おお、おぬしを待っていたぞ。大変な戦いの後だ、自国でゆっくり休養でもしているのかと思ったがそうではなかったようだな?連絡が取れなくて難儀したよ。使いに出した者も役立たずだったようだしな……。
えっ、申し訳ない。
とにかく、テンゼン君の出発に間に合ってよかった。他の皆には会えたのだが、君だけにはまだ会っていなかったようだからね。
テンゼン?
……ん?テンゼン君はどこへ出発するのかって?彼の祖国、東にある国だ。祖国を脅かしていた「虚ろなる闇」の動きが止まったという報せが入ったようでな。
そっか。
国宝持って1人…2人で遠征を任されるほどだし、国にとって重要人物だろうしね。
色々やってもらいたいことがあるんだろうね。
この大陸へ来たとき同様、ノーグの海賊どもの手を借りて帰るそうだ。それでバストゥークにある天晶堂がノーグまで送ってくれることになったのだ。
さぁ、テンゼン君のところに案内しよう。
テンゼンも中の国に来た途端こんな大変なことになるとは思わなかっただろうなぁ。
りぃ殿!来てくださったか!
もう帰っちゃうんだってね。
なにがあろうとりぃ殿には、祖国へ旅立つ前に会わねばならぬと思っていたでござる。
そんなに?
土下座なんかしてどうした!?
恩義ある身でありながら、そなたに不義なる仕打ちしたこと…………この通りでござる!
ああ、殺そうとしたやつ。
いいよ。約束通りボコさせてもらったし。
我輩、この場で腹を切り、申し開きに代えるつもりでござった。しかし……
切腹されても困るよ!!
のわー!?
我らが祖国では、「虚ろなる闇」の脅威は去ったものの、かの闇が生み出だした争乱が、民に酸鼻を極める惨状をもたらしております。
ゆ、優秀すぎる忍びなんよ。
これを鎮めるために、どうしてもテンゼン様にお帰りになっていただかねばなりません。
りぃ様のお気持ちが収まらぬようでしたら、どうぞ代わりに私の血肉をもって……
えっ、いいよ。気にしてないよ。そんな簡単に命を投げたら駄目。
りぃ殿。その厚意、我輩、一生忘れぬでござる。
我輩はこれより我らが祖国に安寧の世をもたらすべく、全身全霊を尽くすでござる!そのときは、ぜひにともりぃ殿に我らが祖国を見ていただきたい。
……とりわけ桜の季節の美しさを……。
行きたい!
話の途中ですまんな。天晶堂の使いが、報せをもってうろついている。どうやら船の準備ができたようだぞ。
りぃ殿。次に会うときまで、達者で。
うん。テンゼンもね。
そなたが我輩に与えてくれた勇気がある限り、我らの絆は断たれぬでござろう。