天駆ける剣 其の参

火事だぁ!!

あっ!建物の中に女の子が!

アヴゼン あふまうヨ……きイタトオリダナ、アレヲみヨ!
アフマウ ……そうね。逃げ遅れたみたい……。

アフマウ アヴゼン……?
アヴゼン ウム。あふまう、つイテくルガヨイ!

アヴゼン頼もしい!

ルガジーン おい、きみ待ちなさい!

ルガジーン 危ない!下がれ!!

無視して行ったァ!

ルガジーン !!

あっ、敵が。

ルガジーン くそっ!!

燃え広がってる!

うおー!
アヴゼンすごいぞ!

そんな細腕で力持ちなのね。

ルガジーン おい!

アヴゼン ……。
ルガジーン 彼女は……?

アヴゼン …………。

力尽きちゃった!

ルガジーン !!

倒れてる!!

アフマウ ……ん……。

Nateeyu おねがい。おねえちゃん、目を覚まして……。
ルガジーン 心配ない。気を失っているだけだ。

怪我が無くて良かった。

アフマウ ……ンッ…………ケホッ…ケホッ……。
ルガジーン もう、安心だ。しっかりしろ。

アフマウ ぶじ……だった……の?……よかった……。

アフマウ あなた……が、わたくしを?
ルガジーン ああ。

アフマウ ……ありがとう……。

アヴゼンはまだ動いてないな。
大丈夫かな。

ルガジーン ……無謀だ。命を粗末にするな!

ルガジーン ……だが、見上げた勇気だ……。

アフマウ ……おねがい。……もう、行って……。
ルガジーン なんだ?

アフマウ ……わたくしは大丈夫ですから……。もう……行ってちょうだい。

アフマウ ……街では、あなたを必要としてる人が、まだまだいるはず……。だから……はやく行って、助けてあげて……。

ルガジーン しかし、ここに子供2人、残すわけには……。

子ども2人。

あ、2年前だから。
…アフマウって何歳なんだろう。

今のアフマウがゲームのヒロインにありがちな16歳くらいとしたら、この時14歳くらい?

リシュフィー あっ!アフマウ様!

アヴゼンが動き出したー!

リシュフィー ご、ご無事でございますか?どこか?どこか、お怪我は!?

アフマウ ……だいじょうぶよ。
リシュフィー よかった……。

リシュフィー じゃなくて!御身になにかあったら、どうするんですか?ご自重ください!!
アフマウ ご、ごめんなさい……。

アヴゼン (りしゅふぃーハしんぱいガ、すギルトおもウゾ。)

リシュフィー ……アフマウ様、あの者は?
アフマウ 彼は、わたくしのために……

アフマウ 待って!

アフマウ その腕……ケガをしているの……?

ルガジーン ん?ああ、たいしたことはない。

結構痛そうだが!?

アヴゼン いたいたシイゾ!ヤセがまんスルナ。

そうだそうだ。

ルガジーン ……。

アフマウ これ……。

あっ、頭のリボンを取って…。

縛った。

ルガジーン すまない……。

あんな細いのひと巻きで効果あるんかな!?

あっ、もしかしたら何か魔法がかかってるのかもしれない。

アフマウ あ、あの…………お名前は……?
ルガジーン ルガジーン。……皇国軍の兵士です。

ルガジーンの大切なもの、このリボンだったのね。

ビヤーダ ……それから、再び戦場に戻られたルガジーンさまは、散り散りになっていた他隊の兵士までまとめあげられ、獅子奮迅のご活躍……ついに、トロール傭兵団とマムージャ蕃国軍を撃退し、見事、皇都を護られたのだ。

ファリワリ その少女の言葉が、ルガジーンさまに本来以上の勇気を与えたのですね!
ビヤーダ そうかもしれぬ。

ファリワリ それで、それで、ルガジーンさまは?さぞかしすばらしい恩賞を授かったんでしょうね?
ビヤーダ それが、ルガジーンさまの行動は非常事態とはいえ、越権行為があったのは事実。軍では、それを問題視する向きがあってね。

あらぁ。

ファリワリ なんですって?まさか、あのミッサードとかいう元帥が、よからぬことを吹き込んだのでは?
ビヤーダ さぁ、それは分からぬ。ただ、下された謹慎命令に、ルガジーンさまは一言も反論せず、唯々諾々と従い、営舎で軟禁生活を送られることに……。

ファリワリ おお、なんたること!天道、是か?非か?
ビヤーダ しかし、ある日のこと。ルガジーンさまのもとに使者が来られ、皇宮への召喚命令が伝えられたのだ。

ファリワリ ほほおおう!ま、まさか、聖皇さまに謁見されたのでは?

ファリワリ そ、それで、それでルガジーンさまは!?
ビヤーダ ……あ、っと。いけない。もう、休憩時間が終わる。持ち場に戻らねば……。

ファリワリ ええええーーー??

ええー!

ビヤーダ 悪いが、続きはまた今度な。
ファリワリ ちょっと、ビヤーダさん!そんなあああ。これじゃあ、文字どおり、蛇の生殺しですよ~。

軍の規則は厳しいだろうし、仕方ないね。