うう……、なにか用か……?ワシは今、無から有を生み出すために虚無の闇に身をゆだねていたというのに……。
コルモルの妄想は時空をも飛び越える。
まぁ、いい。ここに、おまえさんが来たのは……
……ま、まさか……闇からのお迎えじゃなかろうな!?
心当たりがありすぎるんだな?
……お迎えに来られる前に、ワシにはしなければならんことがある。なぜなら、ちょうど今、ワシはある研究を成し遂げるためには、まずはなにが必要か、考えついたところだったのだ。
確か、はるか昔に、「錬金術」なるものを考えた学者がいたはずだ。
はるか昔に錬金術?
この研究は、ワシが研究している「無」から「有」を生み出す研究に近い……
今ある錬金術ギルドとは別物なのかな。
ワシの記憶が確かなら、その学者の研究は、残念ながら失敗に終わった。しかし、現代に生きるこのワシが、その研究を再考すれば、問題解決の糸口が見えるやもしれん。
確かにそれはあるかも。
……というわけで、そこのおまえさんの目覚ましい活躍を期待しているぞ。
わ、わかったよ。
よし!では、「錬金術」の権威に会いにいけ。そして、その極意をたくみに聞き出すのだ。
え?その学者死んでるのでは?
なに?「錬金術」は、はるか昔の話ではないのかと?
ガハハ!学問に、今も昔もあるわけがない。この国には、失われた学問などあるわけないのだ。
おお…さすがウィンダス。
おそらく、物好きな博士が、今も密かに「錬金術」の研究を続けてるはずだ。
物好きな博士。
コルモルじゃないですか。
必ずさがしだして、くすぐりたおしてでも、その極意を聞き出すのだ。
まぁ、ウィンダスの博士はみんな変わってるから話聞きに行ってみよう。
「錬金術」などという古典的なもの、いまだ研究している学者がいるなら、その顔を見てみたいものです。
隣の家にいるよ…。
そういうことを言い出すのは、コルモル博士ですか?
あ、うん。そう。
あいも変わらず、思いつきで研究をしていますね。学生の時分から、彼はそういう人でした。そういえば、彼が学生のころ、「錬金術」について書いたと聞いたことが……。
コルモルが錬金術についての論文書いたの?
あの頃から成長が見られませんね。彼自身、すっかり忘れているのではありませんか?
自分で書いてるのに忘れるなんて…。
さすがコルモル。
オホホ!突然あがりこんできてなにを言い出すかと思えば「錬金術」ですって?オホホホ!ちゃんちゃらおかしいですわ。
そ、そんなに異端なんだ。
「錬金術」なんて子供だましを、この魔法王国で論じようとするなんて……
確かに錬金術でできることは、シャントット様なら魔法で全部やってしまいそう。
しかも数倍の威力にして。
学生の時分、魔法理論の勉強を、おこたったからに間違いありませんわ。わたくしが魔法学校の先生でしたら、そんな生徒は問答無用で落第ですわ、落第!
魔法学校の校長だった人が言ってるんです…。
「錬金術」ですか?そういえば、そういった怪しげな卒業論文を書いた生徒が過去におりまして……
コルモルだ…。
たしか、当時の校長先生が、その生徒に「もう1年、学校に残るように」と言い渡したことがあるのですわ。
コルモル、落第したの!?
え?その卒業論文を読みたいとおっしゃるんですか?
それくらいしか錬金術に関する手がかりがなくて。
それなら、探せないこともないですが……。寄宿舎にいるカツンナッツンに尋ねてみてください。ちなみに寄宿舎とは、ここから北にある、大きく長い建物ですよ。