こーんにーちはー。
ちょうど良かった。りぃ、あんたを探していたんだ。
どうしたんだろう。
突然なんだけど、あんた測深儀って、どこかで聞いたことないかい?
ないよ。
そうか……。まぁ、無理もないさ。ありゃあ、ベテランの船乗りですらめったに知らない特殊なもんだから……。
何の道具なの?
ん、測深儀って何かって?そうだね。この辺の海域を詳細に再現する、いわば、海底測定器みたいなもんだよ。
ふむふむ。
この近海は、暗礁が多い上に磁場の乱れがすごくてね。コンパスだけを頼りにしてる船はあっというまに遭難しちゃうのさ。
つまり地形を表示できるソナーってことよね。
すごい技術なのでは?
もっとも、おかげで、コルセアにとっちゃ、ここが安全な場所でもあったんだけどね。ま、要するに、測深儀なしに、暗礁域を抜けるのは、不可能に近いってこと。
ここが安全ってことは、皇国軍の船には搭載されてないのかな。
ところで、なんでこんな話をするのかというと……
驚くなよ。いま、この近くで船を修理してるのさ。もちろん、私たち海猫党のね。
故障しとったんかい。
名前はブラック・クレイドル号。いい船だったんだけど、ちょっと前にいろいろとあってね。どてっ腹に大穴を開けられちまったのさ。
その損傷でよく沈まなかったね!?
で、そのとき、肝心の測深儀をなくしちまったってわけ。
たとえ、修理が終わったって、そいつがなきゃ、暗礁域を抜けることは至難の技。下手すりゃ、今度こそ私たちも海の藻屑になっちまう。と言っても、測深儀は、今じゃ骨董品。店や競売で手に入るような代物じゃない。
作る技術ももはや無いのかしら。
あぁあ、昔のイフラマドの船なら、みんな搭載していたんだけどねぇ……。今じゃ、ぜんぶ海の底だよ……。
潜水士…はいないのかな。酸素ボンベ無さそうだし。
魔法の応用で空気の膜を頭に作るとか、ウィンダスならできそうだけどなぁ。
あ、サハギンと取引して取ってきてもらえばいいのでは。
…アトルガンにサハギンいないから知らないのか。
それでも、もしも、もしもだよ。見つけることができたなら、ナシュモで張り込みしてる党員に渡して。分かったかい?よろしく頼んだよ、りぃ。
うん。
釣りで取れるらしい。
疑問点を並べたらキリがないから、ひと言で済まさせていただきます。
どうして!!?
くふ。わたしの、じょほうもう♪ルンルンネッタワークちがう、じょほうもう!うみねこのクルーだけ、もってう!
海猫党員だったのか。
うみねこクルー!ズィーハおねいさんから、きいてう!「けぃそくぎ」♪みたぁい!みせてー?
はい、どうぞ。
ん。んんーーー??
ん?んんん??んんんんん……?
なんだ?
これ、なんたか、へんなのよ?この「けぃそくぎ」、においしなぁい。コチコチうごかなぁい!だめだめの「けぃそくぎ」に、なってう!
壊れてるってこと?
ほんとのほんとは、コチコチコチなのー。それてね、うみのそこの、やまとたにが、できうのー。だめだめの「けぃそくぎ」、ピカピカのとこて、「じゅうてん」!じゅうてんで、うごぉく!しってうー?
充填?何を?
くふ。わたしの、おススメとこ♪それは、じゅりん!「じゃじゃぁむじゅりん」!うみねこのクルーにだけ、おしえう!
ワジャーム樹林で充填?
あー!
Leypointで、充電ね?
えっ、また雷に打たれないといけないの?
嫌だ…。
じゅうてん、おわたらとりにいってみう、よいよ?きっと、うれしのー。
ん?
あそこで充電したら動くようになるってことは、測深儀ってオルドゥーム文明の遺物!?
ドキドキ…。
測深儀を、溝に埋め込んだ。
あ、何も起きなかった。よかったぁ。
~ 1分後 ~
測深儀が、なくなっている!
えっ、なんで!?
測深儀、それはまるで、海猫の眼から見た海の景色……。奴の口癖だったわねえ。
む?
お久しぶり、やっぱりまた会ったわね。お姉さん。
会って最初に測深儀の名前が出るのはおかしすぎる。
ここに置いてた測深儀どうしたの?
なぁに?どこへやったのかって?さぁ、なんのことだか私にはさっぱり……。
このやろ…。
あら、私を疑ってるの?ひどいわねぇ。このあいだ、あんなに親切にしてさしあげたのに。それにしても、測深儀を探してるなんてね……。どうやら海猫党も、今回は必死みたいじゃない?
……そういえば、クルタダにはよろしく伝えてくれた?
伝えたよ。
おかしいわねぇ。じゃあ、どうして私の前に姿を見せないのかしら……。もうちょっと荒っぽいやり方じゃないとお気に召さなかったかしらねぇ。
うちの新入りにちょっかい出さないでもらおうか。
……来たわね、クルタダ。真打ち登場といったところかしら?
りぃからお前の名を聞き、後をつけていた。まさかとは思ったが……。
イムティラ、もう俺たちの前に現れない約束だぞ。
ひょっとして、あのとき、殺しておけばよかったとでも?……ひどいわ。
よほどの因縁があるのね。
ねぇ、もう過去は水に流しましょう?私たち、昔馴染みじゃないの。私はほんとに、あんた達とまた仲良くしたいと思ってるのよ。
それに……ねぇ、クルタダ。あんた、測深儀が必要なんでしょ?なぜか、今、ぐうぜん、私の手に、測深儀がある。ほんとに偶然。不思議よねえ。
やっぱり!
ドロボー!!
そして、心優しい友人である私はこれを海猫党に、譲ってあげなくもない、と考えている。
私のじゃ!
返せ!!
……ただし、取り引きでね。
取り引きだと?
そうよ。
……条件を聞こうか。
いやぁねぇ。人前じゃ言えないわぁ。だって、恥ずかしいもの。わかるでしょう……?
これは、ろくでもない条件だな?
いいか、りぃ。戻ってズィーハ達に伝えてくれ。俺は「デート」でしばらく戻れないってな。
うふふ。悪いわね。
やだ。あの測深儀、私のだもの。
クルタダが酷い目にあいそうだってのも目に見えてるし。
くっ、また選択肢が出た。
はいって言うしかないのか。
いけ。船長命令だぞ。
お子様は、お家に帰ってモーグリとでも遊んでなさい、ってことよ。
こんのやろ…。
でも行くしかない…。
……さあ、これで満足か?おっと、お前らに言ってるんだぜ。
さっきから、軍人と不滅隊の野郎の獣くせぇ臭いがプンプンしてやがるんだ……。
あーもーやっぱり!
早くズィーハに伝えなくちゃ。