カーディアンはどうして反乱を起こしたの?
それは、我の唯一のしかし致命的な大失敗だった!
カーディアンには、何があろうと逆らってはならない「主人」という概念がある。この「主人」を我のみに設定すれば、問題は起こらなかったのだ。
ふむ。
しかし、我は、カーディアンの軍隊を作らねばならなかった。
そのためには、下っ端のカーディアンが、ナンバーの高いカーディアンに従うという仕組みが必要だった。それで、より高いナンバーのカーディアンを「主人」とする設定にし、いちばん上の位の「エースカーディアン」を我に従うようにしたのだ。
なるほど。
しかし、その仕組みが、このように馬鹿げた事態を招いたのだ!
ゾンパジッパが最上位の設定だったのに?
どこかでエラーが発生したのかな。
ジョーカーっていうカーディアンがいるんだけど…。
なに!?ジョーカー!?
その名前を聞くのは、久しぶりだ…。もう、あれから20年経つのか?ジョーカーは、目の院院長だったカラハバルハが作ったカーディアンのことだ。
カラハバルハが作ったカーディアン!?
20数年前、カラハバルハはホルトト遺跡の魔法塔で研究をしていた。
そんな彼は、ある日魔法塔に特別な魔導器を作るために、強くて賢いカーディアンを何体か貸してくれと言ってきた。
特別な魔導器…もしかして、完全召喚のための装置?
そこで我は、エースカーディアンに、カラハバルハも主人として言うことを聞くように設定した。
…ん?
カーディアン軍隊の最高司令官が2人になったってことよね。
これがエラーの原因?
するとあろうことかカラハバルハは、エースカーディアンを手本に我の技術を盗んで、「ジョーカー」を作った。
見よう見まねでカーディアン作っちゃったの!!?
だ、大天才ここに極まれり…!!
そして、エースカーディアンどもに「ジョーカーを主人として言うことをきけ」と命じ、ジョーカーに魔法塔の魔導器の全てを任せたのだ!
えっ、最高司令官が3人に?
いや、最高司令官が「ジョーカーを主人に」と命令したんだから、カーディアン軍隊の指揮権はここでジョーカーひとりに移って、ゾンパジッパとカラハバルハは無関係になった…ってこと?
だから、エースカーディアンがゾンパジッパを幽閉することにためらいはなかった、と。
そして、ホルトト遺跡を操っていたのはカラハバルハではなく、ジョーカーだった。
ひぇ…。
…しかし、あの戦いでカラハバルハは死に…。人形の術をかけた術者が死んだために、ジョーカーも死んだ…。
ふむ。
術をかけた主人が死ねば、人形の魔法は解け、カーディアンたちも共に死ぬ。しかし、ジョーカーという主人を失ったというのに、生き残ったエースカーディアンたちは、自分たちのありえない状況に混乱しおった。
ああー、なるほど!
本来ならカーディアンを作った人=主人だから、カーディアンだけが残されることはなかった。
だけど今回は、
エースカーディアンを作った人=ゾンパジッパ。
エースカーディアンの主人=ジョーカー。
だから、主人が死んだのにカーディアンが生き残るという状況になって、想定外の事態になったのね。
そして、あやつらが出したのは、「ジョーカーが復活さえすれば、問題が解決する」という結論だったのだ。
なるほど…。
あやつらは、最終的には我をこんなところに閉じ込めてまで、ジョーカーを復活させるのが使命だと信じ込んでいる!
自分たちを止められるのはゾンパジッパだから、それをさせないため。
ゾンパジッパが死んだら自分たちも止まってしまうから、死なせないため。
2つの理由で閉じ込めて監視することにしたのかな。
ジョーカー、もう生き返ってるんだよ。
なに!?カーディアンたちは、とうとうジョーカーを見つけ出してしまったというのか!?
この頃、我の元にあやつらが姿を見せぬようになったから、なにかが起きたとは思っていたが…。
ちょくちょく様子見に来てたんだ。
…いやいや、しかし、もしもあやつらがジョーカーを手に入れても、普通の魔導球では生き返らぬはずだぞ!いったい、誰がどうやって…?
ホノイゴモイが大金をつぎ込んで探し出した特別な魔導球。
あれは結局どう特別だったのか…?
(まさか……、あの時、ヤグードに奪われた……?)
ヤグードに奪われた、魔導球?
20年前か、それより前の話よね。
そのことをホノイゴモイも知っていて、探していた…ってわけか。
と、とにかく、何が起こったにしろ、死んだカーディアンが生き返ったというならば、大変なことが起きているはずだぞ!
大変なことって?
…。
いいか?理解する頭がなくとも、一度言ったら二度と言わぬからよく聞けよ。
うん。
言うのためらうほどの事が?
無機物に「命」と「意思」を与える魔法には重大なる決まりがある。「魔法をかけた術者が死んだら、その魔法は切れる。」
カラハバルハが死んだから、ジョーカーは止まっちゃったんだよね。
…そして、もうひとつ。「死んだ無機物を生き返らせてはならない。生き返らせたならば死した術者も「死の虚無」から呼び戻される。」
…え。
答えは自明だな?ジョーカーが生き返ったならば「カラハバルハも生き返っている」はずだぞ。
ジョーカーの中身は、カラハバルハの幽霊?と、この前一瞬思ったけど、結局違うっぽかったけど、まぁ「霊体」だろう。としか思わなかったんだけど…。
明確に「生き返ってる」の!?
それが禁術…?
ふむ。手の院の禁術は俗に「魔法人形の伝説」と言われるものでな、はるか昔、この禁術を使った魔道士によってウィンダスが災禍に見舞われたという話が有名だ。
だが、この禁術は本来、ウィンダスを護るための素晴らしい魔法なのだ。先の話は、それを悪用されたに過ぎん。
利用方法によって善にも悪にもなるものね。
悪いことをしたのは、誰だったんだろう。
この禁術を編み出した魔道士は、自らの人形を蘇らせることで、死から蘇り、ウィンダスを護ったという話が残っている。
おおっ。
作った人は善人だったのね。
それに勿論、この魔法は万能ではない。術者が人形に宿した生命力を、死した後に呼び出すという原理だからな。
つまり、生きてるうちに寿命を削って、人形に貯めておくような魔法というわけだ…。わかるかな?
うん。
貯めておかないと生き返れないのね。
カラハバルハはジョーカーに寿命を貯めてたってこと?
生き返って得た実体が、黒い死者?
まったくカラハバルハと似てないけど…。
ん?禁術を作った人は、蘇ってウィンダスを護ったほど記憶が鮮明だったっぽいのに、黒き使者はそうでないっぽいよね。
どうしてだろう。
何か失敗したのか、イレギュラーが起こったのか?
…ん?となると…?
…。おまえのような冒険者には関係ないこと。アプルルも、禁術のことはよく知っているはずだ。
あ、そうなんだ。
あと聞くことは…?あらかた聞いたしなぁ。
あ、そうだ。
どうしてアジマルとアプルルちゃんに嫌われちゃってるのよ。なにやったの?
嫌われている?なんだそれは?
え?
アジドマルジドもアプルルも我を嫌っているわけがない。
えぇ?
祖国を救うという偉業をなしとげた我を父に持ったのだ、感謝すれども憎まれるわけがないであろう!アッハッハ!
あぁ…。
もういいデス…。
待て待て。キミにはかなり難しい話だったろうから、アプルルにきちんと我の話が伝わるように、紙にしたためてやろう。
あ、ありがとう。助かる。
では、我の子どもらにもよろしくな。我の力が必要な時は、遠慮なく我を頼るがいいと伝えるのだ。
う、うん…。
だいじなもの:ゾンパジッパからの手紙を手にいれた!
うまく扱って転がせばいいんだろうな。って感じはするけど。
おそらくまだその片鱗しか見てないけど、あれが父親だったら、それは苦労するよな…。って思ったよね…。
あ、そういえば助けた状態だったと思うけど、ウィンダスに戻らないのかな。
出てもすぐにエースカーディアンに連れ戻されるのかな。
…特に困ってもなさそうだったし、まぁいっか。