案の定敵が出てきたけど、近くに何もいないからありがたい。
あれ?
なんか増えて…。
いでっ!いででででで!!!
ぜえ。はあ。
あ、ああ、奇跡の塩を持ってきてくださったのですね。
しかし、よく見るとやはり似ている……。
どうしたのだ?何と似ていると……?
何かあったの?
実はですね……この奇跡の塩の情報を調べていて、あるガルカの少年に出会ったのです。
えぇ!?
少年があの増えるスライムを倒せるとは思えない。
奇跡の塩らしき物を手に握り、さまよっていたところを冒険者に発見されたと……。その少年は記憶を失っており、転生の旅からの帰りではないかと……。
なるほど、前世の持ち物を持って帰ってくるパターン。
あ、あの少年ですよ。
ま、まさか……。
どうした? グンパ……。
そ、そんなはずは……。転生の旅から帰ってくるにはもっと時間を要するはずだし、あんなに成長してるなんて……。
でも……あの姿は……200年前の姿と同じ……そう、一緒に遊んだ姿……
えっ…まさか!?
ウェライ!!
なんだと!?
ウェライ?今ボクのこと、そう呼んだの?なんか思わず振り向いちゃったけど……。悪い名前じゃないね。ちなみに、おにいちゃんの名前は?
グンパ……。
グンパ……。ふうん、変な名前。
おまえ……覚えて、ない……。
言ってる意味がわかんないよ。
語り部じゃないと記憶ないんだから、分かんないよね。
ボクね、冒険者さんたちのキャラバンにつれられて、ここに来たんだ。で、もうすぐ出発するんだ。なんかわくわくするよ。いいよね、同じ場所にずっといたりしないで、自由に旅するって。ボクもそんな風に生きたいって思うんだ。
転生した後ガルカの集落にたどり着く前に拾われるパターンもあるのね。
いい人達みたいで良かった。
じゃあね、おにいちゃん。呼んでもらった名前、気にいったよ。ワライ、だっけ?
ウェライ……。
そうそう、それそれ。なんかしっくりくるんだよね。
今まで名無しだったんかい。
じゃあ、そろそろ行くよ。おにいちゃん、また会えるといいね。
引き止めは…できないよなぁ。
おにいちゃんもそんな難しい顔しないで、楽しく笑ってた方がいいと思うよ。じゃあね!
グンパ……これはいったい……。
ばっかやろう……。人の気も知らないで勝手なことばかり言いやがって……。
でも、しょうがないよな。ボクが自分の記憶を封じ込めて、勝手気ままに生きてきたから、おまえが苦労したんだものな……。
本当に……ウェライ、なのか……?
わかんないよ、そんなこと……。
奇跡の塩の奇跡が、こんな形であらわれたのか、とか、予想できることはあるだろう……。逆に、こんなことはありえない。他人の空似だろう、ってことも考えられる……。
転生の旅に出たんだから転生することはおかしくないにしても、それにしてはタイミングが早いし、やたらと成長してるから謎なんだよね?
でも、もういいじゃないか。転生なんて、語り部にも残らない記憶だよ。それを追うなんて冒涜なのかもしれない。
難しく考えないで、残しておいてもいいんじゃないかな、そう、最後の幻想として……。
まさかのここで作品タイトル回収!!
グンパ……。
ウェライと名乗るガルカが1人また生を受けこれから新しい人生を歩む……。それだけで十分じゃないか、それだけで……。
また何度でも会えるだろうから、そのうち2人で冒険者とかになって世界中旅できるといいね。
よくやってくれた。もともとの目的はともかく、おかげで貴重な出会いがあった……。
よかったね。
奇跡の塩は後で大臣のところに届けておいてくれ。このミッションはまだ終わってない。グンパの狙いどおりならな……。
おお、ダンシングウルフから話は聞いておるぞ。持ってきたのだな。
どうぞ…。
これで私の健康も……いやいや、共和国民の食生活もだな……。
それは楽しみですな……。
な、なんだ、プレジデントにくっついてる若造か。ふん、何の用だ……?
是非その奇跡の塩を利用して共和国民の食生活の改善に努めていただきたいものです。
もしそうでない場合は……大臣の所有する商会の方に費用の請求書を送らせていただきますので……。
ん?どういうことだ?
このミッションにかけた予算と今後の研究開発費は国から大臣の商会に貸し出しただけです。
その成果によっては返済の必要はなくなりますが……当然無駄だった場合利子をつけて返済していただきます。
おおっ、やるなぁ。ルシウス。
ご存知ありませんでしたか?国が民間の研究開発にも援助しようと制度を……ああ、会議中は眠っていらっしゃいましたか。
言うなぁ!
貴様……私にそのような口を……。
査定の役人に圧力をかけても無駄ですよ。責任者は、私ですから。
今までも散々圧力かけてたんだろうな。
そうそう、健康のためには、トカゲの卵の食べ過ぎも注意した方が身のためですよ。
ぐ……。
コテンパンじゃないですか。
でもまだしばらくは大臣の座に居座るんだろうなぁ。
……と、言うことだ。しかし、グンパはどうしてこんな情報を……?まあいい。何はともあれ、よくやってくれた。これでミッションは完了だ。またよろしく頼むぞ……。
うん。
もうそろそろバストゥークミッションも終わりだなぁ。
それと、おそらくそのうちミッションで北の地に再び向かってもらうことになりそうな気配だ。何やら調査に行かせた冒険者が襲われたらしいのだ……。心の準備はしておいてくれ。
襲われた?
誰にだろう。