そわそわ…。
どうしたの?
あ、ちょっとっ!だめですよ、今日も立ち入り禁止ですっ!ほら、早くしないと博士たちが…。
!!!
来てやったぞ、ワシのおかげで星の木は元気いっぱいか?
チュミミさん、お待たせしました。さぁ、星の木の元気な姿を見せていただきましょうか。
逃げられなかった!!
それがですね…このように、状況は、何も変わってはいないのですっ。
あら。
で、でも、博士さまのお力が足りなかったわけではないのですっ。…ただ、きっと…、こうなってしまった原因が、博士さまの考えとはちょっと違ったのではないかと思うのですっ。
まぁ、考えられる原因を一気に3つ潰せたと思えば…。
…。こうなったら、本気で考えるか。
え。
ウムウム、マジメに考えよう。
そうですわね、真剣に考えてみる価値はありますわね。
なぁんっ!今まで、どう考えてきてたんですかっ!
本気やなかったんかーい!
チュミミ、必死にフォローしてくれたのにっ。
まぁまぁ、チュミミさん。私たち学者というものは、問題の大きさをまずは難易度という数値で考えるのです。
ふむ。
そして、その難易度に見合った頭脳を使って、その問題を解く。無駄な労力を使わないために。
いいかな、お二方。私たちは今回、この問題を過小評価しすぎていた。この問題の難易度を上げて、私たちの頭脳のより多くの領域を使って、もう一度考えてみよう。
…んん? チョット待て。その理論、どこかで聞いたことがあるんだが誰の理論だったか…。
おろかねぇ、忘れました?魔法学校にいたころ、耳にタコができるくらい校長先生から聞かされたことですわよ。しかも一言一句同じですわ。
丸パクリかい!
…整理してみようじゃないか。まず、土も光も水も、昔から何も変えてはいないというのに、昨今、急におかしくなったというのがもっとも着目すべき点だ。
物事が変化するのに原因がないはずがない。何かが起こったのだ。第一に解明すべきは、それが「いつ」ということだ。
ウムム!わかったぞ!そのセリフは、カラハバルハのセリフだな!
一言一句同じですわ。もう少し、自分の言葉を入れて話せばまだ、わかりませんのに。
これも丸パクリかい!
…。
不安になってる。
痛いほどわかるぞ…。
それで、チュミミさん。この星の木は一体、いつごろから元気がなくなってしまったのです?
…あ、はいっ!20年前の戦争の後からだと思います。あの後からジワジワと今にいたると私たちは推測してますっ。
20年前…。
つまり満月の泉関連が原因かぁ。
ふうむ、20年前か。いろいろありすぎてわからんが…。2人とも、何かこれだという心当たりはないか?
…ウウム~。ウムムのム~。
(20年前といえば…ワシはジュノで、ある研究機関にいた。長引く戦争の影響…食糧難問題に取り組む研究機関だ。)
(あのとき、出会ったラススちゃん…。かわいい研究者であった。)
ん?コルモルの回想?
(ワシとラススちゃんは、よく、ジュノのル・ルデの庭での散歩を楽しんでいた…。)
…コルモルさん。ジュノの街の子供たちから話を聞いた?
今までみんなで力を合わせて守ってきたロランベリー耕地も、とうとうクロウラーたちに襲われて、荒らされてしまったそうよ…。
なんと。
そういえば、ロランベリーに釣られて出てくるクロウラーNMもいるし、クロウラーってロランベリーが好物なのかしら。
私たち研究者が、一刻も早く、手を打たなければ。子供たちが飢えに苦しむ姿だけは、見たくないわ。
頼もしい。
(ワシら各国の研究者は、いくつかの案を出し、問題解決に尽力していた。)
(しかし、状況は日々、悪化し、じりじりとワシらを追い詰めつつあった。)
食糧問題は良いアイデアが出てもすぐに解決するわけではないしね…。
(そして、ワシはとうとう故郷ウィンダスで採れる、星の実の栽培を思いついたのであった。)
星の実食べられるんだ!?
だめよ、星の木はウィンダスの人々の大切な信仰で、天の塔でしか育ててはいけない決まりになっているんでしょ?
なんだかウィンダスで暮らしたことがなさそうな言い回し。
ラススはジュノとか他の国出身なのかな。
いくら、ウィンダスの5院の院長のコルモルさんでも、星の木の種を他国へ持ち出したら、大変なことになるわ。
星の木って満月の泉近くじゃないと育たないものだと勝手に思ってたけど、別の場所でも植えたら育つのかな。
(星の木の種は、天の塔の管理下にある。いくら緊急時の下にあっても、その種を食用にせんと改良することが許されるはずはない。しかし、ワシはもう、ラススちゃんの悲しい顔を見たくはなかった。)
今のままだと食べられないから、品種改良するつもりだったんだ。なるほど。
(若くて血気盛んだったワシは、ラススちゃんのために星の木の種を、天の塔から盗み出した…。)
コルモルさん、コルモルさんのその気持ち、とっても嬉しいわ。でも、この種を使うのは待って。私のせいであなたの未来を閉ざすわけにはいかないの。
もしかして、星の木の種の窃盗って重罪で、ばれたら最悪闇牢とかなのでは!?
私、あなたのその気持ちに頼る前に、ひとつ自分でやってみなくちゃならないことがあると思うの。
…何もきかないで。この方法がだめなら、その種を植えるというあなたの考えを、一緒に試してみましょう。だから、数日の間だけ待ってちょうだい。
何をするつもりなんだろう?
(そして、ラススちゃんは戻ってこなかった…。)
え!?
(その直後、ウィンダスに獣人軍がせまったために、ワシは呼び戻され…しかし、ラススちゃんのことを忘れた日は、1日もなかったのであった…。)
え、本当に忘れてなかった?