天華崎に来たよ。
りぃさん？私を探していたのですか？
うん。大丈夫？
すいません、私、どうしていいのかわからなくて。そういうときは、ここで歌を歌うことにしているんです。
ほら、この風……。ここには、想いを運ぶ風が吹くんです。その風はこの大空に舞い上がり、海原を越えて、世界中に響き渡る……。
そしてそれを聴いた女神さまが、その声に、想いに、応えてくれるんです。
そうなの…？
昔、私が小さい頃、ここで女神さまにあるお願いをしたとき、女神さまは応えてくれました。
これ、ウルミア？
なーにやってんだ？
どうしよう、どうしようって、そんなに焦ってさ！
プリッシュだ。
ん？
ウルミアが小さいのに、プリッシュ今と変わらない姿！！
髪飾りが無いだけだ。
あんまりうるせぇから、おまえの心の声、たどってきちまったぜ！？
！？
心の声をたどってきた？
そんな能力持ってるの？
あーっと、なにも言わなくてもわかるぜ？
……えーっとなになに……？あれぇっ！？なんだよ、聖歌隊に入り損ねただけかよ？みんなの前に出たら、緊張して歌えなかったって？なぁんだよ、まったく。
……ま、大聖堂の聖歌隊っていったら、たしかにすげぇ綺麗な服着て、うめぇもん食えるからなぁ！
ウルミアの目的がそれとは思えない…！
どうしても入りたかったって気持ちもわかるけどよぉ、そんなもんだけで、世界の終わりだとか思うなよなぁ！？
……！？
いいか！？おまえはまだガキんちょだから知らねぇだろうが、世界なんてもんは、すげぇでっけぇもんなんだぜ！？ほら、見ろよ！
この右手の先に広がる世界……
この左手の先に広がる世界……
その上にもその下にも広がる世界……
こーんなたくさんの世界が、おまえの周りにはあるんだ！
わかるだろ！？ヴァナ・ディールの中の、タブナジア諸島！その中心タブナジアに住んでるおまえ……ウルミアの世界なんて、すっげぇちっぽけなのさ！
……でも、まぁ、確かに、おまえがタブナジアの聖歌隊で歌ってる世界は、終わっちまったかもしれねぇ。おまえの父さんや母さんが、おまえに望んだ世界は終わっちまったかもしれねぇなぁ。
来年また入隊試験があるとかじゃなくて、決まった年齢で1回だけ挑戦できるシステムなのかな。
そりゃあ落ち込むわ…。
……でもさ、おまえがヴァナ・ディールで歌ってる世界は終わっちまっていねぇ！
プリッシュめっちゃ良いこと言う！
わかるだろ！？ほら、歌ってみようぜ！その世界を作るために！！！
ウルミアは、プリッシュのおかげで歌い続けることができたのね。
??? : プリッシュ、また大聖堂を抜け出して……
ミルドリオン様！
この鎧の人がミルドリオン枢機卿！？
ということは、この時はタブナジア侯国が襲われる前ね。
タブナジアから天華崎に子どものウルミアがひとりで来れるくらい安全だったんだ。
じゃあなー！ウルミア！また、会おうぜ！
……彼女のおかげで、私の願いは叶い、タブナジアの聖歌隊に入ることができました。
入れたんだ！
凶悪システムじゃなかったっ。
そこで私は、あのときの彼女がタブナジア礼拝堂に永く繋がれていたという「忌むべき子」なのだと知りました。
永く繋がれ…？
いったい何年…。
忌むべきものより忌むべき力によって生まれた子なのだと。
詳しく教えてほしい！
でも……私が、彼女に助けられたのはあの時だけではありません。
あの大戦で取り残された私たち……。彼女の力がなければ、逃げ場のないあの町で私たちが生き延びることなどできたでしょうか？彼女の力は、私たちにとって奇跡の力だったのです。
来る敵来る敵なぎ倒して逃げ道作ったのかしら。
それとももっと違う力を？
けれども、あなたもご存知でしょう。私たちが本土にいた間に、ナグモラーダさんのお力添えで、ジュノより援助の申し出がなされたそうです。
タブナジアの皆さんの瞳は、とても明るく輝いていました。……まるで……プリッシュが忌むべき子と呼ばれていた、あの頃のように。
物資不足でタブナジアが滅ぶことを避けられたのは良かったけど…。
どうしてプリッシュを閉じ込める必要があるんだろう？
……ああ、女神さま、教えてください。あなたさまなら何が正しく、何が真実なのか、私たちに教えてくださるはず。私はどうすればいいのでしょう？プリッシュは本当に忌むべき子なのでしょうか？
神様って…本当に答えてくれるのかな。
私はプリッシュを救いたい。けれど、それは悪しきことなのでしょうか？許されることではないのでしょうか？
あれは……！？
空をすごい勢いでピンクの線が横切った！
霊獣バハムート……。霊獣と呼ばれるバハムートならば、私の問いに答えてくれる……？
バハムートが飛んだらあんな風になるのか。
りぃさん、私、バハムートのところへ行ってみます。もしもお願いできるならば、私にあなたのお力をお貸しください。帝龍の飛泉にて……。
うん。わかった。
バハムートなら忌むべき子のことも知ってるかな。