ええっ!?ほんとに!?おにいちゃん、神子さまの許しを得ることができたの!?
うん。
しかも、カラハバルハさまの心の院にまで出入りが許されたなんて…。なんど説明してもらっても、どうしても信じられないわ…!
神子さまも前向きになれたんだよ。良かったねぇ。
アプルルよ。アジドマルジドのことで、大変なときになんだが、ちょっといいかな?
ヨランオラン博士!
どうしたんだろう。珍しい。
ううむ。冒険者から、こんな手紙を手に入れてな。これは、ボヤーダ樹にいるマンドラゴラが落としたようなのだが…。
…?
…ああっ、この字…!?
心当たりが?
ううむ、わかったようだな。彼は、どうもボヤーダ樹のどこかに捕らわれているらしい。助けを求めているようだ。
だが、しかし、この件は…こんなことを言うのもなんだが、そなたたち兄妹に任せることにしようかと思う。
いったい誰が捕らえられて?
そなたたち兄妹とアヤツの間には、いろいろとあったからな。…その手紙、私は見なかったことにしよう。
捕まってる…ということはしばらく姿を見てないということよね。そしてアジマルとアプルルとの間に浅からぬ因縁が…?
まさか…。
それでは、邪魔したな。気を落とすのではないぞ、アプルル。
無事なのが分かって気を落とす?
一体どれほどの事があったの…?
…どうしよう。私、どうしたらいいのかわかんない。だって、とっくに死んだと思ってたの。
うん?
ああっ!お父さんが生きていたなんて…!どうしよう、どうしましょう、冒険者さん!
やっぱりゾンパジッパ!
いや正直、アジマルもアプルルちゃんもひどく嫌ってるからよほどの事をしてきた父親だろうし、生きてるのが分かって困るほどって、もうそんなクソ親一生関わらない方が良いと思うよ。
だから、ほおっておこう。と言いたいけど、アプルルちゃんの性格を考えると、後押ししてあげた方がいいのかな…。
助けにいこう…?
…普通だったら、そうなんだろうけど…。
アプルルちゃんがためらうほどの…!!!
会わなくていい。ほっといていいよ!
そうだわ。あなたに頼ってもいい?ボヤーダ樹へ行って、わたしのお父さん…ゾンパジッパを捜してほしいの。
捜しちゃう?いいの?
そして、もしも…。もしも本当に生きていたら、カーディアンたちがなぜに反乱を起こしたのか、彼らの王とは何なのかそのことも尋ねてほしいの。
あ、なるほど。確かにカーディアンを作ったゾンパジッパなら知ってるかも?わかった。行ってくるよ。
りぃさん、わたしのわがままを聞いてくれて、本当にありがとう!
いいってことよ。
あ、でも、このことはおにいちゃんには、まだナイショにしておいてね。お父さんのことで、おにいちゃんの研究を邪魔するわけにはいかないから…。
うん。わかった。待っててね。
グゥーブーの腐葉土が必要でボヤーダ樹行ったけど、ドロップ率低いらしいうえに落とす敵が少なくてなかなか出ないからジ・タで乱獲じゃオラアアア!!
はあぁん、やっと出た…。
ほらふかふかの寝床だよ。受け取れー!
ピィ…!
!?
あ、いた。
君は誰だね?
人に名を尋ねるときは、まず自分から名乗られよ!
何、我こそ誰かと?仕方あるまい、名乗るとしようか。
南方にありき魔道の都ウィンダス連邦「手の院」院長の座務めるゾンパジッパ…20年前、ウィンダスに偉大なる勝利をもたらした、高名・異才・美麗の3拍子揃ったタルタルとは我のことなり!
うわぁ…。
そう。その我が何故にこのような場所にいるかという説明も必要だな。
本当だよ。なんでよ。
てか、一人称「我」ですか。
我は20年前の活躍のため、ウィンダスの魔道兵器カーディアンにさらわれ、連行され、監禁され続けていたのだ。
えぇ…?
カーディアン作った人なのに、カーディアンに拉致されたの?
しかし、勘違いをされては困る。我は捕らわれたふりをしながらも、これを好機ととらえ、自主的にここで研究を続けている。
何の研究なんだろう…聞かないでおこう…。
…しかし、この我を失った祖国ウィンダスがどうなったか心配でな。もしも、おまえが助けに来たというならば、助けられてやらんわけでもないが…?
申し訳ないけど、助けに来たわけではないのだな。
…ほほう。なるほど。我が娘アプルルの使いで来たというのか。我が娘ながら、手の院院長になったとは驚きだ。
頑張ってるよ。
しかし、カーディアンたちは我が娘に従ってはおらんのではないかな?我が娘は、カーディアンを個体として尊重しすぎるきらいがある。
ちゃんと従ってるよ。むしろお母さんと呼ばれて慕われてるよ。
カーディアンは、我らにできない力仕事や危険な仕事をさせるためのものだ。
作業用ロボットとしては、そうなるね。
下手に知能を与えれば矛盾に混乱し、極論へたどり着く。カーディアンは「やるべきこと」と「やらざるべきこと」の2つを見失ってしまうのだ。
なるほど。
そう、生みの親である我を、こんな辺境の地に捨て去るなどもってのほかだ!
それよ。
兵器として、道具として扱っていたなら、制御する方法を絶対に確保していたはずよね。
どうしてそんなことになったのか?
…。それで、論点がずれたようだが、アプルルが我に聞きたいことがあるということだったな。
うん。
なんでも聞くがいい。もう一度言うが、我は、カーディアンを生み出し、ウィンダスに新たなるパワーを与えた賢者。答えられぬことなどない!
あ、本当?えーとね…。