海沿いのここまで逃げてきたのか。
いた。
……これはこれはレディ・スカリーG。我が城にお招きできて光栄の極みだよ。
スカリーG?
減らず口を慎んだらどうだ、レコ?
例の件で火の一族からは夥しい犠牲者が出た。本国のガ・ナボでは、いまだ騒乱つづきだ。おまけに、ウィンダスの募兵にそそのかされて、多くの同胞がこの大陸に渡って、命を落としつつある。
しかも、例の親子の行方もようとして掴めぬ……。
火の一族…。例の親子…。20年前…。
ヨー・ラブンタ。光の弓。
火の族長ネヴ・ベフラティ。娘のシウ・ベフラティ。
20年前の今、火の族長親子を追って本国からやってきた罪狩りのミスラ・スカリーGは、スカリーX、Y、Zのお母さんだね。
なにかがおかしい。そう思っていたら……やはりお前の登場ときた。レコ・ハボッカ!
わぁぉ、怖いなあ。さすが罪狩りのミスラだ。
でもどうしてそこまで、僕に執着するの?そんなに、僕の首が欲しいの?
……ああ、お前が本当にレコならな!
罪狩りのミスラが首を欲するということは、レコは罪人?
……。
レコ・ハボッカは氷湖に沈んだはずだ……この私の手によって……誰にも知られず……。
ええっ?
ふぅん、じゃあ、僕は何者なんだろうねえ?ひょっとして、アンデッド?
ふざけるな!降りてこい!この刃に問うてやる。
あら、素直に降りてきた。
……おや、それは「王の涙虫」?
この虫は見逃さない。罪人についている匂い……決して消すことのできない、永遠の匂いを……。
なかなか策士だねぇ。悪くない、でも……
飛苦無投げた!
王の涙虫全滅。
なにをする!
無粋だよ。こんな虫にあれこれ詮索されるのは好みじゃない。
つまり、罪人なんですね?
罪を犯した当人なのか、その子どもなのか。
知りたいことがあるなら、閨でゆっくり教えてあげてもいいけど……ただ、もうちょっとだけ待ってほしいんだ。いま、こちらの大陸はじつに興味深い局面でね。結末を見たいんだよ。
その後なら、よろこんでこの首を差し出すよ。その罪狩りの刃の前にね。
罪から逃れる術はない……忘れるなよ、レコ・ハボッカ。
見逃すんだ?
罪狩りのミスラにしては甘い……それがこの後のスカリーGの葛藤に繋がっていくのね。
さて怖いレディなら帰った。出ておいでよ、りぃ!
気づいてたんだ?
久しぶりだね。元気にしてたかい?
……ん?あのレディは何者かって?
あ、ひょっとして焼きもち?彼女は、ただの知り合いだよ。大丈夫、きみが心配するような仲じゃない。
いや、それは全然…。
で、今日は僕になんの用?いや、待って。当ててみせよう。
ロマー嬢に言われて僕を連れに来た……図星だろう?
うん。
悪いけど、お断りだよ。だって、考えてもみて。あの熱烈レディたちの猛攻にさらされたらこの僕の柔な身体は3日と持たないよ。
それは本当にそう。
……。
……うっ!
レコ?
!?
大丈夫!?
ぉ……
おなかすいた……
レコ・ハボッカのお腹が、ぐぅぅぅと鳴った!
なんだよー!びっくりしたじゃないか!!
失礼……実はレディたちから、逃げ回るのに忙しくて、しばらく、なにも口にしてないんだ……。
ダメだ……お腹が空いて、力が入らないよ……
ア○パ○マ○か孫○空かよ!!
いや、コ○グか!?
ううぅぅん、残念だ……これから、きみの力になろうと思ってたとこだったのになぁ……。