
inマムーク

!!

静かに……。マムージャの話し声が……。
……リシュフィー。彼らの言葉が分かるの?
ええ、多少は……。

……訳してみせよ。
『……まちがいない。……それぞ……長きにわたり……我らの探していた……くだんのブツだ。』

いっぱいいる。
会議中?

ん?
ヤグードがいる。
ゲッショー?

『……そのガラクタが……我らを……脅かすものだ……と?』

『……ふむ。……到底……そのようには……見えぬが。』

『シュ~……シュ~……。……そこが……アトルガン……ヤツらの……ねらいよ。ヤツらが……我らに用いてきた……薄汚い……罠……兵器……策略の数々……貴公らも……忘れたわけではあるまい?』

『……それにしても……だ。……こんな……ちっぽけなものの…………何を恐れる?』

!!!

(……アヴゼン。)

『……分からぬ……分からぬなぁ?……いっそ……バラしてみるか?』

??? : 騎龍王殿。其れには及ぶまいぞ。すでに見当はついてござれば。
『……ぁあ?……おまえは分かる……と、そう言ったか?』

??? : 然様。
『フン……』

『……でまかせ……だな?我ら……を、愚弄するは……許さぬ。……余所者は……黙っていろ。』
『グルルゥルルル……。』
!!

『……待て。』
ビシージで来るやつだ。
『……その話、……我々は……興味あるぞ。……聞こうでは、ないか。』

『……僭主様の……御意に。』
ラトージャ(サハギン)もすごくビビってたし、モラージャも震えてる。
グルージャジャはそんなに怖いのか。

『ゲッグッグッグッ…………貴公らが……100年話し合うより……有意義な話を……聞けるかもしれんなぁ?』
『くっ……。』

いにしえの、鱗の同胞、月照よ。して、その見当とは、いかなものぞ?
かたじけない。然らば。

其は、ただの人形に非ず。あとるがんは前聖皇じゃるざあん自らが、手を加えた機関人形にござる。

グルルゥルルルルルッ!ジャルザーンだ、と!?
前聖皇が作ってアフマウのお母さんにあげたのかな?

如何にも。其は、じゃるざあん肝いりの世界初の機関人形なのでござる。

『……よもや……あの宿敵……ジャルザーンが……関わっていたとは我々には……捨ておけん……な?』
『我々には…………見過ごせない、ね。』

『……で、そうだとしてなぜ、コレが……我らを……滅ぼすものなのだ……?……アトルガンの……人形ならば……今でもたくさん……我らは……壊してきたぞ?』
そこでござる……。

拙者、皇宮周辺に張り込んでおったところあるおもしろい事実を掴み申した。
『なんだ?』

がっさどと申す市井の職人がひんぱんに皇宮へ出入りしているのでござる。
『……ガッサド?どこかで……聞いた名だ、ね?』
『ああ。……聞いたこと、あるぞ。』
知ってるの?
然様でござろう。機関人形の開発を主導した人形師でござれば……。

『ということは、これは……。』
その男が作ったものに相違ござるまい。

しかも、その男。昨今では、皇立文化財調査事業団なる面妖な団体の顧問錬金術師も務め……しきりに、あるざだある朝時代の遺跡を調べておる様子。

『……つまり、そやつは錬金術師であり……人形師……。』
『そして……歴史学者でもある、と……。』
多才すぎる。

然様。さらに気になることがござる。およそ五十年前がこと……機関人形の開発が始められる前にも今と同様、皇国の学者どもによる遺跡の大規模な調査が行われた由。
故に当時、機関人形にはあるざだある朝の古の技が用いられたと、巷で噂になったとか……。
50年前…。
前聖皇シャルザーンが子供の時にメネジンを作ったってことなのかな。

『……そうだとしても、オートマトンは、すでにある。……今さら何を……遺跡に……学ぶのだ?』
!

『いや…………まさか……まさか!アトルガンめは……鉄……あの伝説の鉄巨人を…………復活させんと、もくろんでいると?』
確証はござらぬが……。
鉄巨人?
アレキサンダーのことかな。

『なんということだ!……鉄巨人……。エラジアを……炎に包んだ……機械。まさか……ヤツら……ヤツら……』
すごく震えてる。
『……我らを、攻撃……根絶やしに……する……気……か?』

『モラージャ!!……うろたえるな。……客人の前で……見苦しい。』
『……貴様、それでも……一族の王、か?』

『……されど、僭主様。恐れながら……これは…………まこと……ゆゆしき……事態。……我らが一族……否、マムージャ全体の……存亡に関わる……危機かと存じ……。』

賢哲王殿、御安心めされよ。其がための同盟でござらぬか。今の皇国軍に、二正面作戦を展開する余裕はござらぬ。
盟約が交わされし暁には、閣下ら西方の猛勢と我らが東方の武者が一斉に皇国に攻め入ることができ申す。さすれば連中に、そのような機械を復活させる余裕などなくなるは必定。
ゲッショーがアトルガンに来た目的は、皇国の内情を探って、蛮族と手を組んで、アトルガン皇国をやっつけるためだったのか。

我らは、皇国を制した後鉄巨人とやらを打ち壊して禍根を断てばよいのでござる。

『ゲッグッグッグッ……盟約が……空手形に……ならなければ、な。』

この月照。天地神明に誓うて、保証いたしまする。もし、我が国が約定を違えし時は……。
『……どうする?』
拙者、我が帝の御前にて腹を切る所存……。
我が帝かぁ。
今まで濁されてきたけど、ゲッショーがひんがし出身ってここではっきりしたのね。
テンゼンは「内憂」の虚ろをどうにかするために中の国に行き、ゲッショーは「外患」のアトルガン皇国を何とかするためにアルザビに来たのか。

『グルルルゥッ!』
『……腹を切る?……東方流の……落とし前、か?』

『潔い。気に入った、ぞ!』
!!
僭主殿?……如何なされた?

『グルルゥルルル……臭う……臭うぞ。鱗なき者どもの……臭いだな。』
バレてしもた。

出て、こい。隠れる、場所など、ない、ぞ。
ゲッグッグッグッ……。どの道、この廟から、ソナタらは逃げられないんだから、なぁ~!
さっきまで『』がついてたからリシュフィーが訳してくれてたと思うけど、カッコが取れてちょっとたどたどしい喋りに。
人間の言葉で喋ってくれてるのね。親切。
ん?
ゲッショーのセリフはカッコ付いてなかったから、マムージャ語と人間語ごちゃ混ぜで話してたってこと?器用な。

仕方ない。出ていこう。

!!
顔!!
どひゃ~~~ん!
って効果音鳴ったよ!?

りぃ殿……!?い、今の話……
全部聞いちゃった。
せ、拙者は……

拙者は、月照ではござらぬっ!御免!
えぇ?

あれ?
消えない。


焦ってる。

あ、逃げた。
うーん、これでゲッショーとは敵になっちゃうのかなぁ。