に挨拶してしまうわ。ほんと、使えないヤツでしたから。
Shaeema あっはっは。やーだーー。

なんだとぉ!

ファリワリ まあ、わたくしにかかればトロールの1匹や2匹や10匹くらい朝飯前ですから、なんとかなったものの……助けてやったときのその付き人のマヌケ面ときたら!きみたちにも見せてあげたかったですよ。

ファリワリ そうそう、ちょうどこんな感じの顔したヤツでね……

ファリワリ ……ってうわぁぁぁぁあ!!いつ、の、まに!いるならいると言ってくださいよ!
りぃ サッキカライタヨ。

Shaeema あれ?ファリワリさんこの人は?
ファリワリ あ、うん、これが、その付き人っていうか……

Shaeema あ!じゃあハルブーンでトロール達を怒らせた……
Rhub Wusthamoi 孤軍奮闘するファリワリさんの足をひっぱりまくってた使えない人ですね!

ファリワリ わー!わーわー!

こんにゃろう。

Shaeema
ファリワリ ああ、うん、まあ……あの、その……

ファリワリが、頼み込むような目でこちらを見ている。

りぃ ウソつくな。
ファリワリ ……う、うんうん。そうだねそうですよ。ええ、ええ。

ファリワリ ……お嬢さんがた、わ、わたくしはそろそろ仕事の時間のようです。申しわけないが、ファンの集いはまた今度で……。
Shaeema えぇーー。
Rhub Wusthamoi つまんなーい。

訂正せんのかい!

傭兵試験の時といい、変な噂ばかり流される!!

ファリワリ ……ふう。失礼しましたね。
りぃ 噓ついてまで人気取ってたのはどうしてなのさ。

ファリワリ ……え、彼女たちは何者かって?

ファリワリ ……いや、その以前作った「天駆ける剣」の詩を覚えていますか?実はあれが、方々で大評判でして……。わたくし、あちこちで、さっきみたいにファンに取り囲まれてしまう有様なのです。
りぃ えっ!?すごいじゃない。

ファリワリ あるミスラの女の子の追っかけは、わたくしの部屋の窓にびったり張り付いて覗いてたし……3階ですよ?

ファリワリ あるヒュームの女の子の熱狂的ファンは、ラブレターを大量に送りつけてポストを埋めてしまおうとするし……。
りぃ ヤバイのしかいない。

ファリワリ ……いえいえ、皆まで言わずとも、分かっていますよ。わたくしも、浮れてばかりいるわけではありません。騎士が貴婦人のために戦わねばならぬ時があるように詩人には歌わねばならぬときがある……。

人気あるうちに次を出した方がいいよね。
焦って駄作になったら逆効果だけど。

ファリワリ ええ、そうです。わたくし、再び詩作に励むことにしまして!五蛇将の詩を再び作らんとちゃんと水面下で、準備を始めているのですよ!

ファリワリ ……きみ、天蛇将ルガジーン付きの副官、ビヤーダさんを覚えていますか?
りぃ うん。

ファリワリ そう、彼女から五蛇将のお話のつづきを聞かせてもらう約束だって、既にとりつけてあるんですから。ふふん、どうです。抜かりないでしょう?

ファリワリ さっきのことだって女の子に囲まれてしまったのは単なる偶然で……実は、わたくしはそろそろ休憩時間になるビヤーダさんをここで、お待ちしていたわけなんです。

そうなんだ??

ファリワリ そうだ、付き人君、きみも一緒に話を聞いていくといいですよ。

ファリワリ あ、いやいや。また危険な場所に行かされそうになったら押し付けよう、とかそんなんじゃないですよ?

くっ、そういうことか。

ファリワリ ……お、噂をすれば、いらっしゃったようです。さあ、共に取材に励みましょう、付き人君。あ、といっても給料は期待しないでくださいね?
りぃ ええ~。

ファリワリ これは、これは麗しのビヤーダさん!このファリワリ一日千秋の思いで、お待ちしておりました!
ビヤーダ や、やあ、待たせたね。

ちょっと引いとるやないかい。

ビヤーダ あら、あんた……。たしか、このあいだの……そう、りぃだっけ?
りぃ うん。

ビヤーダ あの時は世話になったね。ルガジーンさまも、本当に喜んでおいでだったよ。
りぃ おお、よかった。

ファリワリ いやいや、あの程度のことこちらこそお安い御用ですよ!
ビヤーダ ……このファリワリが他の五蛇将の詩も作るから話を聞かせろって、うるさくてね。まあ、あの時の恩もあるし個人的に協力してもいいかな、と思ってさ……。

優しいなぁ。

ビヤーダ それに、なんだかんだ言ってもこいつの詩でルガジーンさまたちのことが世に広まるのは悪くない気がして……。
ファリワリ そうでしょう、そうでしょう。

ビヤーダ ……で、今日はどんなことを話そうか?
ファリワリ あのとき、尻切れトンボになってしまった、話のつづきからお願いします!

ビヤーダ ……どこまで話してたんだっけ?
ファリワリ ほら!ルガジーンさまが東方戦線に赴かれそこで、ガダラルさまと……。

ビヤーダ ああ、そうそう。思い出した。まかせて。……ルガジーンさまは東方に行かれた後……。

ガダラル ……貴様、またか!邪魔するなと言ったはずだぞ。こんな雑魚ども、俺1人で十分だ!
ルガジーン それはどうかな?

あれ?斬りかかった続きじゃなくて、後日の話?

ルガジーン ガダラル将軍。君は兵の命を惜しむあまり自ら突出する嫌いがあるが……
ガダラル な、なに!?

ルガジーン 兵は将と共にあれば本来以上の力を発揮するものだ。もっと、部下を信用してやれ。
ガダラル ハッ!知れたことを。

ルガジーン それに私の剣が敵を近づかせなければ、君は本来の火力を存分に発揮できるはずだ。
ガダラル ……フン。好きにしやがれ。

ガダラル 俺サマのサラマンダーフレイムを見て腰を抜かすんじゃねぇぞ。

ルガジーン フッ、抜かせ。

ビヤーダ ……まぁ、そんな感じで天蛇将ルガジーンさまの志に共感した我が国最強の英傑たちが皇都に集結した。

一気に揃ってしもた。

ビヤーダ その数は、ルガジーンさまも含め奇しくも5人。

ビヤーダ そう、我が国の象徴ザッハークの伝説に登場する蛇の使徒と同じ数だった。

ビヤーダ だから、誰からともなく、ルガジーンさまたちはこう呼ばれるようになったのさ。「五蛇将」と……。

ビヤーダ ……はい、おしまい。
ファリワリ ……あの、あれ?ちょっと、待ってください!?それだけですか……?

ビヤーダ そうだけど?

ファリワリ えぇ~。ダメですよ~。ガダラルさまの話だって前回から飛んじゃってるし、物語には、起承転結ってもんがあるでしょう?
ビヤーダ 起承転結って?

確かに詩人でもなければ気にしないことかもしれない。

ファリワリ ……え?え~と、友情とか誤解とか愛憎とか嫉妬とか……なんか、そんな熱いドラマのあれこれですよぅ!
ビヤーダ う~ん、そんな話あったっけ……。

ファリワリ なあ、付き人君?きみだってそう思うでしょう?

これ以上聞けそうにない感じかな。

りぃ 他の将軍の話が聞きたいな。

ビヤーダ ……うーん、でも私は天蛇将さま以外の将軍さま方については詳しくはないんだ。ごめんね。
ファリワリ えええぇぇぇえーー!?

ビヤーダ そもそも私はルガジーンさま付の副官だし、そんなにがっかりされてもなぁ……。

確かに。

ビヤーダ そうだ!せっかくだから将軍さまたちに自分で取材してみたら?
ファリワリ えええええぇぇぇえーー!?

ビヤーダ だいじょうぶだよ。橋渡しぐらいなら私がしてあげるし。
ファリワリ ……いやぁ、そういうことじゃなくて……。

ファリワリ 炎蛇将軍!五蛇将結成の経緯についてお聞かせください!

ビシージの音楽だ。

ガダラル ……その名で呼ぶな……。
ファリワリ ?とにかく一言ください。炎蛇……

ガダラル 俺をその名で呼ぶな~ッ!
ファリワリ ヒイイイィィィ!!

ええええええ!?

炎蛇将軍って名前嫌いなの?

ってか、一般市民を丸焦げにする将軍って!!!

ファリワリ ……という風に取り付く島もなかったわけでして……ビヤーダさんだけが頼りだったのですが……。
ビヤーダ そうか……。

ちゃんと自分で頑張ったんだ…。

ファリワリ しかぁし!わたくしとて吟遊詩人の端くれ。命を惜しんで詩は作れません!
ビヤーダ おお……。

ファリワリ かくなる上は腹をくくり……

ファリワリ 付き人君!私にかわって五蛇将のみなさんに体当たり取材を敢行するのです!
りぃ なんでよ!焦がされるじゃないか!!

ファリワリ おねがいッ!!
りぃ くっ、泣いてまでの願い……分かったよッ。

ファリワリ そうこなくちゃ!さすがは愛と勇気を詠う詩人ファリワリの一番付き人!

ビヤーダ 待って。よくも悪くも名の知れたファリワリならともかく、りぃは一介の冒険者だろう?

良くも悪くもなんだ。

ビヤーダ お忙しい五蛇将の皆さまが、突然、取材なんて言われても応じてくれるかなぁ……。

ファリワリ そんな……。なにか、手はないものでしょうか?
ビヤーダ 無理いわないでよ……。

ファリワリ そうですか……ああ……かくして、大傑作間違いなしの冒険譚は日の目を見ることなく街路の露と消えたのです……。
ビヤーダ ま、まあまあ。そう気落ちしないで。

ビヤーダ そうだ!「将を射んと欲すれば先ずチョコボを射よ」という。将軍の側に控える者にでも訪ねてみたら?

ビヤーダ さいわい私は風蛇将の副官のガウィーシュや、土蛇将旗下のタイハールと顔見知りだし。必要なら紹介状を書いてあげるよ。
ファリワリ !!

おお~。

ファリワリ さすがはビヤーダさん!聡明な貴女に紹介していただけるだなんて我々、もう大砲満載の大船に乗った気分です。
ビヤーダ そ、そう……?

ちょっと引いとるやないかい。

ファリワリ 聞きましたか?付き人君。ただちに人民街に行きターゲットに取材を試みるのです!

ファリワリ またしても、世紀の大傑作がきみの双肩にかかっているのですよ!!

だいじなもの:ビヤーダの紹介状を手にいれた!

次のお話が楽しみだ!