……おや、レコ。それに、りぃも……
ああ、ロマー嬢。きみのところのお嬢さん、ちょっと借りていくよ。
ああっ!なんやの!ふたりでどこ行っててん!
こらぁぁぁ!ミケ様を差し置いて、ナニしてたにぁ!
ひぃー。勘弁してぇ。
……ふぅん。ぶっ倒れてたらしいけど存外、元気そうじゃないか?
ああ、おかげさまでね。
そういえばさ、レコがいた塔の周りにカエルいっぱいいたんだよね。
あれ取って食べたら良かったのでは…?
ミスラだから生食すら可能よね?
トード族はダメでカッパーフロッグとかじゃないと食べられないのかしら。
レコ……。りぃはウチの秘蔵っ子なんだ。仲良くするのはかまわないけど、あんまり変なこと吹きこむんじゃないよ。
あれ、信用ないなあ。でも、かしこまりました。
それでは、僕は御呼ばれしてるので、これにて……。
ん?ロマーも行くの?
おや?
元帥んとこだろ?私も呼ばれてるんだよ。
そりゃ、よかった。お叱りを受ける仲間は、多い方が良いかなぁ、と考えてたところさ。
…ん?
待って、
私も叱られる要員で連れて行かれてるの!?
呼びたててすまない。
レコとロマーだけ呼ばれてたのかな。
ん、その者……
一緒に来てもらったんだ。あれだけ、活躍したんだし、彼女にだって、聞く権利があると思ってね。
それに、たぶん、りぃは……僕らの仲間だ。
……。
だいぶ意味深だな!
仲間ってどういう仲間!?
……なんだい、作戦会議にしちゃぁ師団長の姿が1人も見えないね。
先の戦はあまりにも厳しかった……。負傷して動けぬ者以外はみな、作戦遂行中か新兵の調練で手いっぱいなのだ。
さもあらん……我が軍の兵力は、あまりにも少ない。ゾンパジッパ殿のお人形を勘定に入れてもね。
……ああ。このままでは、我が軍はジリ貧だ。とはいえ、敵は待ってはくれぬ……
カーディアンが無かったらとっくにダメだったのかもしれないのか。
入れ!
ん?
ミスラがいっぱい来た!?
オルジリアより来た猟豹義勇団のナホだ。ロマーのコブラ傭兵団と共に、此度の作戦に参加してもらう。
更に援軍が?
ガ・ナボ大王国はウィンダスが落ちたら闇の王に攻め込まれるかもしれないから続々と戦力送ってるのかな。ウィンダスに貸しを作れるし。
へぇ~、ピカピカの小火器を持ったお仲間とは、珍しいね。
おお、ええ目しとるね。
本当だ。弓じゃなくて銃持ってる。
ええじゃろ?アトルガン商人から買おた、最新式の火筒なんよ。
ふぅん、やけに羽振りがいいねぇ……。
またオルジリアに援兵を頼むなんて……。ウィンダスは大女王に、この借りを返す算段があるのかね?
なんねぇ!あんたぁ、せこいねぇ。
団長。そんな、怒りんさんなや。こんなん、ただの道案内じゃろ?
……道案内だぁ?なんだい。新入りにしちゃあずいぶんと、でかい口叩くじゃないか。
あぁん?文句あるん?うちが相手しちゃるよ?
ガン飛ばしあっとる!!
なんでこんなに喧嘩ッ早いの!
さあさあ、自己紹介はそのくらいだ。みんな静かにね!ブリーフィングを始めるよ。
ヘッ!
ってしとる。
……ロマー殿、ナホ殿。そなたらにはアラゴーニュ戦線に出撃してもらう。
密偵がメリファト山地にて確認されていた敵大部隊の最新の動向を報せてきた。やつらは、アラゴーニュに散っていた遊軍を糾合しつつ、ゆっくりソロムグ原野に向けて西進中らしい。
……ガルレージュ要塞の重要性が、敵にばれたのかな?それとも、闇の王によってついに、ジュノ攻囲作戦が発令されたか……。
おそらくは後者……。敵部隊の主力は、クゥダフの装甲兵と巨人の投石兵で編制されているようだからな。
ジュノ攻防戦が近いのか。
ジュノの近辺がどんどんキナ臭くなってきてるね……。
うむ。連合軍本部も焦っている。我が軍の持ち場である、ジュノ東壁の守備兵を倍増させよ、と矢の催促だ。
気楽なもんだよ。僕らは、聖都防衛すら危ういというのにね。
どうせ、本部の連中はぶ厚い安全な壁の内側で、ふかふかのケットにくるまって、作戦を考えてるんだろ。
そう、愚痴るな。その本部から送られた軍資金でこうして猟豹義勇団にも来てもらえたのだ。
うちらは義勇軍なんよ、義勇軍!
で、私らコブラは、こいつらをジュノの東壁に、送り届けりゃいいわけ?
残念ながら、違う。レコ!
みんなには……って、僕も行くんだけど、本当の増援防衛隊を送り届けるため、陽動をお願いできるかな?
なるほどね。私らは囮かい?ま、たしかに派手にチャンバラやるなら、タルどもより、ウチの仕事だけどさ。
よいか。敵の注意を引けば、それでよい。深追いはするな。魔法も使うな。
魔法も?
フン。私らがへぼい魔法を使えば、ウィンダスの正規軍じゃないと、ばれちまうからだろ?
なるほど。
さよう。指揮はレコに執ってもらう。異存はないな?
……了解。
たいぎぃねぇ。まぁ、ええよ。うちらはうちらのやり方でやらしてもらうけ。
ああ?聞き捨てならないね。こっちの身まで危険にさらす気かい?
また始まった!
輩かよ!!
まあまあ。構わないよ。作戦の大要さえ、おさえてもらえばね。僕も、指揮を気に入ってもらえるよう、努力しよう。
兄ちゃん。あんた、話がわかる男じゃね。
層の少ない東壁は城塞都市ジュノの構造的弱点のひとつだ。敵も戦力を集中させてこよう。そなたらの陽動の成否は、ジュノの防衛力に直結するのだ。期待しているぞ。
……はい。では、みんな。各隊バラバラに出陣しソロムグ原野で、合流するとしよう。あ、それまでは派手な戦闘はできるだけ控えるように。その方が、敵にインパクトを与えられるからね。
あんたぁ、細いねぇ。そんな腕で、ほんまに剣ふれるん?
余計なお世話だよ。それとも、ここで確かめたいかい?
おー、こわ。まぁ、せめて、足ひっぱらんといてね。
……。
クゥダフの装甲兵と巨人の投石兵が主力って言ってたけど、ガ・ナボ大王国から来たばかりでクゥダフと巨人見たことあるのかな。未知の敵かもだけど大丈夫かしら。
……あの女が例の?
うん、おそらく。だって、僕にサイレドンの黒焼きなんか持ってきたし……。
それは……興味深い。
サイレドンの黒焼き?
まさかあれに意味があるとは。
何をあげたかで会話変わったのかな。
ところで此度の件……。
ああ、わかってる。優秀な戦士を育成しないとね。
しかと頼んだぞ。来たるべき決戦には、優秀な兵が不可欠だ……。
で、我が祖国ガ・ナボからはなんと?
ふん、これ以上兵は出せぬ。いざとなれば聖都を捨てよ、と言ってきたぞ。
義勇兵って言ってたけど、国は承知して出したのか。
さすれば大都ヨーに神子さま……玉体を受け入れる用意がある、と……。
おやおや。麗しの女王はお優しいことで。
ふん、食えぬ女よ。敗色濃厚となれば我らが玉体の御首が、彼の国の担保となることも織り込み済みだろう。
あぁー、なるほど。
ウィンダスが負けて盾が無くなりガ・ナボ大王国まで攻め込まれても、神子さまを獣人軍に差し出して見逃してもらう算段なのか。
愈々もって、我らは進退極まれりというわけだ……。