ちょうどよかった!お願いしたいことができたの。もちろん、手を貸してくれるわね?りぃ。
え?う、うん。
ヤーガウミガと一緒に頼まれてほしいのよ。……来たみたいね。
いま、りぃにも話していたのだけど、ふたりには、ウィンダスまで行ってきてほしいの。
うん。構わないよ。そこに行って、何をすればいいんだい?
ふふ。そういってくれると、話が早くて助かるわ。
鏡についての文献を借りてきてほしいの。図書館には、とても古い研究書も保管されていると聞くわ。見つけてほしいのは、割れてしまった、あの鏡の修復方法について書かれたものよ。
あの鏡を直すつもりかい?あれは特別な力を持った鏡なんだろう?そんなことができるのかい?
それに、あんな恐ろしいものを直してどうするつもりだい?
……ふぅ。わかってないわねぇ。それから、そんな野暮なこと、言うものでないわ。
良からぬことを考えているのは確かなんだろうな。
せっかく手に入った近東のお宝よ。元どおりにしてこそ、お宝としての価値が高まるというものじゃない。
もちろん恐ろしいものだとは思うけれど。それは、お宝としての価値のひとつだ、って考えるわ。
そう……。気乗りはしないけど……わかったよ。
ヤーガウミガは人が良すぎるよ。
あの鏡は黒味を帯びためずらしい金属が使われているから、それを手がかりに探してもらえるかしら?どんなに些細なことでも知らせてほしいわ。頼んだわよ。
……ムムム。黒味を帯びた金属でできている鏡について書かれた本……?しかも、その修復方法を探していると……?
さすがに院長でもこの膨大な本を全部は知らないよね。
ムムム。ムムムムム。ムムムムムムム?……ム!
少し奥を覗いてきたんだけど、あんなに量があったんじゃ、どこから手をつけていいかわからないね……。
だよねぇ。
ム?ムムムムム!そうだ。そうだ、そうだ!
え、心当たりが!?
リトポポの探していた文献が、鏡に関するものだったよ。たしか、近東の鏡がどうとかこうとか……。
それに違いない。
……よいしょっと。ようやく、見つけたわ!幻の本「鏡の伝承」!
まさしくそれなタイトル。
ぱっと見、ただのおとぎ話のようだけど、ここに書いてあることは、事実かもしれない……。
と、あたしの勘がチリチリと働いているわ。研究生活20年のあたしの勘が!ふっふっふっ。
意外と年季が入ってた。
さて、と。探しものもひと段落ついたことだし、おいしいものでも食べにいこうかしらー?
美味しいもの食べるの大事。
最近、研究に没頭していて、適当なものばかり食べていたからな~。……ブレーツェルとか。喉につまるから、たいへんだったわ……。
……ん?何かご用なの?
えーっと、かくかくしかじかで。
えぇ!?やっぱり近東の鏡って本当にあるものなの!?あ、あたしの研究ってすごいのではないのかしら?どどどど、どうしよう!?
それでね…。
え?……。「鏡の伝承」を貸してほしいですって?
うん。
それはちょっと聞けないお話ね。だって、あたしだって今見つけたばかりなのよ。それをホイホイ貸すようなこと、できるわけないじゃない?
だよねぇ。
ぐうううううううう。
どっからどう聞いてもすごい腹の虫が鳴ったぞ!?
なっ……!
……今のは気にしないでちょうだい。ともかく、あたしはぜったいに「鏡の伝承」は渡さないわ。
ぐうううううううう。
…………。
ぐううううううううううう。
そうねぇ……、あのね、あたし……、院長さまに、贈りものがしたいかもしれないわ。
したいかもしれない??
でも、じぶんから渡すのは恥ずかしいの……。だって……。
ぐううううううううううう。
………………。
以前、院長さまが呟いていたわ。大好きなフルコースがあるとかないとか……。
本当に?
白パン、白身魚のシチュー、ウィンダス風サラダ、バイソンステーキ、それから、……雪山のロランベリーかな……。さらに仕上げに、サンドリアティーとかなんとか。
すごい量!!
それをね、ぜひ一度に食べてみたいって、言ってたわ。
あたし、今の研究で院長さまにはとてもお世話になってるから、院長さまの望みを叶えてあげたいの。でも、あたしに、そんな豪華なディナーは作れないから……。
本音と欲望が入り混じってきてないだろうか。
それを、すべて用意してくれるっていうなら、「鏡の伝承」を貸しても構わないわ……!
えっ、本当に?
でも、すべて完璧に揃えられたときだけよ。貸してあげるのは。院長さまには、ディナーはリトポポからだって、別に言わなくてもいいわ。院長さまへ、そっくり渡して、驚かせてあげてね!
うん。わかった。
りぃ、覚えきれたかい?
いや、無理。
白パン、白身魚のシチュー、ウィンダス風サラダ、バイソンステーキ、それから、雪山のロランベリーだよ……。仕上げは、サンドリアティーか……。忘れないように、メモしておくべきだね。
す、すごい。
ずいぶんと豪華な食事になりそうだね……。
食べきれるんだろうか。
あの院長のためを想ってとは、……思いにくいけどね。
絶対自分で食べたいよね。
まぁ、細かいことは気にしないでおこう。本を手に入れるためだしね。
さて、大量の料理、どうやって入手するか…。