??? : あぁぁぁーー!もぅ、ダメだ、ダメだ……。僕はなんて無能なんだ!!
……うわぁ、荒れてるなあ……くわばらくわばら……。……んんん?
……きみ、見かけない人だね。何か用なの?
特に用はない気がする…。
あの人どうしたの?
……ん?彼かい?彼は鼻の院の研究員、マジュナジュ君だよ。最近、研究がうまくいってないみたいなんだ。
……お?落ち着いてきたかな……?
今日ほど自分の無能を痛感したことはない……。完全に行きづまってしまったよ……。
まあ、学問に王道はないというじゃない。気長に頑張ろうよ。
うん、でも圧倒的に資料が足りないんだ……。このままじゃあ、何十年つづけても完成する気がしないよ……。
……たしかに、今は戦時下で資料も、実験の材料も手に入りにくいからね。
こんな時代じゃなければなぁ……。
つまり20年後に行ってみれば良いのですね。
~ 現代 ~
だあぁぁぁーー!!もうー、ダメだダメだダメだ!!
20年後も荒れとるー!!
今さら、こんなことがわかったって遅いんだ……!
どうして!?捜してた本なんじゃないの?やっと手に入ったんじゃない。
たしかにすばらしい本だ。薬の製造方法が克明に書いてある。これによると夜長病には、「火輪草」のエキスが絶大な効果を示すらしいんだ。でも……。「火輪草」は大戦終了後に、絶滅が確認されているんだよ……。
……!
鼻の院の山のような資料をあさったり、魔法図書館にいりびたったり、気の遠くなるような月日を費やして……やっと、東方に伝わる文献までたどりついて薬の作り方がわかったのに……!
……。
この本はもう、僕には必要ないみたいだ……。……ああ、もう彼女は、永遠に……。
誰かのために20年かけて薬の作り方を突き止めたけど、材料が手に入らない?
……あ、お客さんでしたか。すみません、気づきませんでした。
え、さっきの彼?鼻の院の研究員、マジュナジュ君ですよ。ええ、あんな様子なのは、ちょっと理由があって……。
「夜長病」って知ってますか?彼は、その特効薬の研究を20年以上もつづけているんです。……あの子のために。
夜長病?
マジュナジュ君には、幼なじみのミスラの女の子がいるんです。名前は、シャル・ヤゲンミ。私はマジュナジュ君に頼まれて、ときどき彼女のお世話をしています。
シャルさんはとても明るくて元気な子だったそうです。でも彼女は、夜長病という、ごく稀にしかかからない病に体を蝕まれています……。
それは、眠っている時間が日に日に長くなって、ついには目を醒まさなくなってしまう、というおそろしい病気です……。看病をつづけていれば死にこそしませんが二度と、起きあがることはありません……。
えぇ!?
シャルさんは、いまにも目を覚ましそうに見えますがもう20年以上も、夢の中にいるのです……。
20年以上も……ってことは、過去のあの時点で目を醒まさなくなっちゃってるのね。
大戦終了後に絶滅した「火輪草」、か……。
つまり過去にはまだある、と。
この本、彼にはもう必要ないみたいです。あなた、ご覧になりますか?
うん。
だいじなもの:東方本草学の系譜、巻之伍を手にいれた!
ごく稀にしかない病気なら、20年前に治療法が確立したとして歴史に大きな影響はないでしょう。
材料の植物はすぐに絶滅してしまうのだし。
それならばこの本をもって過去に行くしかないじゃないですか。
20年も諦めずに頑張った努力を無駄にしたら駄目だ。
~ 過去 ~
ああ、きみ。え、マジュナジュに用がある?
ん?どうしたんだい?
これをどうぞ。
え、僕にこの本を……?
……ん?……んんん?こ、これは……!!おお、そうか……!これがそれで……なるほど!すべて解決するじゃないか……!!
……?
すごいよ!これは東方の書物なの?夜長病の治療薬についてものすごく詳細に書かれている。すばらしい!
……そうか、火輪草だったのか……!たしかにあの花のエキスならうん、そうだな……まちがいない。
……?火輪草?グロウベルグにたくさん咲いているじゃないか。
そうなんだよ!ああ、なんてすばらしいんだ!さっそく行ってくるよ!!
ちょ、ちょっと待ちなよ!僕らみたいなひ弱なインドア派が飛びだしたって、グロウベルグまでたどり着けずにヤグードの餌になっちゃうよ。
……う、ぐぬぅぅぅ……でも……。うぅぅーーん……。
行ってくるよぉ。
見っけた。
だいじなもの:火輪草を手にいれた!