そうだ!思い出したぞ!!
何を!?
あの黒鉄鍛冶の秘術の作者の名前!ゲーヴィッツ…どこかで聞いたことがあると思ったら、ザイドの鎧を作った職人の名だ。あの偏屈な男から、あの変わった装備のことを聞き出すのにえらく苦労したので覚えていたのだ。
へぇー!
ザイドの鎧作ったって、そんなに昔の人じゃなかったんだ。
ん?おぬしは、ザイドに会ったことがあるのか?変わった男だったろう?20年前の大戦ではわしやフォルカーと一緒に戦い、闇の王を倒した男だ。
相当変わってるよね。
もっともわしは、後方で大砲とか大型武器の整備ばかりだったんだがな。
工房長、そのザイドから手紙だ。渡すのを忘れていた。
な、なんだとう!!あの年中音信不通の男から手紙などと…。早く言わんか!
忘れていたといっても、半日前に届いたものだ。
ザイド連絡することあったんだ。
なになに…オルデール鍾乳洞にて不穏な動きあり。普段は現れぬイビルウェポンの出現を確認。その武器の姿は間違いなく、名匠ゲーヴィッツの作であった…とな!?
タイムリー過ぎる。
どういうことだ?奴のことだ、何か思い当たることがあって調べているのだろうが…。
おぬしも、もし奴に会うことがあったなら、調査に協力してもらえぬか?あいつが動いただけではこっちには何も伝わってこないのでな。
うん。わかった。
んで、オルデールに来てみたけれど。
どうすれば。
イビルウェポン…。それは、特殊なエネルギーを得て邪悪な意思を宿すに至った武器…。
ぎゃあ!?
新たな血を求めるために、念動能力を持つ地霊にとりつき、意のままに操っている。
絶対わざとに後ろから来てるでしょ!!
シドに手紙を出した時から、おまえが来るような気はしていたのだ。どうだ?おまえの刃は黒く輝いているか?
え、黒く?え…?さあ…?
早速だが、イビルウェポンに関する学説は概ね以上のとおりだ…。そして、その特殊なエネルギーとは、一般的には、クリスタルラインによるものとされる…。
ウェポンの本体は手足が付いてる方じゃなくて、上に浮いてる武器の方。ってことね。
そしてアークとかの白い建造物の周りや中ばかりにいるのは、クリスタルラインの力で動いているから。って理由だったのか。
ホラの岩に近いとは言え、オルデール鍾乳洞は、それほどクリスタルラインの影響が強い場所とはされていない。そこに、イビルウェポンが現れた…。
なるほど。異常事態ね。
そのイビルウェポンに襲われた冒険者が言うには、彼は合成の材料として、ダークインゴットを持ち歩いていたとのことだ。
あやまってそのダークインゴットを落とした時にそのイビルウェポンが現れたと…。そしてその武器には銘が刻まれていた。そう、私の鎧と同じ、ゲーヴィッツの銘が…。
だから気になって調べに来たの。
ゲーヴィッツは、30年以上も前に転生の旅に出たガルカの鍛冶職人だ。普通ならば、もうどこかで新しい記憶を紡いでいてもおかしくないはずだ。
30年前の人だったのか。
奴は何かを求めている。そしてこの地で、転生を迎えることなく何かを待っている…。
それはきっと私ではないのだろう。ずいぶんこの地を探索したが、奴の気配はすれど、姿は見えぬ。
30年前に転生の旅に出たってことは、もう亡くなってるのは確実なんだよね?
でも気配がするってことは、おばけとしてオルデールにいる。のかな。
ま た お ば け か。
奴は、新しい力を持った者に、何かを求めている…。それは、力と未来ある者の生き血か、それとも…。
それとも何よ!?
きっと、この地におまえが来たのも、奴の呼ぶ声に導かれたのだろう。それに呼応するかどうかは自らの刃に問うがいい…。
刃に?
ザイドの決め台詞は、業がふわっふわしてる私にはよく分からん!!