頼まれたものを手に入れてきたよ。この本は、近東の鏡のことについて書いてあるらしいんだ。
さすがね!あなたたちって、期待通りに動いてくれるから、頼りになるわ。さっそく見せてもらえるかしら?
タイトルは、「鏡の伝承」っていうのね。本の著者は……、タリアセン、か。
ルト。どうやら鏡には、対になるもうひとつの鏡があるらしいんだ。
……そうね。知っているわ。
知ってるんだ?
……知っていたんだ。冥闇の鏡と天光の鏡というそうだよ。
ふふっ。驚いているわね。2つの鏡のうちの片方は、近東のアトルガン皇国にあったのだけど、この世から失われてしまったと伝えられているの。
この世から失われたって…木っ端みじんに壊れたのか、異世界に吹っ飛んだのか?
かつては厳重に小箱に保管されていて、鏡そのものを見ることができるのは、一部の人たちだけだったそうよ。
アトルガン皇国の鏡は、まばゆいくらいに美しい光を放つらしいの。
女優ミラー…?
光は小箱から洩れでていて、見ていると次第に心が静まったという話も聞いているわ。名前と特徴を照らし合わせると……、アトルガン皇国の失われた鏡こそが、天光の鏡のことなのではないかしら?
それっぽいねぇ。
もし、今でもどこかにあるのだとしたら、ぜひとも手に入れてみたいお宝よねぇ!
木っ端みじんになったわけじゃなくて、アトルガンから無くなって行方知れずだからこの世から失われたって言ってんのかな。
わたし、美しいものに心が動かされるの。光を放つというのがとても魅力的だと思うわ。
……それにしてもずいぶんと古めかしい本ねぇ。相当昔に書かれたもののようね。ほんと、よく見つけてきてくれたわ。さっそく読んでみるわね。
フルコース♪の賜物だよ。
大変だったんだから。
……近東で祀られていた小さな鏡は、昔、王が作らせた道具である。永い時を経てご神体として祀られるようになり、守り手たちによって護られながら……、冥闇の鏡とよばれるようになった。
近東と言ってるけど、あえてアトルガンとは言っていないということは、別の国?
薄暗い、ほのかな光を放つ、黒味を帯びた金属が使われており、それが、夜のはじまりを思わせる。
……なるほど。ということは、わたしが保管してる鏡が、冥闇の鏡ってことになるわね。金属の特徴が一致するわ。
だね。
えぇと、それから…………この金属は、われわれの知るどの金属とも結びつかない。
先人の研究者たちによれば、鏡の素材となっている金属は、金属光を放ちながらも……、常温で液体のように形を変える。しかしながら、液体とも異なり一定の形は保つのだという。
そんなことあるの。
かつて、鏡を作りあげたときに用いられたこの金属は、今日では失われてしまっており、鏡を作り出すことはもはや叶わないだろう。
!……なんですって……!!それでは、困るのよ……!
この本に書いてないなら、もうお手上げだのぅ。
その続きには、何か書いてないのかい?
……あるわね。だが、鏡をどのようにして作り出したのかについては知ることができたので、次に記しておこう……。
おお。
ひとつ。冥闇の鏡の素材となる金属を、用意すること。
壊れた鏡があるからこれはクリアかな。
ふたつ。鏡面の静けさを想起させるような泉に行くこと。澄んだ水を湛えている必要がある。
まぁ、どこかにあるでしょ。
みっつ。まじないを唱え、祈りを捧げること。まじないは鏡の守り手しか知らない……。以上のことがすべて揃って、はじめて鏡を作り出すことができるだろう。
詰んだ。
困るわ……!!ここまで分かっておきながら、そんなこと言われても……。いったい、どうしたらいいのかしら……。もう、どうしようもないのかしら……。
うーん…。
だいたい、鏡の守り手だなんて……。
待って、ルト。もしかして……。
あっ、ヤーガウミガの鏡が光ってる!
!!映っているのは……、パロメッタだ……。
パロメッタ…?
はっ!!
3年間古墳に放置してたあの子か…!!!
その件については本当に申し訳ありませんでした。
しかも、どうやら、飛空艇乗り場の近くにいるようだね。
なんですって!行方不明になってエルディーム古墳にいた子よね?……おどろいたわ。
さっそく捜しに行きましょう!手がかりは、あの子だけよ……!