騎士団の凱旋だ!
トリオンから話は聞いている。お前の力なくしては今のサンドリアの平和はないといっても過言ではあるまい。なんと礼をすればこの感謝の気持ちを伝えられるじゃろう……。
そうだな、お礼は…四六時中インスニマントとか、高低自由自在カメラとかがいいな。
ところで問題の剣じゃが、まだロシュフォーニュが回復せぬゆえ、詳細は分からぬのだ……。
陛下!
おぉ、ロシュフォーニュ!クレーディからいろいろと話は聞いている。身体の方はもういいのか?
ええ、このような自分を看病してくれた王女様たちには大変感謝しております。
そして陛下、なんとお詫び申し上げれば……。
……こうして見ると確かにローテの面影がある。だがまさかお前が、あの死んだと思っていたロシュフォーニュとは……。そうと分かっておれば、もっと犠牲は少なくてすんだのであろう。許してくれ。
陛下……。
顔をあげてくれ、ロシュフォーニュ。昔話に花を咲かせたいのはやまやまじゃが、聞かせてはくれぬか、あの聖剣の話を……。
えぇ、私もそのつもりでした。
そもそもあの剣は、ランペール王が分家であるタブナジア侯爵家へ厳重な保管を命じたもの。我々タブナジア侯爵家の者は成人の儀の際にそのことを知らされるのです。
では、母上も?
そう、ローテ姉上も。と同時に我々は「夢幻花」が剣に対して特別な力を持つことも教えられました。
私があの時投げた……。母上の遺言はそれだったのですね。
庭に夢幻花を絶やすな、と。
だけど、私たちはその剣が何であるのかまでは知らされてなかった……。いえ、おそらく誰も知らなかったでしょう。ただ、決して抜くことはならない、と言われていました。
ランペール王が厳重な保管を命じたということは、ランペール王はちょっとだけでも抜いたことがあったのかな。
だけど、あの大戦の際に……。
あの日、我々侯爵家は獣人軍により陥落したタブナジアを逃れ、サンドリアへと急いでいました。もちろん聖剣もたずさえて。
あの混戦の中、中心部から抜け出すとは。
地下の抜け道とかがあったんだろうな。
しかし、幼い私は自らの故郷が目の前で焼かれるのに耐えられず、荷の中にあった聖剣を手にし、みなが止めるのも聞かずタブナジアへと戻ろうとしたのです。
しかしその途中、オークの小隊に見つかってしまった私はやむなく手にしていた剣を抜いてしまった……。
抜いたと同時にまばゆい光につつまれ、自分が全能になったような、あたかも神になったかのような意識を感じた……。
どれぐらい経ったでしょう、ある男に起こされた時には、見知らぬ海岸にいました。しかしすでに聖剣は手にしていなかった……。
その男によると、謎の爆発によりこの近辺は水没したとのこと。やがて、ここがタブナジアの領地であり、そのほとんどが海の底に沈んだことも分かってきました。
彼によれば、オークが持ち込んだ兵器が誤爆したのではないか、ということでしたがこれだけ跡形もなくなるとそれも分からないだろう、とのことでした。
まさか聖剣のエネルギーで…とか想像しようもないから、そういう推測になるよね。
私はその後もタブナジアに引き返してからの記憶が何年も戻らず、その男の話を信じていたのですが、ある時、ふとした拍子に記憶が蘇り、そしてすべての真相が分かりました。
あの剣を抜いたために、タブナジアが消滅したのだと。自分の一族だけでなく、罪なき民までこの手で殺めてしまったのだと!
絶望だっただろうなぁ。
自分はそれ以来、自らの幼き過ちを悔い、なんとしてでもあの剣を探し出し、誰の手にも触れられぬよう封印するまでは地獄すら行くことはできぬ、と誓ったのです。
にわかには信じられん話だが……。
あのタブナジアに獣人軍を集める、という作戦はあそこに聖剣があったから成功したのかもしれないな……。なぜか獣人はあの聖剣を生理的に憎んでいた、ということだから。
なるほど。そうかも。
たまたまなのか、エルドナーシュはタブナジアに聖剣があることを知っていて囮作戦をそれとなく提案した、とか?
それにしてもなぜあなたは無事だったのです?
それだよね。
半島が吹っ飛ぶ爆心地にいたのに五体満足でピンピンしてるとか。
逃避行の最中、道端に咲く美しい夢幻花を見て、ふとローテ姉上が草花をお好きだったことを思い出し、摘んで懐に入れた……。あれが偶然、私を助けてくれたのかもしれない。
そんな偶然。と思うけど、運命の分かれ目はそんな偶然なのかもしれない。
しかし、ランペール王はあの剣を手にサンドリアを平定した、と伝えられている……。そんな恐ろしい剣をなぜ?
それは私にも分かりません。しかし、あれを我々が手にすること自体がそもそもの間違いなのです。
今我々がなすべきことは、あの剣を封印することです。それもランペール王の力を借りることになるでしょう……。
うむ、それならばここに適任の人物がおるようじゃ。
りぃよ、お前はランペール王の墓に関して詳しかろう。わしらもすぐに向かうゆえ、先遣隊として赴き、周辺の警備を頼みたい。
えーっ!?
私っスか!?
みんなこっち見てるし!!!
まだオークどもが剣を狙っておるやもしれぬからな。
わかったよぉ。