テンゼン来てる。
ここはバタリア側の塔。
ボスディン氷河にウォンテッドワープ(125)で飛んだら近いよ。
りぃ殿!来てくださったのでござるか!?まことに、かたじけないでござる。
テンゼンが心配だしね。
元はといえば我輩が霊獣の話など持ち出さねば、そなたも皆も、霊獣に利用されることなどなかったものを……
いや、そんなことないよ。どのみちこうなってただろうし。
鳳凰丸は、ナグモラーダが語ったことを認めたでござる。
なんと。
「楽園の扉」開かれたとき、霊獣たちは獣と成り果て……そして我らの暮らすヴァナ・ディールは楽園となり、眠れる神々が目覚めて祝福を満たすということを……。
ヴァナ・ディールが楽園になるの!?
扉が開いたら、ジラート人とか楽園のこと知ってる人だけが扉の向こうの楽園へ行って、ヴァナ・ディールは消えてなくなるか死んだ土地になって、残った人たちは全滅するのかと思ってた。
ヴァナ・ディールが楽園になって人が住み良い環境になるのなら、人間的には開いても問題ないのね。
しかしそれは、死せる神が復活を迎えると同義。それが悪しきこととなるか、それとも善きこととなるか。霊獣フェニックスにもわからぬとか。
今まで1回も開いてないからそりゃ分かんないよね。
……わからぬ、か。そのわからぬことのために、ひんがしの国ではあまりにも多くの血が流れてしまったでござる。
この鳳凰丸は「虚ろなる闇」を打ち払うために、命の霊獣フェニックスの聖なる残り火にて打たれた刀。
残り火…。
フェニックスだけどうしてひんがしの国にいて、どうして死んだんだろう。
いや、死んではいないのか?
しかし、その役目を果たすには力が足りず、より強き力を与えんがために、罪なき人々の「命」を要した……。
その数は、ひとかたならぬもの。それは、咎人や蛮族を狩ることから始まり、貢租を納められぬ村々より貢租のかわりに生けにえが募られ……
えっ…。
ついには、「虚ろなる闇」によって眠りについた人々が、その意志なきまま、この刃にかけられたのでござる。
想像以上にえぐかった!!
……。中の国に暮らすそなたの耳には、それこそひんがしの帝による暴挙と聞こえような?しかし、ひんがしの民は皆々、それこそ天命であり、抗えぬ定めだとして受け入れていた……。
何故なら、その死は、世界の終わりを止めるための糧となり、その子、その孫、その血に連なる子孫のためのものだと信じていたがため……!
りぃ殿……、我輩は帝より大命を受け、この地へ参った。その大命に、自らの命にかえても鳳凰丸を守る旨の一項がある。
いかにも極東っぽい。
我輩は、この大命に逆らえぬ身。だから、そなたに託しておきたい。
この先、万が一、霊獣フェニックスが人の義に反する導きを示し、我輩が人の敵となりしときは迷いなく……
……。
先に参るぞ、りぃ殿。この塔の最奥に封じられている霊獣フェンリルの力を解き放てば、霊獣フェンリルにまみえることができるとか。
我輩の気力。ほむらのごとく、たぎり出んことを……
迷いなく、ボッコボコにぶん殴ってその刀を引きはがすから。
安心して。