今回もピエージェ王子の部屋の前から…。
何の話だ!?俺はどこも悪くなどないぞ!
ん?トリオン王子がいるの?
おぉぅ。
いらぬ心配をするヒマがあったら、獣人どもを蹴散らす作戦でも考えることだな!
兄上!
今日も大きな声。
ん?君は…?
あ、どうも。
ナルシェラルに言われて催促にでも来たか?
…君は、なぜナルシェラルがあんなにあわてているか知っているか?
うーん。
とにかくピエージェ王子の手柄を増やしたい!とかじゃなくて?
20年前のあの日、連合軍はタブナジア侯国を、エサとして差し出したのだ。侯国に諸国の首脳がひそかに集うと言うニセ情報を流したのだよ。
え!?
獣人どもの大軍勢に襲わせておいて、その間に連合の精鋭部隊がヤツらの居城に…ズヴァール城に討って出たのだ。
ズヴァール城の守りが手薄になったから、闇の王の間まで攻め込めた。
オープニングムービーのまさにあの時、闇の王が討たれた。ってことか。
なんてこったい。
結果、なんとか闇の王を討つことに成功したが、タブナジア侯国は獣人どもによって壊滅した。その名をもつ国は、もはやこの世に存在しない…。
当時のタブナジアの君主、アルテドール侯は、自分達が同胞から裏切られることになろうとは、思いもよらなかったろう。
囮にしたわけだから、タブナジアへは「そういうことになる」という連絡はしてなかった…のかな。
何の準備もできないまま、襲われた。と?
獣人の夜襲を受け、最後の最後まで勇敢に闘ったが、ついに城館も落とされ、警護の部隊と共に命からがら街から脱出した。しかし古墳の付近で、ついに追っ手につかまってしまった。
タブナジアで討ち死にしたわけじゃなかったんだ。
古墳まで逃げた?
タブナジア→ラテーヌ→ジャグナー→バタリア?
頑張ったな!
候は、最期まで、堂々と戦い抜いたそうだ…。
ん?バタリアで亡くなったんだよね。
それなのに、アルテドール侯と思われるおばけがラングモント峠を越えたって。
バタリア→ジャグナー→ラテーヌ→ロンフォール→ラングモント峠って移動してきたの!?
北の地に用事が?
いや、待って。
おばけならさ、バタリア北の段差越えられないの?
越えたら一気にボスディン氷河に行けるやんね!
連合軍もタブナジア防衛に兵を割かなかったわけではない。しかし、結果的にタブナジアは壊滅した…これはまぎれもない事実。
そこで一気に決着をつけたから、被害がタブナジア滅亡だけで済んだ…って一面もあるよね。
そのまま続いてたら、他の国も滅んでいたかもしれない。
そして、アルテドール侯は私の…。私は…どうすればいい?
おじいちゃん。だものね…。
魂の浄化的なのをするのが最善?そもそもアルテドール候は北に何しに行ってるんだろうね。
ピエージェ様!いらっしゃいますか!?
ナルシェラルか…入れ。
ピエージェ様!!先ほどトリオン様にお会いしましたが、すでにお元気ではありませぬか!
え、良かったじゃない。
そうか、おまえにはあの兄上が元気に見えるか…。
あれは元気なふりしてたの?
このままではいずれトリオン様のお耳にも届きましょう。大聖堂の影響力を強める機会を逸することになりますぞ!
救われぬ魂の浄化、そして贖罪を私の手で行え、と…。
何をおっしゃいますか!あくまでこれは亡者の脅威を振り払うための作戦!サンドリアの王子ともあろうお方が罪を贖うなどとうかつに口になさいますな!
えぇ…?
教皇といい、ピエージェ王子の周りにはこんな人しかいないの?
王子が不憫すぎる。
…おまえの考えはわかった。私にも考えがある。兄上に兵を出させることだけはすまい。
ええい、歯がゆい限りだ!このままでは、すべてが明るみに出る。そうすればサンドリア、いやヴァナ・ディール全体を巻き込んだ騒動になってしまうぞ…。
あんたちょっと落ち着きなよ…。
ナルシェラル様、新しい情報が…。
お?何だろう。
アルテドール侯の姿をしたダークストーカーが向かった先は、どうやらフェ・インであったとの報告が…
フェ・インに用事が?
確かにあそこも何かとおばけが集まってくる場所…。
彼の地は、タブナジア以外にもさまよえる魂の集う場所です…おそらくはそこで…。
亡者どもの挙兵…か!ふん、にわかには信じがたいことだが、ここまで来ると…な。
挙兵しにフェ・インまで?
本当にそうなら、アルテドール候の恨みはものすごいってことだけど…。
まだ多くの亡者の軍勢は、エルディーム古墳にとどまっています。また、その者たちが出る時に一様に所持している品が発見されました。まだ、入手に成功していないのですが、タブナジアの呼び鈴と呼ばれるものだそうです。
ふむ、奴らの合図に使うものかもしれんな。手にいれた上で作戦に使用しよう。
では…。
ああ、これ以上討伐隊の号令を待つわけにはいかない。先に資格を認めた冒険者たちを送り込もう。
エルディーム古墳にてタブナジアの呼び鈴を入手後、フェ・インに向かうように。
私かーい!
この作戦で功を立てた者にはさらなる褒美をとらせよう。おまえもがんばってくれ。
わかったよぉ。
少しでも王子の助けになればいいけれど。