ああ、君か。クララ隊長を探しているのか?だったら、いま接客中だ。……誰だと思う? カルスト閣下だよ。
へぇ?
誰も通すなと厳命されてはいるが……まあ、君なら問題ないだろう。
えっ。いいの!?
また怒られない?
……無茶です!
たった、おひとりでペイルイーグル議長とお会いになるなど……氏の疑惑、晴れてはいないのですよ?
だが、私はガルカ族の若者……君の部下に約束したのだ。ペイルイーグル氏から直接、話を聞くとね。
……わかりました。どうしても行かれる、とおっしゃるならせめて、この私に道中の護衛をお命じください。
ありがたいが、断る。彼と腹を割って話すために、わざわざ会見場所をゼーガムの丘にした意味がなくなってしまう。
閣下、この戦時下です。グスタベルグといえど、安全では……
百も承知だ。いいね。このことは、くれぐれも内密に頼むよ。
柔軟だけど頑固。
しかし、軍務大臣暗殺されてるのにこれは困るよねぇ。
関係ない私がこっそりついていくか?
君もな。
う、うん…。
先手を打たれてしまった…。
閣下……。
隊長!ファイブムーンズが憲兵に連行されたというのは本当ですか!?
……残念だが、本当だ。
彼の強情には、あきれたものです。捕縛されてから、一言も発していないんですよ。あれでは、自ら罪を認めるようなものですね。
くそっ!
フォルカー、どこに行く?
ファイブムーンズに会う。そして、ヤツをひっぱたいて、連れてくる。
えっ、なんで?
捕まってるのに無理やり連れてきたら話がこじれるだけでは。
やめたほうがいいです。収監してるのは、石頭で有名な憲兵隊。隊長にだけは、面会を許可すると言っていますが彼を帰す気なんて、連中には毛頭ありませんよ。
では、隊長が……
誣告罪は重罪。私は憲兵に、彼の銃士除名を迫られるだろう。ファイブムーンズが黙秘を続ける以上、私にできることは限られている……。
放っておけ、フォルカー。やつは殉教者か何かにでもなるつもりだ。死にたがるやつを無理に生かす必要はない。
ザイド、お前!!
……ん?待ってください。
隊長。ペイルイーグル氏の潔白を証明できれば少なくとも、もっとも重い誣告罪だけは免れるのでは?
……!
確かに、嘘を言ってないことになるものね。
りぃ殿。ひとつ、私の頼みを聞いていただきたい。フォルカーと一緒に、カルスト閣下のあとを追ってほしいのです。
隊長……?
わが共和国の法では当事者と接点のない、第三者の状況報告は重要な参考証言と定められている。
ほほう。
ゼーガムの丘で行われるカルスト閣下とペイルイーグル氏の会見……もし、氏が無実を証明し2人が手討ちとなるならば、第三者であるあなたが現場に立ち会うことで、ファイブムーンズを救えるカギとなるかもしれない……。
隊長!
お前もすぐに出発しろ、フォルカー。やはり、閣下だけで行かせたのは間違いだった。いざとなれば、命に代えても閣下をお守りしろ!
ハッ!
私もファイブムーンズに面会後、すぐに向かう。頼みましたよ、りぃ!
うん。わかった。
すまない。ペイルイーグル君。すっかり、待たせてしまったようだね。
いや、先日ガルカの若者に教えられてね。一度、貴君とあって話をしてからでも遅くは……
な、何の真似だ!?
えっ!?
やめてください、議長!
……?
ペイルイーグル君!
トンベリ…!
カルスト大臣を暗殺しに来たのか!
!?
包丁が根本まで刺さって…!
ん?
いやここで抜かない方がいいのでは!?
大量出血しちゃうよ!!
カルスト閣下!ペイルイーグル議長!大丈夫ですか!?
私はなんともない。だが、ペイルイーグル君が刺されたようだ。
議長!
……心配するな。このくらい、なんともない……。
そんなわきゃ無いでしょうよ!
……か、カルスト閣下。いまは国内で争っている場合ではない。き、貴殿が望むなら、職を辞す用意はある。……だ、だから、いまは……
みなまで言うな。ペイルイーグル君。すまなかった。君の潔白は、いま身をもって証明されたぞ。
…………。
ああっ!
しっかりしたまえ。ペイルイーグル君!