おやおや、付き人君。相変わらずのん気ですねぇ。皇都は軍高官に内通者がいた!って噂で持ちきりだっていうのに。
査問担当のあの人、お縄になったのかな。
きみが戻るのが遅いから、すっかり取材に乗り遅れちゃいましたよ。いったい、どうしてくれるんです?
ええーっ、行ってきたらよかったのに。
よう、お前たち待たせたな。
ええ、またしても、首がダルメルですよ!ところで、噂は本当なんですか?
ああ、なに食わぬ顔で査問会に出頭したガダラルさまが、その議場で内通者の正体を暴きだした迄はよかったのだが……
室内でー!?
ぎ、議場ごと崩壊!?
ぎええ。
テングの一件は白紙になったが、そっちで、またガダラルさまは召喚されるだろうな……。
なんたることたる。
ま、まあ……ともかく、疑いが晴れてよかったですよね。
……うむ。
おっと、忘れていた。このアトルガン黄金貨は、少ないが、謝礼だ。受け取ってくれ。
そんな~、礼だなんて!私はただ、ガダラル将軍の御為を考え灼熱の火山をも厭わず……でもまあ、折角なのでいただきますが。
悪いな。私は「りぃ」に渡すように命じられているんだ。
えええええ!?そんな殺生なぁ……いったい、どこの誰に?
さあな……「絶対に言うな」と、その方に厳命されているのでな。
ガダラルですね。
……それにしても、依然ナゾですよね。ガダラル将軍はなぜ、夜中にハイドランジアを持ってあの場所へ?
それなんだがあのハイドランジアはたくさんの花をつけるため、我が軍では団結の象徴とされ、英霊への献花に利用されているのだ。
へぇ。
そして、あの花は別名を「七変化」といって、次々と色を変えることでも知られている……。
ガダラル将軍は東方で散っていった戦友……そして敵に亡命した、あのエルヴァーン女のために……。たとえ、遠く離れ、住む世界が変われども、揺らぐことのない団結を伝えるため花を海に捧げていたのではないだろうか……。
なんと……
ま、あくまで私の想像だがね……。
いや、そうだ!きっと、そうです!!
そして、その花はやがて海流に乗り、沖に出て、万里の波濤を越え東方で待つ、愛しのシャイーハの手に……
愛しの?
って感じではなかったような…?
ずばり、そうですね!?
いやぁ、さすがにそれは……ほら、だいいち方向、違う……
確かに届くわけがない。
いいえッ!!そうに違いありません!
ああ、なんという熱情……いいえ、もはや、これは激情です!あの無骨な炎蛇将に、そんなロマンチックでスキャンダラスな一面があったなんて……!
こ、この思い込みも曲を生みだす吟遊詩人には必要なのだろうか?
……トゥル?トゥルルルルルッ!
来ましたッ!インスピレーションのビッグウェーブがついにザザァ~っと来ましたよおぉぉ!!
……おぉ。
ゴーゴーゴゴン・ゴ・ゴ~ゴ~♪
ゴーゴーゴゴン・ゴ・ゴ~ゴゴ~ッ♪
…?
戦隊もの的な…?
揺らめく、炎の♪なかに立つ~♪
熱き魔神♪ボクらの、ガダラル~♪
背に負う鎌は悪を断つため~♪
「クロスリーパー!」
魔法の炎は愛を燃やすため~♪
「サラマンダーフレイム!」
爆裂!爆轟!大爆走~♪すべてを燃やすぜ♪オレは、ガ・ダ・ラ・ル~ッ!!♪
ファリワリの歌ってこんな感じだったんだ?
ガダラルバージョンだからかな。
ルガジーンのとかはもっと真面目なんだろうな。きっと。
パチパチパチー。
タルちゃんしか拍手してくれてない。
……お、なんだ?新作か!?
爆裂~!爆轟~!大爆走~~~♪♪
速攻パクったー!!!
しかもこの場にいる人全員あっち行ってるー!
え、えええ?ちょっと、ちょっと!!
これはいくらなんでもひどい。
なんですかもうッ……!くそっ、こうなったら、絶対に真似できないキーでェェッ!
マ……マホォの……ホノオは……アイ……ヲ……モやすゥためェェェェッ♪
ゲ~ホッ!ゴホッ……
く、苦しそう。
えっ、なに!?
突然ファリワリの周りに花火が!?
そのまま歌うの!?
……おい、マジかよ。アレ、人間発火現象じゃねぇの!?
なにそれ!?
そんなんあるの??
よ、よく分からんけどいいぞー!
ほんとだ!すご~い!きれ~!!
イカす!最高にホットなパフォーマンスだぜ!
…ん?
なんか、右端に赤い人が…。
ええー!?
ガダラルが花火上げてんの!!?
大技ファイガばかりじゃなくて、こんな器用なことできるんだ。
なんだかんだで結局、優しいのね。
アトルガン黄金貨を手にいれた!