

……来たか?
…………。
いえ、なにも見えません……。

……ふむ。これだけ待っても何も来ぬとは……。ゾーホーズーの野郎も今回は自重したか。

……来たわ。

なにも見えませんが……?
じきに見えるわ。でも、なぜ……。この足音……普通じゃない。
遠くを射抜く目だけじゃなくて耳もいいのね。

……あ、あれ!


すごい走ってる。

そんな……、どうして?敵もいないのに、トロールたちが、みな血気だって走り回ってる……。
これでは、ゾーホーズーを見つけても狙い撃つのは至難の技です!
どういうことだ?奴ら、このまま怒り全開で皇都まで突っ走るつもりか!?
ええ!?

なんとかしてみます。たとえ、1人でも敵兵を……。
よせ。狙撃は一度でも位置を知られたらお終いだ。お前もわかっているだろう。
……?
あれは……

誰か追いかけられて……ああっ!?

ライアーフ!?
どうして!!
まさかこれが自分が変わるって言ってた作戦??


……ライアーフ!!

ああ……安全な皇都にいたはずなのにどうしてあんな所に……!……ど、どうすれば、わたし……。
ナジュリス!なにをしている?ゾーホーズーだ、撃て!
でも……でも……このままでは弟に……ライアーフに!!
当たる可能性がゼロではないから、ためらうよね…。

くそっ、あいつはなにをしている!?
わかりません。しかし、進軍中だったゾーホーズーを挑発してしまったことは確かなようです。
これは過去の話で、ナジュリスが将軍になった後の現在でもアサルトで敵に捕まってたりするから、成長することもなく、ライアーフは壊滅的に軍人に向いてないんだと思う。早くやめた方がいい…。

どうして……。
早くしろ、ナジュリス!あれだけ、ゾーホーズーを怒らせてしまったのだ。どの道、あいつは無事では済むまい。
!?
確かに追いつかれたらメタメタに。
それならばライアーフには当たらないに賭けて射た方が賢明ね。
だけど、愛する弟を自分の手で殺してしまうかもしれないと思うと……。

それに、ここで我々がしくじれば、皇都までゾーホーズー軍を遮るものはなにもない。
えっ、まさかライアーフ皇都方面に逃げてるの?
せめて反対方向に行こうよ!!

大勢の命がかかっているんだ。撃て!

……。

……そうか。では……弟を狙え。

!!
そうすればゾーホーズーは怒りの矛先を向ける相手を手に入れ、いったんはハルブーンに戻るだろう……。

皇都の市壁を修復する時間ぐらいは稼げるかもしれん……。
確かに…。
さすが中隊長の判断力。

……そんなッ!!

いいか、よく聞け。お前の強弓でしか、ヤツの甲冑は射抜けん。だから、撃ってくれ。その矢はどちらに当たっても、皇都のためになる……。

撃つしかないんだ。ナジュリス!!


…………。

危ない!
そして2人の距離が近すぎる!


……撃てない!私には、私には撃てません!!

ナジュリス!

できません……。


ナジュリスも撃たないといけないのは十分すぎるほど分かってるけど、それでも…だよね。

ダメです!あの皇国兵に引っ張られて皇都の方へ……。もう、手遅れです!!
やっぱり皇都に逃げてるんかい!
ダメダメすぎる!!!

くそっ、間に合わなかったか……。狙撃は失敗だ。ザルワン、至急参謀本部に戻り、戦況の報告を!

了解です。
ワープで帰っていった。

これは…ナジュリスに重い責任が?
いやでも、休暇中のピクニックに来てたんだから、とっさに敵将を討てなくても仕方ないんじゃないの!?



ああ…。
街中が壊れて煙がもくもくなってる。
姉さん……ボク……。

自信があったんだ。
ライアーフじゃないか!
ピンピンしとる!無傷かい!!
情報屋からトロールの秘密の抜け道を教えてもらって……。そこで待ち伏せれば、敵も油断してるだろうし敵将の首を簡単にとれるだろうって……。
ええ…。
自分の実力は計算できなかったのか…。

それに、これは皇都を救うことにもなるって……。
そうしたら、そうしたら、ボクは姉さんに……。
姉さんに?
勝てたとかそんなんじゃなくて、一人前と認めてもらいたかった。かな…。

……なのに、まさかあんなに強いヤツだったなんて……。

まさか、あんな……
……。


バシッ!

無言でビンタいったァ!!!

ライアーフめちゃくちゃびっくりしてたけど、いままで怒られたことなかったんだろうなぁ。