騒乱の行方 其の壱

ファイブムーンズ ガルカ諸君、栄光の民よ……今また、ヒューム政権の悪しき因習が繰り返され、ある者が正義の名の下に裁かれんとしている……

集会? 

ファイブムーンズ 知っているなら私に教えてくれないだろうか?その無辜の同胞……否、英雄の名は!?

この人は…ファイブムーンズ。
ミスリル銃士隊の人じゃないですか。

 ペイルイーグルッ!!
 

ファイブムーンズ そのとおり!ウェライやグンパの如く、ペイルイーグル閣下に濡れ衣を着せてはならない!

 そうだ! そうだ!

ファイブムーンズ ありがとう、諸君!

ファイブムーンズ われわれは……われわれは、ついに立つべき時がきたのだ!

ファイブムーンズ かつて、たったひとりで強大なヒューム権力に戦いを挑んだかの英雄「黒鉄の旋風」のように!!

 うぉおおぉぉおぉおぉっ!!!

どうしてこんな扇動してるんだろう。

ディーター 貴様ら、何をしているか!?戒厳令により、許可なき集会は禁止されている!

ディーター リーダーは貴様だな?即刻、散会せよ!さもなくば……ん?

第二共和軍団の憲兵隊だ。

ディーター 貴様、見たことがあるぞ!たしか、ミスリル銃士の……こんなことをして、ただですむと思ってるのか!?

確かにそうだけど、剣抜くの早すぎでは。

ファイブムーンズ 見たまえ、諸君!これがヒュームのやり方だ。口では法だ、平等だ、と言いながらその手にはどうだ?いつも剣がにぎられている!

ファイブムーンズ 思い出してみたまえ。彼ら憲兵が、ウェライとグンパを収監しペイルイーグル閣下の秘書を拘束した、やり口を!!

Garlbrei くそっ、憲兵めっ!

Dunbaff 俺たちの議長まで犯罪者に仕立てようったって、そうはいかねぇぞ!

ディーター な、なんだ、お前たち!抵抗すれば、全員しょっ引くぞ!

無理そう。

??? : ……茶番はそこまでにしておけ。

ファイブムーンズ おお、ザイドか!遅かったな。待っていたぞ!

ファイブムーンズ !?

組み倒した。

ファイブムーンズ ザイド、なんの真似だ!

ニコラウス 残念です。ファイブムーンズ。あなたを煽動罪および誣告罪で逮捕しなくてはなりません。

誣告罪(ぶこくざい)って初めて聞いた。
他人に刑事または懲戒の処分を受けさせる目的で虚偽の事実を申告する罪だって。

ファイブムーンズ 誣告罪!?馬鹿な!無実のペイルイーグル閣下を告訴しようとしている者こそ、罪に問われるべきだ!なあ、そうだろう、ザイド?
ザイド …………。

ファイブムーンズ ザイド……?

2人がかりでやっと抑えられるんだろうなぁ。

ディーター やれやれ、困ったものだ。銃士諸君。こいつは君らの身内だろ?この件は、きっちり上に報告させてもらうからな。
ニコラウス ご随意に……。

ディーター 無論、こいつの身柄はわれわれが預からせてもらおう。

ファイブムーンズ ザイド!お主には、ガルカ族の誇りがないのか!

ザイド ……ほう、誇りだと?職務への誇りならあるが。

ファイブムーンズ 貴様ぁっ!!

デレク・カルスト Derek Karst おいおい工房内まで響いておるぞ。いったい、なんの騒ぎなのだ?
ディーター これは、カルスト閣下。お騒がせして申し訳ございません。この者が、ガルカ族の若者を煽動しておりまして。

現代の大統領のお父さんで、鉱務大臣のデレク・カルストだ。

 

デレク・カルスト Derek Karst ほう、それは穏やかではないな。

ファイブムーンズ …………。

デレク・カルスト Derek Karst うん?君には見覚えがあるぞ。たしか、ミスリル銃士隊のファイブ……
ファイブムーンズ ガラッグだ!

ファイブムーンズ 聞け、カルスト。もし貴様のかけた嫌疑で、無実の閣下が収監でもされてみろ。たとえ、俺が捕まっても、第二、第三の者が必ず貴様を……

ディーター 無礼な!

ファイブムーンズ くっ……!

殴っちゃった!

デレク・カルスト Derek Karst よさぬか!容疑者への暴行は禁止されておるはずだぞ。
ディーター ……御意。ですが、閣下。こやつらを甘やかすと、ろくなことになりませぬぞ。

デレク・カルスト Derek Karst ガラッグとやら。

おおっ?ガルカの名前で呼んだ。

デレク・カルスト Derek Karst このデレク・カルスト、君に約束しよう。一度、ペイルイーグル氏と会見し、真実を己が目で確かめてみることをな。

おおおっ?
実は柔軟な人?

ファイブムーンズ …………。

ディーター よし、連れていけ!

ニコラウス あ、りぃさん。見苦しいところを見られてしまったようですね。
りぃ いやぁ、大変だのぅ。

ニコラウス 実は、ベルナー軍務大臣が暗殺された件で共和国防会議のペイルイーグル議長に嫌疑がかけられているんです。それで、われわれ銃士隊にも内々に調査命令が下ったんですが……

ニコラウス ファイブムーンズのやつ、ある日急に議長の無実を強固に主張し始めましてね。銃士隊本部から姿を消したと思ったら、この有様です。
ザイド ……ニコラウス、無駄口はよせ。

ザイド そんなことよりファイブムーンズの変説。なにか、心当たりはないのか?
ニコラウス ええ、それならすでに調べはついてます。彼の部屋に、最近流行りの本が置いてありましたよ。

本?

ザイド 本……だと?
ニコラウス 数年前、首府を騒がせた暗殺者の追跡ルポです。『黒鉄の旋風』というタイトルの。

実話って事よね。

ザイド …………。

数年前の話なら、ザイド犯人知ってたりするのかな。

ニコラウス どうも最近、その本の主人公……過激グループの犯人が、ガルカ族の若者に神格化されているみたいなんですよ。

あぁ、若者にありがちな…。

ザイド 殺人鬼を英雄扱いするとは困ったものだ。行くぞ。

ニコラウス では、りぃさん、ぼくもこれで。
りぃ うん。