それは、禁書です。手練れの冒険者ならば見分けがつくでしょう?その書が発する、威圧的な魔力…。
えっ…?
いや、え。
ヒイィ。
それで…あなたはどうやって、この部屋に入ったのです?天の塔の私の部屋を通る他に、この部屋へ降りる術はないはず。
トライマライ水路を通って、そこから…。
え、神子さまの部屋からここに繋がってるの?
あの扉から来たというなら、扉のカギが必要…。目の院の指輪が…。
…。もしや、あなたはあの人の指輪を…?あの混乱で失われた、カラハバルハの指輪を、見つけたのですか?
カラハバルハの指輪?
あ、思い出した!
ナナー・ミーゴから白き書を取り戻した時に、アジドマルジドがオバケの家の鍵として受け取ってたのが、カラハバルハの指輪だった!
だから、トスカポリカから目の院の指輪を貰った時に覚えがあったんだ。
カラハバルハは目の院の前院長だから。
見つけました。
トスカポリカの指輪を預かってるのは黙っておこう…。
そうですか。そう…、それならば、教えましょう。
それでここまで来てしまうなんて、仕様のない人。とか思われてるんだろうなぁ。
ここは、「心の院」。25年ほどまえに作られた、隠された6つ目の院。「召喚」の魔法を研究する院です。
カラハバルハはたった5年の研究で、完全召喚成功しちゃったの?
ここで研究を続けていた方は、30年ほど前、私にこう主張しました。「自然に宿る魔法力から魔法を生み出す魔法術は、もう行き着くところまで行き着いている」…。
神子さまって…。
いや、考えるのはシャントット様の年齢に触れることより禁忌かしら。
そして彼は、考えました。自然ではなく、生き物から魔力を引き出す理論を。生き物から力を引き出し、その生き物と同じ力を発揮させる魔法です。
それは…確かに大きな力になりそうだけど、危険そうな予感。
その理論は、生き物の命の尊厳を脅かす可能性もありました。ですから当時の5院の院長の中には反対する意見もありました。
そうなるよね。
しかし、私たちは力が必要でした。普通の生き物では、とても小さな力しか得ることができないでしょう。しかし、偉大なる獣の力ならば一部でも途方もない力になるはず…。
…。その力のおかげで、ウィンダスは救われたのです。しかし、そのために失ったものの大きさは…。あなたも少しは、ご存知のはず…。
国と民を守るために必要な力だったけど、とても大きな代償を負ってしまった、と。
そうなると予想はついたけど、手を出すしかないほど追い詰められた状況だったのね。
ここにある本を読んだら、お帰りなさい。あなたをここに導いたのが、カラハバルハの星だというならば、私は追い返しも咎めもしません。
カラハバルハの導き…なのかな。
しかし、ここ中央塔の魔封門から先は、国民であろうと、立ち入りが許されぬ場所。そのことに関しては、ふたたび処罰を考えますよ。
ぎええ!!
魔封門から先って立ち入り禁止だったの!?
満月の泉だけじゃなくて?
知りませんでしたで済むのなら守護戦士はいりませんよねそうですよねー!ヒィ!!
わかりましたね、りぃ…。あなたに導きの星があらんことを。
はいぃ。
うぅ…。
神子さまの罰で、聖者の招待受けてきたばかりなのに、次はどんなことなんだろうね。
それにしてもこれ禁書って、こんな所に無造作に。何が書かれてる本なんだろう?
う、わああ!?
禍々しいもやもやがっ!!
恐ろしい威圧感を感じる。
触れてはならない…、誰かがそう囁いた気がした。
えっ!?
だ、誰!?
この…頭蓋骨?
禁書に誰かが触らないように守ってるの?
さっき神子さまが「ここで研究を続けていた方」のことを話すとき、頭蓋骨がアップになってたし、もしかしてとは思ってたけど。
カラハバルハなの…?
ただいまー。
ムム!?おお、やっと帰ってきおったか。どうだったかね!?何か、手がかりはあったかね!?
手がかりどころか…。
な、ななななな!!!神子さまがいらっしゃったとぉ!?
うん。
なんということだ…。このままでは、私にもお咎めがあるのかも…。闇牢になぞ繋がれたら、いっかんの終わりだぁ!
カラハバルハの指輪のせいにしたから、たぶん大丈夫…いや、分かんないなぁ。
ムム、冒険者!私の一生のお願いを聞いておくれ。これを大事に持っておいてくれ。
え、なに?
だいじなもの:魔力を失いし神々の書を手にいれた!
ちょっと、やだよ!こんなの持っておきたくない!!
も、もしも私が牢に繋がれるようなことがあったらこれを盾にして、神子さまに私の自由をお願いするのだ。
ええっ!?これを盾に?神子さまを脅すの!?
ムムム!神子さまを脅すというわけではない。…そう、交渉!交渉するのだぞ!
こんな奥の手引っぱり出して、どう違うってのよー!
誰にも言うでないぞ!さぁ、さっさと帰るのだ!
くっ…やっぱりウィンダスの院長って特殊な人が多すぎる!!!