淑女たちの饗宴 其の壱

ロマー・ミーゴ ……おや、レコ。それに、りぃも……
レコ・ハボッカ ああ、ロマー嬢。きみのところのお嬢さん、ちょっと借りていくよ。

ハジャ・ゾワン ああっ!なんやの!ふたりでどこ行っててん!

ミケ・アリョーチャ こらぁぁぁ!ミケ様を差し置いて、ナニしてたにぁ!

ひぃー。勘弁してぇ。

ロマー・ミーゴ ……ふぅん。ぶっ倒れてたらしいけど存外、元気そうじゃないか?
レコ・ハボッカ ああ、おかげさまでね。

そういえばさ、レコがいた塔の周りにカエルいっぱいいたんだよね。
あれ取って食べたら良かったのでは…?
ミスラだから生食すら可能よね?

トード族はダメでカッパーフロッグとかじゃないと食べられないのかしら。

ロマー・ミーゴ レコ……。りぃはウチの秘蔵っ子なんだ。仲良くするのはかまわないけど、あんまり変なこと吹きこむんじゃないよ。

レコ・ハボッカ あれ、信用ないなあ。でも、かしこまりました。

レコ・ハボッカ それでは、僕は御呼ばれしてるので、これにて……。

ん?ロマーも行くの?

レコ・ハボッカ おや?
ロマー・ミーゴ 元帥んとこだろ?私も呼ばれてるんだよ。

レコ・ハボッカ そりゃ、よかった。お叱りを受ける仲間は、多い方が良いかなぁ、と考えてたところさ。

…ん?

待って、
私も叱られる要員で連れて行かれてるの!?

ロベルアクベル 呼びたててすまない。

レコとロマーだけ呼ばれてたのかな。

ロベルアクベル ん、その者……
レコ・ハボッカ 一緒に来てもらったんだ。あれだけ、活躍したんだし、彼女にだって、聞く権利があると思ってね。

レコ・ハボッカ それに、たぶん、りぃは……僕らの仲間だ。

ロベルアクベル ……。

だいぶ意味深だな!

仲間ってどういう仲間!?

ロマー・ミーゴ ……なんだい、作戦会議にしちゃぁ師団長の姿が1人も見えないね。
ロベルアクベル 先の戦はあまりにも厳しかった……。負傷して動けぬ者以外はみな、作戦遂行中か新兵の調練で手いっぱいなのだ。

レコ・ハボッカ さもあらん……我が軍の兵力は、あまりにも少ない。ゾンパジッパ殿のお人形を勘定に入れてもね。
ロベルアクベル ……ああ。このままでは、我が軍はジリ貧だ。とはいえ、敵は待ってはくれぬ……

カーディアンが無かったらとっくにダメだったのかもしれないのか。

ロベルアクベル 入れ!

ん?

ミスラがいっぱい来た!?

ロベルアクベル オルジリアより来た猟豹義勇団のナホだ。ロマーのコブラ傭兵団と共に、此度の作戦に参加してもらう。

更に援軍が?
ガ・ナボ大王国はウィンダスが落ちたら闇の王に攻め込まれるかもしれないから続々と戦力送ってるのかな。ウィンダスに貸しを作れるし。

レコ・ハボッカ へぇ~、ピカピカの小火器を持ったお仲間とは、珍しいね。
ナホ・ゴワンボ Naho Gwanboh おお、ええ目しとるね。

本当だ。弓じゃなくて銃持ってる。

ナホ・ゴワンボ Naho ええじゃろ?アトルガン商人から買おた、最新式の火筒なんよ。
ロマー・ミーゴ ふぅん、やけに羽振りがいいねぇ……。

ロマー・ミーゴ またオルジリアに援兵を頼むなんて……。ウィンダスは大女王に、この借りを返す算段があるのかね?

ナホ・ゴワンボ Naho なんねぇ!あんたぁ、せこいねぇ。
Nzha Abaleenah 団長。そんな、怒りんさんなや。こんなん、ただの道案内じゃろ?

ロマー・ミーゴ ……道案内だぁ?なんだい。新入りにしちゃあずいぶんと、でかい口叩くじゃないか。

ナホ・ゴワンボ Naho あぁん?文句あるん?うちが相手しちゃるよ?

ガン飛ばしあっとる!!
なんでこんなに喧嘩ッ早いの!

レコ・ハボッカ さあさあ、自己紹介はそのくらいだ。みんな静かにね!ブリーフィングを始めるよ。

ヘッ!
ってしとる。

ロベルアクベル ……ロマー殿、ナホ殿。そなたらにはアラゴーニュ戦線に出撃してもらう。

ロベルアクベル 密偵がメリファト山地にて確認されていた敵大部隊の最新の動向を報せてきた。やつらは、アラゴーニュに散っていた遊軍を糾合しつつ、ゆっくりソロムグ原野に向けて西進中らしい。

レコ・ハボッカ ……ガルレージュ要塞の重要性が、敵にばれたのかな?それとも、闇の王によってついに、ジュノ攻囲作戦が発令されたか……。
ロベルアクベル おそらくは後者……。敵部隊の主力は、クゥダフの装甲兵と巨人の投石兵で編制されているようだからな。

ジュノ攻防戦が近いのか。

ロマー・ミーゴ ジュノの近辺がどんどんキナ臭くなってきてるね……。
ロベルアクベル うむ。連合軍本部も焦っている。我が軍の持ち場である、ジュノ東壁の守備兵を倍増させよ、と矢の催促だ。

レコ・ハボッカ 気楽なもんだよ。僕らは、聖都防衛すら危ういというのにね。
ロマー・ミーゴ どうせ、本部の連中はぶ厚い安全な壁の内側で、ふかふかのケットにくるまって、作戦を考えてるんだろ。

ロベルアクベル そう、愚痴るな。その本部から送られた軍資金でこうして猟豹義勇団にも来てもらえたのだ。

ナホ・ゴワンボ Naho うちらは義勇軍なんよ、義勇軍!

ロマー・ミーゴ で、私らコブラは、こいつらをジュノの東壁に、送り届けりゃいいわけ?
ロベルアクベル 残念ながら、違う。レコ!

レコ・ハボッカ みんなには……って、僕も行くんだけど、本当の増援防衛隊を送り届けるため、陽動をお願いできるかな?
ロマー・ミーゴ なるほどね。私らは囮かい?ま、たしかに派手にチャンバラやるなら、タルどもより、ウチの仕事だけどさ。

ロベルアクベル よいか。敵の注意を引けば、それでよい。深追いはするな。魔法も使うな。

魔法も?

ロマー・ミーゴ フン。私らがへぼい魔法を使えば、ウィンダスの正規軍じゃないと、ばれちまうからだろ?

なるほど。

ロベルアクベル さよう。指揮はレコに執ってもらう。異存はないな?
ロマー・ミーゴ ……了解。
ナホ・ゴワンボ Naho たいぎぃねぇ。まぁ、ええよ。うちらはうちらのやり方でやらしてもらうけ。

ロマー・ミーゴ ああ?聞き捨てならないね。こっちの身まで危険にさらす気かい?

また始まった!
輩かよ!!

レコ・ハボッカ まあまあ。構わないよ。作戦の大要さえ、おさえてもらえばね。僕も、指揮を気に入ってもらえるよう、努力しよう。

ナホ・ゴワンボ Naho 兄ちゃん。あんた、話がわかる男じゃね。

ロベルアクベル 層の少ない東壁は城塞都市ジュノの構造的弱点のひとつだ。敵も戦力を集中させてこよう。そなたらの陽動の成否は、ジュノの防衛力に直結するのだ。期待しているぞ。

レコ・ハボッカ ……はい。では、みんな。各隊バラバラに出陣しソロムグ原野で、合流するとしよう。あ、それまでは派手な戦闘はできるだけ控えるように。その方が、敵にインパクトを与えられるからね。

ナホ・ゴワンボ Naho あんたぁ、細いねぇ。そんな腕で、ほんまに剣ふれるん?

ロマー・ミーゴ 余計なお世話だよ。それとも、ここで確かめたいかい?

Nzha Abaleenah おー、こわ。まぁ、せめて、足ひっぱらんといてね。

ロマー・ミーゴ ……。

クゥダフの装甲兵と巨人の投石兵が主力って言ってたけど、ガ・ナボ大王国から来たばかりでクゥダフと巨人見たことあるのかな。未知の敵かもだけど大丈夫かしら。

ロベルアクベル ……あの女が例の?
レコ・ハボッカ うん、おそらく。だって、僕にサイレドンの黒焼きなんか持ってきたし……。

ロベルアクベル それは……興味深い。

サイレドンの黒焼き?

まさかあれに意味があるとは。
何をあげたかで会話変わったのかな。

ロベルアクベル ところで此度の件……。

レコ・ハボッカ ああ、わかってる。優秀な戦士を育成しないとね。
ロベルアクベル しかと頼んだぞ。来たるべき決戦には、優秀な兵が不可欠だ……。

レコ・ハボッカ で、我が祖国ガ・ナボからはなんと?
ロベルアクベル ふん、これ以上兵は出せぬ。いざとなれば聖都を捨てよ、と言ってきたぞ。

義勇兵って言ってたけど、国は承知して出したのか。

ロベルアクベル さすれば大都ヨーに神子さま……玉体を受け入れる用意がある、と……。

レコ・ハボッカ おやおや。麗しの女王はお優しいことで。

ロベルアクベル ふん、食えぬ女よ。敗色濃厚となれば我らが玉体の御首が、彼の国の担保となることも織り込み済みだろう。

あぁー、なるほど。
ウィンダスが負けて盾が無くなりガ・ナボ大王国まで攻め込まれても、神子さまを獣人軍に差し出して見逃してもらう算段なのか。

ロベルアクベル 愈々もって、我らは進退極まれりというわけだ……。