少女の傀儡 其の壱

inマムーク

リシュフィー !!

リシュフィー 静かに……。マムージャの話し声が……。
アフマウ ……リシュフィー。彼らの言葉が分かるの?

リシュフィー ええ、多少は……。

メネジン ……訳してみせよ。
リシュフィー 『……まちがいない。……それぞ……長きにわたり……我らの探していた……くだんのブツだ。』

いっぱいいる。
会議中?

ん?
ヤグードがいる。
ゲッショー?

ラトージャ Ratol Ja 『……そのガラクタが……我らを……脅かすものだ……と?』

バクージャ Bakool Ja『……ふむ。……到底……そのようには……見えぬが。』

モラージャ Molaal Ja 『シュ~……シュ~……。……そこが……アトルガン……ヤツらの……ねらいよ。ヤツらが……我らに用いてきた……薄汚い……罠……兵器……策略の数々……貴公らも……忘れたわけではあるまい?』

ガヒージャ Gaheel Ja 『……それにしても……だ。……こんな……ちっぽけなものの…………何を恐れる?』

アフマウ !!!

メネジン (……アヴゼン。)

ガヒージャ 『……分からぬ……分からぬなぁ?……いっそ……バラしてみるか?』

??? : 騎龍王殿。其れには及ぶまいぞ。すでに見当はついてござれば。
ガヒージャ 『……ぁあ?……おまえは分かる……と、そう言ったか?』

??? : 然様。
ラトージャ 『フン……』

ラトージャ 『……でまかせ……だな?我ら……を、愚弄するは……許さぬ。……余所者は……黙っていろ。』

グルージャジャ Gulool Ja Ja 『グルルゥルルル……。』
ラトージャ !!

グルージャジャ Gulool Ja Ja 『……待て。』

ビシージで来るやつだ。

グルージャジャ Gulool Ja Ja 『……その話、……我々は……興味あるぞ。……聞こうでは、ないか。』

モラージャ Molaal Ja 『……僭主様の……御意に。』

ラトージャ(サハギン)もすごくビビってたし、モラージャも震えてる。
グルージャジャはそんなに怖いのか。

グルージャジャ Gulool Ja Ja 『ゲッグッグッグッ…………貴公らが……100年話し合うより……有意義な話を……聞けるかもしれんなぁ?』
モラージャ Molaal Ja 『くっ……。』

グルージャジャ Gulool Ja Ja いにしえの、鱗の同胞、月照よ。して、その見当とは、いかなものぞ?
ゲッショー かたじけない。然らば。

ゲッショー 其は、ただの人形に非ず。あとるがんは前聖皇じゃるざあん自らが、手を加えた機関人形にござる。

グルージャジャ Gulool Ja Ja グルルゥルルルルルッ!ジャルザーンだ、と!?

前聖皇が作ってアフマウのお母さんにあげたのかな?

ゲッショー 如何にも。其は、じゃるざあん肝いりの世界初の機関人形なのでござる。

グルージャジャ Gulool Ja Ja 『……よもや……あの宿敵……ジャルザーンが……関わっていたとは我々には……捨ておけん……な?』
グルージャジャ Gulool Ja Ja 『我々には…………見過ごせない、ね。』

モラージャ Molaal Ja 『……で、そうだとしてなぜ、コレが……我らを……滅ぼすものなのだ……?……アトルガンの……人形ならば……今でもたくさん……我らは……壊してきたぞ?』
ゲッショー そこでござる……。

ゲッショー 拙者、皇宮周辺に張り込んでおったところあるおもしろい事実を掴み申した。
ラトージャ 『なんだ?』

ゲッショー がっさどと申す市井の職人がひんぱんに皇宮へ出入りしているのでござる。
グルージャジャ Gulool Ja Ja 『……ガッサド?どこかで……聞いた名だ、ね?』
グルージャジャ Gulool Ja Ja 『ああ。……聞いたこと、あるぞ。』

知ってるの?

ゲッショー 然様でござろう。機関人形の開発を主導した人形師でござれば……。

ガヒージャ 『ということは、これは……。』
ゲッショー その男が作ったものに相違ござるまい。

ゲッショー しかも、その男。昨今では、皇立文化財調査事業団なる面妖な団体の顧問錬金術師も務め……しきりに、あるざだある朝時代の遺跡を調べておる様子。

グルージャジャ Gulool Ja Ja 『……つまり、そやつは錬金術師であり……人形師……。』
グルージャジャ Gulool Ja Ja 『そして……歴史学者でもある、と……。』

多才すぎる。

ゲッショー 然様。さらに気になることがござる。およそ五十年前がこと……機関人形の開発が始められる前にも今と同様、皇国の学者どもによる遺跡の大規模な調査が行われた由。

ゲッショー 故に当時、機関人形にはあるざだある朝の古の技が用いられたと、巷で噂になったとか……。

50年前…。
前聖皇シャルザーンが子供の時にメネジンを作ったってことなのかな。

バクージャ Bakool Ja 『……そうだとしても、オートマトンは、すでにある。……今さら何を……遺跡に……学ぶのだ?』
モラージャ Molaal Ja

モラージャ Molaal Ja 『いや…………まさか……まさか!アトルガンめは……鉄……あの伝説の鉄巨人を…………復活させんと、もくろんでいると?』
ゲッショー 確証はござらぬが……。

鉄巨人?
アレキサンダーのことかな。

モラージャ Molaal Ja 『なんということだ!……鉄巨人……。エラジアを……炎に包んだ……機械。まさか……ヤツら……ヤツら……』

すごく震えてる。

モラージャ Molaal Ja 『……我らを、攻撃……根絶やしに……する……気……か?』

グルージャジャ Gulool Ja Ja 『モラージャ!!……うろたえるな。……客人の前で……見苦しい。』
グルージャジャ Gulool Ja Ja 『……貴様、それでも……一族の王、か?』

モラージャ Molaal Ja 『……されど、僭主様。恐れながら……これは…………まこと……ゆゆしき……事態。……我らが一族……否、マムージャ全体の……存亡に関わる……危機かと存じ……。』

ゲッショー 賢哲王殿、御安心めされよ。其がための同盟でござらぬか。今の皇国軍に、二正面作戦を展開する余裕はござらぬ。

ゲッショー 盟約が交わされし暁には、閣下ら西方の猛勢と我らが東方の武者が一斉に皇国に攻め入ることができ申す。さすれば連中に、そのような機械を復活させる余裕などなくなるは必定。

ゲッショーがアトルガンに来た目的は、皇国の内情を探って、蛮族と手を組んで、アトルガン皇国をやっつけるためだったのか。

ゲッショー 我らは、皇国を制した後鉄巨人とやらを打ち壊して禍根を断てばよいのでござる。

グルージャジャ Gulool Ja Ja 『ゲッグッグッグッ……盟約が……空手形に……ならなければ、な。』

ゲッショー この月照。天地神明に誓うて、保証いたしまする。もし、我が国が約定を違えし時は……。
モラージャ Molaal Ja 『……どうする?』

ゲッショー 拙者、我が帝の御前にて腹を切る所存……。

我が帝かぁ。
今まで濁されてきたけど、ゲッショーがひんがし出身ってここではっきりしたのね。

テンゼンは「内憂」の虚ろをどうにかするために中の国に行き、ゲッショーは「外患」のアトルガン皇国を何とかするためにアルザビに来たのか。

グルージャジャ Gulool Ja Ja 『グルルルゥッ!』
グルージャジャ Gulool Ja Ja 『……腹を切る?……東方流の……落とし前、か?』

グルージャジャ Gulool Ja Ja 『潔い。気に入った、ぞ!』

グルージャジャ Gulool Ja Ja !!

ゲッショー 僭主殿?……如何なされた?

グルージャジャ Gulool Ja Ja 『グルルゥルルル……臭う……臭うぞ。鱗なき者どもの……臭いだな。』

バレてしもた。

グルージャジャ Gulool Ja Ja 出て、こい。隠れる、場所など、ない、ぞ。
グルージャジャ Gulool Ja Ja ゲッグッグッグッ……。どの道、この廟から、ソナタらは逃げられないんだから、なぁ~!

さっきまで『』がついてたからリシュフィーが訳してくれてたと思うけど、カッコが取れてちょっとたどたどしい喋りに。
人間の言葉で喋ってくれてるのね。親切。

ん?
ゲッショーのセリフはカッコ付いてなかったから、マムージャ語と人間語ごちゃ混ぜで話してたってこと?器用な。

仕方ない。出ていこう。

ゲッショー !!

顔!!

どひゃ~~~ん!
って効果音鳴ったよ!?

ゲッショー りぃ殿……!?い、今の話……
りぃ 全部聞いちゃった。

ゲッショー せ、拙者は……

ゲッショー 拙者は、月照ではござらぬっ!御免!

えぇ?

あれ?
消えない。

焦ってる。

あ、逃げた。

うーん、これでゲッショーとは敵になっちゃうのかなぁ。