美女と野獣 其の参

ニーシェ りぃさん……!わざわざ見とどけにきてくれたんですね。
りぃ もちろん。

ニーシェ そういえば、このあいだのお礼がまだでした。こちらの品……先におそなえした宝飾類の一部です。結局、龍神には受けとっていただけませんでしたが、品はたしかです。どうかお納めください。
りぃ あら、ありがとっ。

ニーシェ さて問題は、このヨロイ蟲がアレヴァト様……あの少女のお気に召すかどうかですが……ここまで来たのです。生命をささげる覚悟で、献上するつもりです!
りぃ それは掛けすぎでは。

ニーシェ ……!……あれは!

おや。
黒づくめの人も一緒だ。

ニーシェ アレヴァト様!

割って入ったァ!!!

Zharijarl む、何奴!?

ニーシェ アレヴァト様!私はフェルシヴ家のニーシェと申します。おんみが、勇士アンドゥリオンと結びし古の盟約……その復活を懇願すべく参上いたしました……!

Zharijarl (こやつ、なぜ龍神様のご正体を……!?)

Zharijarl 下がれ、不敬者!アレヴァト様は、民の信仰薄きこの地にもはや未練などないそうだ。

Zharijarl ささ、このような者など捨ておかれ……

アレヴァト ニーシェとやら、話を聞こう。面をあげよ。

~ かくかくしかじかタイム ~

アレヴァト ……ふむ。つまり汝は余に聖山にとどまりて、四国の民を守護することを望む……そう申すのじゃな?
ニーシェ ……はっ。

アレヴァト ……では問おう。汝は余に、相応の見返りをさしだせるか?
ニーシェ ……。この戦乱にあたり、われらアルタナ四国の民は団結し聖山グロウベルグの防衛にあたっております。

ニーシェ しかし一介の書生である私に、軍を動かす力はありません……

ニーシェ ただ、おんみの棲処をけがす者あらば、私はこの一命に替えてもその清浄を護り抜く覚悟……

アレヴァト ……余はかつてアンドゥリオンとその末裔の加護を盟約した。されど余が約定したは、かの一族の安寧だけじゃ。汝の申す民ども……アルタナ連合の命運とやらに興味はない。

アレヴァト それに汝の申し出はこの者どものそれに比して、秀でた条件とは言えぬようじゃが……?

ニーシェ 畏れながら……私は本日、ある品をたずさえて参りました。もしもこの箱の品がお気に召さば、日々の供物として両腕に抱えきれぬほどささげましょうぞ……

あの中にあるのはヨロイ蟲…!!
秀でた条件になるの?無理では???

アレヴァト む!?まさか……

Zharijarl あ、あれは……!?

クゥダフの大群だ!

Zharijarl まさか……かほどに危険な任務とは聞いておらぬぞ!

えっ。

逃げやがったー!!!

ニーシェ りぃさん!ど、どうしましょう!?
りぃ 逃げ場もないから倒すよ。

ニーシェ ……そうでした!私は、生命を賭けると誓った……ならば全力をつくし、その誓いを守るまで!

ニーシェ それにしても……何も貴女までそれに付きあうことはないでしょうに。ふふ……酔狂な方だ!

ニーシェ 来ます!

全部倒したぞ!

ニーシェ もうすこしです!ここさえ保ちこたえれば……

ニーシェ ……新手!?くっ、絶体絶命とはこのことか。

どうしてここにこんなにクゥダフが?
カンパニエの行軍中にこっちを見つけたからとかかしら。

ニーシェ 日々、書の山に埋もれ剣の修行を怠った報いか……アレヴァト様、りぃさん。力およばず、申し訳ありません……

数が多いな。

あんたら見てないで助けなさいよ!

Zharijarl く、何が龍神か!ただの懦弱な小娘ではないか!

ええっ。

ニーシェ ……!

おおっ!

ニーシェ アレヴァト様……やはり、伝説は……!

ブレス!!

一瞬で一網打尽だぁ!

Zharijarl あ、あれが……邪龍……オズマヌークの力……

邪龍なの?

オズマヌーク Odzmanouk 『にーしぇ、ソシテりぃヨ。ヨクゾ己ガ生命ヲ賭シ、余ガネグラヲ護ル意思ヲ示シタ。サレバ古ノ盟約ニヨリテ、余、汝ラニ加護セン。』

義理堅い!

オズマヌーク 『全能ニ等シキコノ身、口先ノミノ崇拝ナド不要……余ノ好物ハ、人ドモガ儚キ生命ヲ賭シテ護リ抜ク、義ノ魂。汝ガ祖あんどぅりおんハソノ魂ヲ持タバコソ、人間デアリナガラ余ガ盟約者タリ得タ。』

義理人情が好きなの。

どうにも邪龍っぽくないなぁ。
もしかして、アトルガンと敵側の龍だったのかな。
それを引っ張り込もうとしてた?

オズマヌーク 『にーしぇヨ、ソノ末裔タル汝ガ護ルコノ岳ニ、余ハイマシバラク留マルコトニセン。』

ニーシェ 私が……アンドゥリオンの……子孫?
オズマヌーク 『然リ、ふぇるしう゛家ノにーしぇ。汝ノソノ氏名、ソシテ先ニ示セシ不動ノ義コソ何ヨリノ証。』

オズマヌーク 『……ソシテ、ソコナ三人。』

オズマヌーク 『余ガ地獄耳、侮ルコトナカレ。余ヲカノ忌マワシキ名デ呼ブ者ニハ、死ヨリモ霜烈ナル禍イガモタラサレヨウ……』

とんずらー!

ニーシェ アレヴァト様、畏れながら……!いまのお話、まことでしょうか?私が、かの武人アンドゥリオンの……?

アレヴァト ふ……氏名を聞く前から気づいておったわ。あの者の面影、余が見まごうはずもない。

よっぽど気にいってたのね。

アレヴァト ニーシェよ、己が知らずとも、汝はアンドゥリオンの血筋の者。わざわざ結びなおさずとも、古の盟約は有効じゃ。先刻見せた不動の義、此後も余に示すがよい。さればこの力もて汝が同士らに助勢せん……

アレヴァト くく……それにしても汝が太刀筋……詰めの甘さまでアンドゥリオンめによく似ておったぞ?

アレヴァト それから、りぃとやら。
りぃ はいな。

アレヴァト 汝は盟約と無縁の身でありながら、余がねぐらを護る侠を示した。その姿、しかと記憶にとどめたぞ。

気に入っていただけた?

ニーシェ アレヴァト様。ようやく、わかりました……

ニーシェ 「其はヨロイなれど、鋼にあらず。鉄床ならぬ硬き寝床を好み、その内に宿りて、安きを得るもの也」

ニーシェ 古文書にあった供物、龍神の「好物」とは、われら人間の「不動の義」……固く揺るがぬ心に宿る、義の魂のことだったのですね……!

なるほど。

アレヴァト はて、余の好む供物とな……?なんのことじゃ?

ん?
心当たりがない?

アレヴァト そうじゃ、すっかり忘れておったわ。汝らの献じた品をあらためることとしよう。

ニーシェ あっ!そ、その箱の中身は……!

虫!!

アレヴァト わくわくするのう。

あっさり開けちゃった!

アレヴァト これは……!

耳がピクピクしたぞ!?

アレヴァト ヨロイ蟲ではないか!

うおお!
虫を贈り物にするなんて、や、やばい?

ニーシェ ……!も、申し訳ありません!

アレヴァト さて、汝のささげしこの供物……

えっ、ヨロイ蟲ってそんなにでかいの!?
もっと小さいのかと思ってた。

ってか、ビチビチ動いてるうううううううう。

ニーシェ ……?

アレヴァト 生なうちに、さっそくひと口……

えっ!?

ひいいいい!?

龍になってる時に食べるものじゃないの!?

ニーシェ ア……アレヴァト様っ!?

(何かがつぶれた音)

ごくんっ。

アレヴァト むふ……♪

ムーンストーンを手にいれた!
アメトリンを手にいれた!