落ち着け……、冷静になるんだ……。これは千載一遇のチャンスなんだ、僕の門番人生の中で生まれて初めての。ここで手柄を立てればきっと……
こんちゃ
ハッ!自分の任務はこの市門を守り抜くことです!けっして賊を捕まえて手柄を立てようなど、絶対に、いや絶対に思ってはおりませぬ!
……。……なんだ冒険者か。まったく、ビックリさせないでよ。
なんでビックリしてんのよ。
実はこれ、5年前に受けてたクエストで。
なので画像も装備も5年前のものになっております。
当時進めても全く意味が分からなさそうな気がして、温めておりました。
先日、宝物庫に盗賊が入ってね。大切な王錫が奪われてしまったんだ。
えぇ!?
またまた宝物庫に泥棒が入ったの??
本当に警備緩すぎだって…。
ん、もしかして君が!?
そんなわけない!!
手配書で見た顔とは違うみたいだね。ごめん、ごめん。神殿騎士団がサンドリア中を探し回ってるけど、どうにもその手がかりが掴めなくてさ。
似顔絵が出てるのに見つからないって、よそ者?
王錫って知らない?王が持たれる杖のことだよ。戴冠式のときに教皇から授かるという。僕も手柄を立てて出世したいなぁ。
おい、新しい情報が入った!旅の商人がラテーヌ高原で不審者を目撃したとのことだ!もしかしたら先日の盗賊かもしれない。
ほ、本当ですか!?
私の名は神殿騎士エルムマーグ。一足先にラテーヌ高原へ向かい、救助訓練中の神殿騎士団と合流するつもりだ。
救助訓練中の…あぁ、あの裂け目に何人か立ってるあそこね。
しかし、自力で城に侵入するほどの賊が相手では、あの兵数では不安が残る。王立騎士団に連絡して、応援をよこしてくれ!
しかし、王立騎士は辺境に散らばっており、近郷の騎士でも馳せ参じるにはかなりの時が必要かと!
くそ、それでは逃げられてしまう……。
自分が!自分が行きます!危険なのは分かります。でも誰かが……
そうだ!冒険者殿!どうか力を貸してくれないか!盗賊を捕まえたら、報酬を払おう!
え、いや自分が……
お願いだ、冒険者殿!国宝を盗賊から取り返すために!
う、うん、いいけど…。
どうしてこの人をガン無視してるの!?
おお、やってくれるのか!では、私と共にラテーヌ高原へ向かおう!早く部下と合流しなければ。
あの、自分もラテーヌ高原に……
お前はこの場所で待機。他の騎士が戻り次第、ラテーヌ高原へ急行するよう伝えてくれ。
……はい。
冒険者殿、一足先に向かっているぞ!
えぇ…?
まぁ、ここでこの人も参加するとなれば、「クエスト受注中の人のみこの場からこのNPCを消さないといけない」という面倒なことになるから参加しないのは仕方ないにしても、もうちょっと、なんか理由を…。
不憫すぎる。
君は?そうか、エルムマーグ殿が頼まれた冒険者ですか。
うん。
おお、来てくれたか。相手は凶悪凶暴な盗賊だ。君のような頼もしい協力者がいれば心強い。
それなりに偉い人なのかなぁ。
奴の様子はどうだ?
は!オルデール鍾乳洞で休憩しているようです!自分は捕縛するチャンスだと思います!
いや、それは罠だ。きっと我々を誘っているのだろう。鍾乳洞の奥には仲間共が隠れているハズだ。
なるほど……。
ヤツを見くびるな。相当頭がキレるはずだ。匂いで分かる。たぶん数々の修羅場を潜り抜けた大悪党、世界規模で暗躍する盗賊かもしれん。
まさかアタルフォーネ…?
あっ!?
誰かオルデール鍾乳洞から出てきた…!
さきほどの光は何だったのだ……?
名前が違う。
世界規模で暗躍する盗賊じゃないやん!!
……いかん!他事を考えてる場合ではない。一刻も早く王都へ向かわねば。この任務にすべてがかかっておるからな。
……なんだコイツは?
はっ!こいつが不審者です!
不審者の確認もせずに、「ヤツは相当頭がキレるはずだ」とか言ってたの!?
大丈夫なのかこの髭の人!!
!!神殿騎士か!?しまった、ぬかったか!
……!?見たところ騎士のようだが、どこか違うような……。おいっ、お前、名を名乗れ!
お前らに名乗る名などない!
ん?手配書の顔と違うぞ。どういうことだ!?
も、申し訳ございません!挙動不審な男だったため、伝令を……
チッ、無駄足だったか。どうりでおかしいと思った。
どうやら彼らは先に行ってしまったようだな……。まったく世話が焼ける。
まぁ、髭の人的には無駄足だろうけど、不審者がいるから伝令を出したのは間違いではないよね。
そうか!貴公たちは神殿騎士に扮した案内人だな?嵐が来たため、侯爵が我々の迎えに寄越したのだな?
こいつ、何を言っている?おい、お前っ!こんな所で何をしていた?
私か?王錫を城に届けるところだったのだ。お前たちも聞いているはずだろう。さあ、早く王都に連れていってくれ。
王錫だと?
持ってんの?
お前、それを持っているのか?ならば早く私に渡すんだ。
馬鹿を言うでない。私の任務は王弟フェレナン公爵に王錫を渡すこと。どんな理由があれ他の者に渡すことなどできぬ。
王弟フェレナン公爵?
デスティン国王に弟いたっけ?
んん、ないぞ!?王錫がなくなっている!
ええ?
……こいつを拘束しろ。城まで連行する。
あれ?
そもそも、王錫泥棒の似顔絵と違う人なのに、王錫持ってたの?
な、何をする貴様ら!私はルジーグ国王の使いだぞ!丁重に扱わなければ後で泣きを見るぞ!
ルジーグ国王??
どこの国の人?
だから、丁重に扱えと言っておる!
あの男……。何か重大な手がかりを持っているに違いない。
確かに超不審者。
冒険者殿、申し訳ない、せっかく来てもらったのだが見ての通りだ。あとはこちらでやる。
完全に私の管轄外だわ。
そうだ、さきほどの門番に伝えてきてくれないか?もう他の騎士の応援は必要ないと。よろしく頼むぞ。
うん。わかった。