おかえりなさい、冒険者さん。…ああ、その種ですか、見せてくださいっ。
はい。どうぞ。
番号を見る限り、かなり昔の種ですね。記録を見ないとはっきりとはいえないけれど、戦争中になくなった1袋でしょうっ。
番号振って管理してるんだ!
徹底してる。
戦争中に収穫した種は、石の区が水没した時のゴタゴタで、結構、なくなってしまっているんですっ。
あらま。そうなの?
だからコルモルが盗んだのばれてなかったのね。
無くなった種、どこにいったんだろう。
まだそこらへんに沈んでたりとか、流れていったりとかかな。
なぬ!では、この種のせいで、星の木の怒りを買ったわけじゃなかったのか!?がびーん!
がびーん…だと…?
時代ッ。
冒険者さん、ご苦労さまだ。戦争中に何があったか、ある程度の話なら、コルモル博士から聞いてしまいましたよ。
まったく、しょうがない博士ですことね。わたくしたちがコルモル博士をひっぱって、チュミミに謝らせに来ましたことよ。
本当は許されることではないのですけれど、コルモル博士のことですから大目にみます…。ですから、他に原因がないか、皆様のお知恵を貸してください。
ではまた、考えてみよう。20年前に何か、原因となるべきことが起きなかったか…。
ふぅ~、そうねぇ…。
ん?今度はシャントット様?
(20年前といえば…わたくしは、魔道士団を率いて、はるか北の地で、闇の王の軍隊と激しい戦いを繰り広げてましたわね。)
(あれはズヴァール城でしたかしら?リンクシェルで連絡を取り合っていたにも関わらず、部隊が孤立してしまったことがありました…。)
シャントット院長!ウィンダス部隊用リンクシェルによると、我々の部隊だけ孤立してしまっているようです!
後続の部隊が、敵のワナにはまってしまったようです。負傷者が数多く出ています。
こちらのリンクシェルの情報ですと、サンドリア王立騎士団に、一時撤退命令が出ているようです~!
こ、これは、シャントット様が独断で乗っ取って私物化したという戦闘魔導団!!
ブラックドラゴンが門の前に立ちふさがっている模様です。赤魔道士の数人が立ち往生しているとの知らせが入っています。
こ、これは確か、死なないと脱げない呪いの鎧…!
参りましたわね。四面楚歌とは、このことですわ。
魔法で脱出したいところですけれど、わたくしたちがここで魔法で脱出すると、門のところにいる赤魔道士たちの命がないでしょうし…。
部下の心配してる!!
根性でなんとかしなさい。オホホ。
って大暴走するイメージだけど、そうではなかった…!
わたくしたちも、どうにかして敵の目をかいくぐって、ドラゴンの後ろから不意打ちしなくては!
しかし、問題は、この部屋から敵に囲まれることなく、門まで戻るにはどちらへ進めば良いかということ…!
ここ内郭だものね。
外郭を通って門まで…。
さぁ、やっとあなたの出番よ!魔法人形!どっちに行けばいいのかわたくしたちに、示してごらんなさい!
どっちもダメさ!この部屋は囲まれちまってるヨ!こんな小部屋に逃げ込んだらヤバイだロ!
よく喋るタイプのやつだ!
これだから、ダメダメ司令官についてくのはイヤだったんダヨ!反省シロ!
…ぶっ壊す!
魔法ー!!
シャントット院長、お、落ち着いてください!
シャントット院長、申し訳ありません、抑えてください!この魔法人形が、いちばん敵察知能力に長けているんです~!
そうダそうダ!オイラを壊すなんて、モッテのほかダ!
オイラが敵の位置を知らせなかったら、オマエらなんてヒトリも、ここマデ、たーどりつけなかーったダロ!
ひと言多い魔法人形だな!
…ぶっ殺す!
こら、魔法人形のくせになんてことを言うんだ!黙らんか!
静かにしないと、敵に見つかってしまいますよ!ここは敵のど真ん中なんですから!
フン、静かにしてもみつかるヨ!デーモンの部隊が、西の方からこっちにむかってきているサ!
おおっ、能力は確かなようだ。
いくら隠れてたってムダムダ!みんな見つかって、オイラ以外はチーン!…と、オダブツサ!
…。
コラー!なにスンダ!それでもオマエは人の子か!?
!?
何が!?
オホホ、そこで叫んでなさい。
動けないように縛り付けた?
さぁ、あのうるさいのが良いオトリになって敵を集めている間に、わたくしたちは門まで戻ることにいたしましょ。
オニ!アクマ!うらんでやるゾ!おまえらに不幸を!いや、ウィンダスに不幸よ、訪れタマエー!
呪いの言葉が!
(それがわたくしの聞いた、あのバカ人形の最後の罵声でしたわ…。)