冒険者ならば耳が早かろう!エシャンタール様がお帰りになったぞ!
デジョーン☆つぅ~!!!で帰ってきたのかしら。
これでやっと、ジュノ戦闘艇隊が真龍討伐のために発つことができる!現在、全船体の最終確認段階だ!邪魔にならないよう、大人しくしているんだぞ!
ん?
うぇーん!
うぇーん!
うぇーん!
どうした!?
まったく騒がしいな。あのタルタルたちは、戦闘艇を盗み出し、ジュノから乗り出した罪で処分されたのだ。
あらまぁ。
上官命令だったなどと言っているが、そのナグモラーダ様も、アルマター機関にて懲罰が検討されている。なんでも分別をなくし、やってはならない行為をしたとか……。
エシャンタールの目的は霊獣との契約を破棄して人も世界も救いたい。だけど、ナグモラーダの目的はなんだろう。ジラート人に戻ること?
ん?あの女性は、おまえの知り合いではなかったか?
ウルミア?
あなたたち!どうしたの?いったいなにがあったの?
ほら、泣いてばかりじゃわからないわ。困っているのなら、私たちに相談してごらんなさい?
私も含まれとる!
おいらたち、もう、おしまいなんだ。
おいらたち、もう、じえんどなんだ。
おいらたち、ジュノから出ていかなくちゃならないんだー!
まぁ、どうして?あなたたちのことは、彗星のごとく現れた実力あるタルタルたちだと噂されていたわ。それなのに……なにか、大きな失敗をしでかしてしまったの?
マジで!?
ううん、おいらたち、ちゃんとアメとムチ、騙しと裏切りのテクニックを駆使して……
地元の人にわいろを渡したり、上官を見限ったり……
出世街道まっしぐらの将来有望な官僚の卵になれてたのに……
すげぇ…この年にして。末恐ろしいが過ぎる。
俺がジュノに現れたから、ジュノから逃げださねぇとならねぇんだってさ。
なんだ、そんなこと。
プリッシュ!?
なんだよ、だらしねぇなぁ!そんなんじゃ、おまえたちにタブナジアのことを頼もうと思った俺がバカみてぇじゃねぇかよ。
しっかりしねぇとブッとばすぞ!タブナジアのみんなのこと、ウルミアのこと、よろしく頼むな!
あれ、プリッシュのアミュレットがまた復活してる。
あの時ナグモラーダには渡らなくて、エシャンタールからまた貰ったのかな。
お?おお?
プリッシュと同じ喜び方してる。
似るんだなぁ…。
…似たからこんなにとんでもないのか?
なんにもいわねぇで飛び出しちまって悪かったな、ウルミア。
ウルミアにはちゃんと話して行こうね。
それにりぃ。ありがとよ、俺の心配してくれてよ。
あんまり時間がねぇけど、できるだけ説明してやる。謁見の間に来てくれ。
プリッシュ……?
お久しぶりです、ウルミア。これまで苦労をかけましたね。
ミ、ミルドリオン枢機卿さま!?いったい、これは……?
ウルミア。今は、多くを説明している時間がありません。けれども、どうしても今、あなたがたに伝えておかなくてはならないことがあります。
私の本当の名は、エシャンタール。1万年の昔、5つ目の母なるクリスタルを抱く都市……神都アル・タユに生まれた、古代の民です。
寿命80~100年じゃ短いなぁ。と思うけど、1万年は…1万年。ううむ。
タブナジアを訪れたナグモラーダ、そして今のジュノを統治しているアルマター機関。彼らもまた、永い眠りより覚めたばかりの古代の民。
やっぱり王子たちと一緒に目覚めたのね。
ってか彼らはどうやって眠りについたんだろう。
エルドナーシュの魔法?
しかし私は、彼らとは違い、あるまがつみの結果として、永遠の命を授かっています。
!?
私は、この永遠の命を使い、セルテウスと霊獣が交わしたある契約を果たすことを誓いました。
それは、1万年の後に「定めの地」に生れ落ちると予言された「定めの子」…………「世界の終わりに来る者」を葬ること。
そのときが来るまで私は、永い時をかけて準備をしてきました。
すごいよね。1万年も頑張って…。
それはとても永い旅でした。あらゆる地を巡り、あらゆる知識を求め……
多くの出会いに慰められ、多くの情に励まされ……けれどもその後、私は、ある場所で教えられました。
教えたのは誰だ?
「世界の終わりに来る者」をただ倒すだけでは、その者の闇はいつかふたたび、別の人間として生まれ落ちてしまう。
その循環を断ち切るためにはその闇そのものを断ち切らなくてはならない。
人の命を生み出し、人の命が還る場所。母なるクリスタルの御許から……。
そのために、「世界の終わりに来る者」は人として死をなすのではなく、神として死をなす必要があった。
だからこそ私は「神の歌」を使い、男神の降臨を試みようと思いたったのです。
神として死ぬ。
イブノイルが男神の復活と死を望んでいたのは、契約を破棄する条件だったからなのね。
復活と……、そして、死……?
でもな、結局、それはなされなかったんだ。なぜなら洗礼の儀式で、俺は……
……あの頃の俺は、もう俺の中にあった「虚ろなる闇」に操られていたんだと思う。俺は物心ついたときから、タブナジア大聖堂に入って、人に楽園の扉を開かせなくてはならないと思っていた。
操られてたんだ?
けれど、運がわりぃことに、あの洗礼の箱が、俺の中にあった「虚ろなる闇」に反応して、この魔晶石に封じ込めちまったんだ。
俺の世界は大きく変わっちまったぜ。人の心も読めるようになって、ミルドリオン様と同じように不死身になっちまった。
そういうことだったのね。プリッシュは、「世界の終わりに来る者」だったけれど……
今は違うのね?「世界の終わりに来る者」ではないのね?
……。
まさか……まだ、そうだというんですか? プリッシュは?
霊獣バハムートの態度が示すは、「世界の終わりに来る者」がいまだにあるということ。
しかしこの20年、私はここよりヴァナ・ディール全土を監視してきましたが、プリッシュ以外に「世界の終わりに来る者」がいるとは……。
やっぱりバハムートは、俺が男神として完全に死ぬことを望んでるんだ。
ディアボロスは、教えてくれた。俺は「世界の終わりに来る者」だったってこと。この魔晶石とともに死に、母なるクリスタルから解き放たれなくてはならねぇってことをな。
そんな!? そんなことって!?
聞いてくれ、ウルミア。俺たちは、けっこういいとこまで来てるんだぜ?男神を降臨させるための歌も、4つまで聞いた。
最後の5つ目の歌さえわかれば、バハムートの前で証明できる……!
やめて、プリッシュ!なにを言っているかわかっているの!?
男神にその身を捧げるだなんて、そんな恐ろしいこと、許されるはずがない!きっと他にも方法が……!
安心しなさい、ウルミア。プリッシュは、連れていきませんよ。
「石の記憶」の最後の歌。その旋律を知るものはもはやなく、男神を打ち滅ぼす武器もない。
スカリーZはセルビナの…って言ってたけど、エシャンタールは知らないのか。
あ、知ってるけど彼女は記憶を失ってるから最後の望みも潰えてる。ってことか。
私たちは、ジュノの全勢力をかけて竜族と戦うのみ。人が生き残るためには、もはや、この選択を取るほかありません。
でも、ミルドリオン様!俺は!
エシャンタール様!ジュノ戦闘艇隊全船、出発準備、完了しました!
私は行かなくてはなりません。雲海の果て、天路の果てへ。
ミルドリオンさま!
……ここもいつ火の海となるかわかりませんよ。プリッシュ、ウルミア。船を用意させましょう。タブナジアへ戻りなさい。そして、守るのです。あなたたちのいちばん大切なものを。