りぃか。ウルミアとテンゼン殿なら先に長老のところへ行ったようだが……
りぃさん、お戻りになったのですね。
うん。
バハムートの言っていたこと、デスパシエール殿に説明したでござるが、どれほどのことが伝わり、どれほどまでを信じていただけたものか……。
人は恐ろしい事実ほど、受け入れがたきもの。バハムートたち真龍が、我ら人をすべて滅ぼすと宣言したなど、我輩にとっても悪夢であってほしいでござる。
私も信じられません。バハムートの言う契約……
「世界の終わりに来る者」が生まれ落ちた時、すべての人を滅ぼす……なぜ、そのように恐ろしいことをバハムートは望むのでしょう。バハムートは、人を憎んでいたというのでしょうか?
ウルミア殿、それについては霊獣バハムートの歌を聴いたときに霊獣フェニックスが教えてくれたでござる。
おっ、なになに?
遥か昔、この世界に生きていた古代の民は、5霊獣と戦ったことがあったのだと。特に、霊獣バハムートとは、楽園の扉をめぐって永く激しい戦いが繰り広げられたのだと……。
ジラート人だよね。
そして、その戦いの最中に人は「虚ろなる闇」を目覚めさせてしまったのでござる。
虚ろなる闇ができたのって1万年前だったんだ。
「虚ろなる闇」、それすなわち「男神プロマシアの意志」を……。
男神の、意志!?
ウルミア殿、「男神プロマシア」のことをご存知でござるのか?我輩は知らぬのでござる。「男神プロマシア」とはいったいどのような神なのでござるか?詳しく教えていただきたいでござる。
……それは……
テンゼン殿、それは、俺たちの口からは言えぬことだ。
なにゆえでござる?
なにゆえ?
ひんがしの方、それはだね。
タブナジアにおったんかい!
「男神プロマシア」。その名を口に出すことは禁じられているからだよ。
!?
そうだったの?
ちょこちょこ聞くからそんなこととはつゆ知らず。
男神プロマシアはな、女神アルタナと同じく原初の神。混沌の神とも呼ばれ、「楽園への扉」を開いた人間に、争いの呪いをかけたと言われてる。
教えてくれるんだ。
その呪いはとても強く、人はその呪いを忘れることで救われている。そのために、その名を声に出してはならぬとされているのだ。
混沌の神……。
だからこそ東の国では、その名すら伝わらなかった。その名を知らなければ、その存在を知ることもないからな。
確かにね。
その判断は正しい。ここヴァナ・ディールは歴史を刻みすぎ、知られざる事実がごまんとある。
ここ数百年の歴史は記録されてて、1万年前に起こったことも分かってきたけど、その間とかサッパリだしね。何が起こっていたのやら。
知ってはならぬ事実、知るべきでなかった事実、知らなければならない事実。我らはそれらの事実を細心の注意をもって扱わねばならない。そうせねば、知らぬうちに悲劇を生む。
悲劇でござるか?
たとえば、バハムートのことだ。我々は、バハムートが人を滅ぼすために現れたのだという事実を知っていた……。
!
だからこそ、その呼び声に導かれて真龍の一族が集結する前にバハムートを捕殺せんと軍を動かした。だが……
そういうつもりだったんだ。
ナグモラーダがタブナジアに飛ばされたのは予定外で、予定外にバハムートと対話ができる状況になったから…クリュー人の思惑があって軍が来る前に単独行動したのかなぁ。
おまえたちの浅はかなる好奇心で、すべては台なしになった。おまえたちは、あのような悲劇をもう一度引き起こすつもりかね?
ナグモラーダ様、このウルミアはただ、プリッシュなる不届き者を引き止めようとしただけでございます。
今回のことも、このテンゼンなる異邦人にたぶらかされたに違いありません。
……確かに、このたびのこと、我輩が頼んだからでござる。
この長老、他を売って孫だけ守ろうとしてやがる!
しかし我輩は、ジュノ大公代理エシャンタール殿から、「虚ろなる闇」の調査の許可をいただいているでござる!
だがテンゼン殿、我らは「虚ろなる闇」を阻止するという、同じ目的を持つ者同士ではなかったかな?
確固たる理由なく、先んじてバハムートに会いに行くこと、裏切り行為のなにものでもないと思うのだがいかがかな?
うむむ……。返す言葉もない。そういわれれば確かに礼儀に反した行為であったでござるな……。
わかっていただければ、それでいい。バハムートのことは我らにお任せいただきたい。民族による考えの相違から、水面下で動くこともあれ、我らの意志はすべて人々を救うところにある。
それでは、再びバハムートを討伐する準備を?バハムートはどこぞへ向かって飛び立ってしまったのでござるが?
もちろんだ。しかし、その指揮は残念ながら私の役目ではない。
エシャンタールの係なのかな。
私は、あの少年の目的を阻止する任務を担っている。
……ん?おまえ、あのアミュレットはどうした?
プリッシュに渡したよ。
なに?人に渡しただと!?あれは重大なものだ、軽々しく人に渡すなど……この愚か者め!!!
むっ。そんなん知らんし、私が貰ったんだからどうしようといいじゃんよ!
ナグモラーダさま、りぃさんのせいではありません。苦しむプリッシュを救うために私が頼み、この方が私の願いを聞き届けてくださったのです。
プリッシュ?そうか、プリッシュとはあの女か。この町にあるのならば問題はない。
ウルミアには優しい態度取るんだよな!
ばーか!ばーか!
りぃ、さっさとあれを取り戻してから、北方へ来い。
なんでよ。
4つ目のクリスタルはズヴァール城の地下にあり、その入口は北の遺跡ソ・ジヤに隠されている……。
何ィ!!
場所分かってるんじゃんよ!
エシャンタールは「私たちが知るのは、ラングモント峠を越えてなお北、雪の絶えぬ地方にあるということだけ。」って言ってたよね。
場所が分からないから30年前の北方調査隊の元を訪ねるとかいうことやってたのに。
ソ・ジヤはクリュー人が作った。だからナグモラーダは秘密を知ってた。
そして、ジラート人には教えていない。
ってことだよね。
ううむ。
でんれーい、でんれーい!
礼拝堂の兵士どもは撤収したでーす!
秘密の荷物もつみおわりましたー!
……え?秘密の……?
そういえばナグモラーダは礼拝堂に行ってるって誰だったかが言ってたな。
礼拝堂から取ってきた秘密の荷物?
…まさか、あの魔晶石の白い箱!?
いいか、ソ・ジヤの最西の塔だ。必ずアミュレットを取り戻してから来るのだぞ。私は現地で待っている。
さっさと逃げやがったこんにゃろー!!