やっと来たか!
来たくなどなかった。
今は、東方の使者の方が謁見中だ。そのあと、おまえの謁見だ。終わるまで、拘束させてもらおう。
ジュノ大公カムラナート様の代理、エシャンタールです。
カムラナートの代理?
偉い人だったんだ。
あっ、テンゼン。
東からの客人よ、遠路はるばるよくいらっしゃいました。このジュノ大公国に直訴したいことがあるとか。まずは名乗りを許しましょう。
……我輩の名はテンゼン。ひんがしの国に生を受け、武士の名乗りを許されし者でござる。
エシャンタール殿。ジュノ大公カムラナート殿に謁見できぬ理由を、まずはお聞かせ願いたい。
獣人を壊滅せしめるために、カムラナート様は多忙なのです。
もういないんだよ…。
けれども、案ずることはありません。私は、いたずらに留守を預かる役を申しつけられたわけではありません。
彼らも証人となります。あなたの直訴は必ず、ジュノ大公カムラナート様に届けられることでしょう。
……。
このいまいち信じられない感じ。
話は簡単ではないのでござる。その話は短いが、我輩はその意味の深さを伝えなければならん。ひんがしの国のために、西国、南国、そして中の国、御国のためにも。
つまり世界中?
ひんがしの国の果てから、「虚ろなる闇」が沸いて出てござる。西国の果てにも、おそらく南国の果ても同じでござる。
虚ろは始めは小さく、しかしいつの間にやら果てなく伸びて、泥のごとく緩やかに、すべてを飲み込んでいくのでござる。
気づいたときは手遅れってやつ…?
虚ろが近づくと子らが夢を見始めまする。虚ろがより近づくと、大人らも夢を見始めまする。どこの夢も同じ。その夢は、告げるのでござる。
「世界の終わりに来る者」が現れ、世界が終わりに近づいていると。
ひぇ。
……なるほど、「世界の終わりに来る者」ですか。ぞっとする名前ですね。
ひんがしの国をはじめ、各国の辺境に現れている闇……「虚ろなる闇」については、ここジュノ周辺でも確認されています。まだ局地的な現象のために関係者以外はその存在を知りませんが、あなたの言うように広がる性質を持つのならば、早急に対処をすべく調査を急がせます。
これでよろしいでしょうか?
……「虚ろなる闇」が現れた原因は、まだ特定されてはいないのでござるか?
ええ、残念ながら。現在、調査中です。ひんがしの国の方にて原因に心当たりがあるというのならば、ぜひ教えていただきましょう。
ひんがしの国に原因があるとお思いでござるか?大いなる力の破片が5つ、中の国にあることをご存知ないと?
ナヌ。
その大いなる力の破片の輝きこそが、この世界を「虚ろなる闇」から護っていることをご存知ないとおっしゃるのか?
ひんがしの国の武人らしい、単刀直入な物言いですね。
中の国の一般人たちが知らないことを、テンゼンが知ってる?
なるほど、あなたはジュノを疑っているというわけですか。ジュノが、大いなる破片の輝きの保護を怠ったがため、各地に虚ろが現れたと言いたいのですね。
そりゃあそう思うよね。
しかしそれは誤解です。ジュノはその輝きの意味を、よく知っています。
大いなる力の破片、母なる大クリスタルは、世界の理を支える大切な要。ジュノ大公国は、古代の民ジラートが残した大きな遺跡と共に、古代の民の意志を継いで母なるクリスタルを護り続けてきました。
ん?ジュノができたのって30年前にエルドナーシュたちがジュノの場所にあった漁村に来た後発展したからだよね。
起きてから管理を再開したとして、1万年~30年前まではどうしてたんだろう。
今は分かりやすくジュノ大公国って言っただけで、ジラートの血筋の人たちが管理してたのかな。
サンドリア、バストゥーク、ウィンダスにその存在を告げないのも、母なるクリスタルを悪しき意志から護らんがため。
確かに争いの種になるだけかもね。
……しかし、ひんがしの国はその存在を知ってしまっている。ですから、ひんがしの国から来た使者であるあなたを信用するわけにはいきません。母なるクリスタルの情報を、なにに利用されるかわかりませんからね。
我輩はただ、虚ろに落ちていく人々を救わんがため……!
ひんがしの国だけでなく世界中を救いたいと思って来ただろうに、こんな言われ方腹立つよね。
ええ、虚ろを間近で見たあなたなら、それでは納得しないことでしょうね。
ではひとつ、お教えしましょう。私たちはこの件に関して、ある少年を追っています。その少年はジュノの者ではないというのに、3つの遺跡をやすやすと降り、彼が通った後には「虚ろなる闇」が残される……。
そこまで知っているならと、突っ込んだ話を始めた…!
彼こそが元凶、「世界の終わりに来る者」だと、私たちは確信しています。
……少年?それは、どこの国の使徒でござるか?
それはわかりません。ですが……ウォルフガング、あの冒険者をここへ。
まさかのここで召喚!!
その冒険者は、その少年と共に母なるクリスタルの近くにいました。母国はウィンダス。
ウィンダス連邦、魔法の都か!その国がなにかを企んでいるでござるのか!?
3国のミッション終わったから所属国をウィンダスに戻したんだけど、他の国にしておいた方が良かったか…!?
もちろん、ウィンダス連邦は少年との関係性を否定しています。本人も関与を否定しています。
(力強くうなづく)
しかし、もしもウィンダス連邦がこの恐ろしい事象の一端を担っているというのならば……連合国といえども、容赦はしません。ジュノは全力を持って、ウィンダス連邦をうち滅ぼします。
ジラートならやりかねない。
けれどもそれはまだ、不確かな情報による推理に過ぎません。時間をかければ、情報は精査されるでしょう。
もっとも早い方法は、その少年を捕らえ、問いただすことでござる。
ええ、ですから、おまえに機会を与えましょう。疑惑を晴らし、母国を守り、名誉ある聖戦の旗手になる機会です。
なんかよさげな言葉使ってるけど、そもそも何も悪いことしてないんだからね。
冒険者よ、4つ目のクリスタルへと行きなさい。おそらく、少年は次にそこに現れる。そこで彼を捕らえ、ここへ連れて戻るのです。
4つ目?
ほかの3つと違い、4つ目の遺跡はもはや地上にはない。私たちが知るのは、ラングモント峠を越えてなお北、雪の絶えぬ地方にあるということだけ。
ん?遺跡が地上に無いって。
クリュー人が壊した北のアークってフェ・インの事かと思ってたけど違ったのね。
そんな跡形もなく木っ端微塵に壊してるなんて思わないじゃんよ!
どこにあるんだろう。ヴァズのテレポイントのところ?
30年前、あの地方に派遣された調査隊を訪ねれば、なにかわかるかもしれません。サンドリアは、ミスタル伯爵家出身の王立騎士フランマージュ・M・ミスタル。ウィンダスは、鼻の院研究員イルクイル。バストゥークは、ミスリル銃士隊隊長ウルリッヒ……。
みんな死んでるのに?
関係者に話を聞いて回れってことなのかな。
あー、でも、調査してるときにも何もないとか言ってなかったっけ?
何か分かるのかしら。