また性懲りもなく来たか。折角だが、今日はお前に構っているヒマはない…
えーっ。つれないわ。
と、言いたいところだが、お前にも手伝ってもらうことにするか。
おっ、なんでしょう?
…近頃、街の周辺で子供の誘拐が多発している。ゲルスバのオークによる犯行である事は明白だ。
オークが人間の子供を誘拐してどうしてるんだろう?
そして先日、大聖堂にて修道士の見習いとしてつとめている少年、テディムが、近くへ使いに行ったきり、帰ってこないという知らせが入った。
あら大変。
こういった場合、王立騎士団が人質救出に向かうものなのだが、命令すべきトリオン様が北方への遠征から、まだお帰りではない…。
「攻め」の王立騎士団だから、こういう時に出番なのね。
代わりに、神殿騎士団が救助に向かうかどうか、現在、ピエージェ様が検討中だ。ピエージェ様はどうも、人質の救出が優先と考えていらっしゃるようだったが…。
さっさと行けばいいのに。人命がかかってるんだから。
ピエージェはすぐに行きたくても周りがうるさかったりとか、いろいろありそうだなぁ…。いやぁねぇ。
どちらにしても、調査が必要だ。お前は大聖堂へ行き、さらわれた少年テディムの特徴を聞いてきてくれ。
はーい。
大聖堂はここですねーっと。
あっ、この人。
無理矢理講和を聞かされたあげく仙豆は貰えなくておまけにぼったくられた思い出!!!
冒険者の方でございますか。楽園への扉に関する講話会でございましたら、礼拝堂入口付近におります修道士に…。
あ、それはもうおなかいっぱいなので大丈夫です。今日はミッションで…。
…神殿騎士団の使いとして来た冒険者だとおっしゃるのでございますか?テディムのことについて詳しく知りたいと…?
それはそれは、よくぞおいでくださいました。テディムは、ここ大聖堂にて、修道士になるために修行中の子でございました。
ふむふむ。
あの子はよくロンフォールの森へ分け入り、身体に良いお茶や効力の強い薬を作るために、珍しい植物を集めておりました。
野草の知識があるんだ。すごいな。
ロンフォールの森は危険ですから1人では入らぬよう言いつけてありましたが、あの日も使いの帰りに、森へ分け入ったようでございます。
慣れてきたら、大丈夫って、特に少年ならそう思っちゃいそうだよね。
あの子は、森が姿を隠してくれるからと、いつも青い服を着て、森へ入っておりました。
しかし、とうとう見つかってしまったのでしょう。使いから戻らぬのは、オークにさらわれたからだと思います。
誰かがさらわれたところを見たわけではないのね。
ああ、なんと恐ろしいことでございましょうか。…私たちは毎朝毎晩、あの子が無事に戻りますよう、暁の女神さまに祈りを捧げております…。
え…。祈ってないで助けにいってあげなよ…。
いや、ロンフォール付近のオークでも、修道士が挑むのは危険なのかな。
…ん?
これはこれは!ピエージェ王子様、教皇様!
王子と…この人教皇なのね。
総長。大聖堂に仕える子がいまだ帰らぬ件だが、シャマンド教皇と話すに、オークの仕業と決めるは早計のようだ。
はい、ピエージェ様。テディムは珍しい植物を探さんがため、森の先まで足を運ぶこともあったと聞いております。
今回のこともまた、テディムの小さな冒険でしかないのやもしれません。神殿騎士団をオーク討伐のために動かすは特例。まずは、事実の確認が肝要かと思われます。
確かにその通りだ。神殿騎士団は軽々しく動くべきではない。我が国を守ることが神殿騎士団の最重要任務。
まぁ、まず確認しないと。ってのは、そうだよね。
それはその通りでございます。しかし、…しかし、もしもの話でございます。もしも、テディムがオークにさらわれていたとしましたら…。可哀相に、あの子は…。
わかっている。まずは冒険者に様子を見に行かせようと思う。オークが子を捕えているようならば、すぐに神殿騎士団を遣わそう。
なるほど。ありがたき幸せでございます。
…ところで、この者は?アルノー、おまえと話していたようだが…。
はい、ミッションを出す騎士様の使いで、テディムについて尋ねに来た冒険者でございます。
小さくて見えてないかと思ったけど、見つかってしまった。
それは良い。では、おまえにこの任務を授けよう。
ゲルスバへ潜入し、テディムという少年がオークどもに捕らえられてないかどうか探るのだ。オークたちはさらった子を、家畜小屋へ閉じ込めているという噂だ。
えっ…家畜小屋に…。
ん?
オークって家畜飼ってるの?
…もしかして、捕虜の人間が家畜ってこと?
何かわかったら、神殿騎士団の者へ知らせるがいい。では、頼んだぞ。
はーい。
王子から直々にお仕事を頂いてしまった。
頑張らねばだわねー。